一般注記骨芽細胞には Ca で活性化される ATPase(Ca-ATPase)が存在し石灰化との関連が推測されるが報告は少ない。そこで、骨芽細胞様細胞 (MC3T3-E1)の Ca-ATPase の性質を調べた。E1 細胞を培養後,細胞破砕物を作成したのち、ミクロソーム分画とした。さらにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加して可溶化した後、グリセロールの密度勾配遠心にかけて ATPase 活性のある分画を得た。細胞破砕物にはCa,Mg-ATPase 以外に、pH 9.6 (Ca-P1)と pH 10.8 (Ca-P2)で活性が高い Ca-ATPase 及び pH 9.6 (Mg-P1)が主で pH 11.1 (Mg-P2)にわずかな活性を示す Mg-ATPase 活性が検出された。Mg-P1 の最大活性は Ca-P1及び Ca-P2 の約 4.5 倍であった。これらの活性は SERCA の特異的阻害剤とされる thapsigargin によって阻害されたが、P 型 ATPase を阻害する vanadate による阻害は認められなかった。また 2 価金属のキレーターである EDTA 及び EGTA は濃度依存性に両 ATPase 活性を阻害した。ミクロソーム分画では Ca-P1が顕著に減少し、Ca-P2 の割合が増加した。グリセロール密度勾配遠心後には、Mg-P2 とその約 3 倍のCa-P2 活性が検出された。両活性は thapsigargin により阻害された。両活性の石灰化への関与を調べるために、25 及び 50μM の thapsigargin 存在下での E1 細胞の培養を行ったが、thapsigargin のアポトーシス誘導作用のため石灰化の検出まで細胞を培養することはできなかった。本研究では thapsigargin により阻害され P 型ではないアルカリ性至適 pH の Ca-ATPase が E1 細胞に存在することを示し、その性質の検討が可能な程度まで分離を行うことができた。
(主査) 教授 山崎 裕, 教授 鈴木 邦明, 教授 田村 正人
歯学研究科(口腔医学専攻)
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受理日(W3CDTF)2016-04-01T14:32:40+09:00
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