一般注記目的:口臭の主成分である揮発性硫黄化合物は,口腔内に棲息する嫌気性菌が歯垢や舌苔などに含まれる含硫アミノ酸を分解することによって発生する.本研究では,口臭除去を効能・効果とする口腔咽喉薬に注目し,それらの摂取が口臭および口腔内環境に与える影響について,臨床的に客観評価することを目的とした.材料と方法:セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC),グリチルリチン酸二カリウム,キキョウエキスの3種の有効成分を配合したトローチ剤(ローズウィンド,シオノギ製薬),CPCのみを配合したトローチ剤(プロテクトドロップ,常盤薬品工業),有効成分を配合しない清涼菓子(フリスク,クラシエホールディングス),水による洗口について比較検討した.インフォームドコンセントが得られた大学生ボランティア82名(男58名,女24名,平均年齢25.2±2.2歳)に対し,非盲検ランダム化比較試験を実施した.被験者を無作為にローズウィンド,プロテクトドロップ,フリスク,水による洗口のいずれかに割り当て,摂取あるいは洗口前後に,口臭レベル,刺激唾液量,唾液pH,唾液緩衝能,舌の保湿度を測定した.口臭測定前にメチオニン水溶液で洗口し,誘発した揮発性硫黄化合物の濃度が1.9 log ppb(80ppb)以上の場合を解析対象とした.結果:解析対象者の条件を満たした被験者は57名(ローズウィンド群15名,プロテクトドロップ群14名,フリスク群14名,水洗口群14名)であった.トローチ剤および清涼菓子はいずれも優れた口臭抑制効果を示し,摂取前後に統計学的有意差がみられた.特にトローチ剤では,口臭がないとみなすレベルまで改善が認められた.唾液検査の結果は,ローズウィンドで唾液pHが,プロテクトドロップで唾液緩衝能が,フリスクで刺激唾液量が,摂取により有意に増加した.舌の保湿度については,統計学的有意差はなかったが,ローズウィンドのみ摂取後に増加した.結論:今回検討したトローチ剤は,優れた口臭抑制効果を示した.また,トローチ剤および清涼菓子の摂取は,口腔の機能を活性化することが示唆された.(著者抄録)
日本歯科保存学雑誌 (0387-2343)57巻4号 Page293-300(2014.08)
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受理日(W3CDTF)2016-05-01T16:38:40+09:00
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