並列タイトル等ネットワークを介する遠隔制御システムのためのコントローラと状態推定フィルタの開発に関する研究
一般注記本論文では,ネットワークを介する柔軟マスタースレーブアームのバイラテラル制御について議論する.本研究で考える柔軟マスタースレーブアームを用いたバイラテラル制御システムは1リンクの剛体マスターアームと並行構造の1リンク柔軟スレーブアームから構成される.柔軟アームはEuler-Bernoulli梁であると仮定し,非線形システムとして扱う場合と線形システムとして近似して扱う場合の2種類がある.更に,柔軟アームはサーボモータによって駆動されるものとする.したがって,バイラテラル制御システムに組み込むためにサーボモータの数学モデルが必要となり,この数学モデルを明確に記述することで柔軟アームとサーボモータは一体のシステムとして記述されることになる.また,本研究で扱うバイラテラル制御システムは遅延時間が発生するネットワークによって接続されている.各アームの状態量や参照入力などはネットワークを介して相互に通信されるため,観測されるデータは遅延時間の影響を受けることになる.すなわち,ネットワークが発生する遅延時間によって送信したデータが時間軸に沿って平行移動する,もしくは乱雑さの影響を受けて観測されることになる.本研究では,遅延時間として「一定の遅延時間」,「時変の遅延時間」を設定し,各々の遅延時間に対して提案するバイラテラル制御システムのネットワーク化制御を議論する.このようなシステムに対してコントローラを設計するために,提案するバイラテラル制御システムの総エネルギ,すなわち剛体マスターアームのエネルギ,柔軟スレーブアームのエネルギ,更に両アームの根元の角度を一致させるための仮想エネルギの和に基づくリヤプノフ関数の候補を定義する.リヤプノフ関数の候補を時間微分することで,剛体アームに作用する反トルクを生成するPDコントローラ,柔軟アームのコントロールトルクまたはサーボモータの参照入力を生成するPDSコントローラを導出する.また,リヤプノフの安定定理より提案するバイラテラル制御システムの安定性及び受動性を解析的に証明し,システムが安定に動作するための各コントローラのゲインの条件を導出する.そして,提案するバイラテラル制御システムの性能を評価するために,数値シミュレーションと実機実験を行う.更に,本研究ではランダムな遅延時間を伴う線形確率システムに対して状態推定器を設計することを考える.ランダムな遅延時間は「平均遅延時間と乱雑さの和」及び「確率的ロジスティック方程式」によってモデル化する.システムの状態量がネットワークを介して観測される際にランダムな遅延時間の影響を受けるため,ランダムな遅延時間は観測システムに現れる.本論文では,ランダムな遅延時間を陽に取り扱うために観測システムにテイラー展開を施す.これにより観測システムは状態量とランダムな遅延時間の積を観測ノイズとして持つ確率システムとして表現される.ここで現れる観測ノイズは乗算ノイズと呼ばれ,これによりランダムな遅延時間を含むシステムは乗算ノイズを含む双線形システムとなる.このシステムに対してランダムな遅延時間の影響を低減するフィルターを設計し,更に,設計したフィルターの有効性を評価するために数値シミュレーションを行う.
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受理日(W3CDTF)2015-05-01T13:23:17+09:00
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