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Bibliographic Record
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- Material Type
- 記事
- Author/Editor
- 大島 結生
- Author Heading
- Periodical title
- 日本研究
- No. or year of volume/issue
- 71:2025.9
- Volume
- 71
- Pages
- 25-50
- Publication date of volume/issue (W3CDTF)
- 2025-09
- ISSN (Periodical Title)
- 0915-0900
- ISSN-L (Periodical Title)
- 0915-0900
- Publication (Periodical Title)
- 京都 : 人間文化研究機構国際日本文化研究センター
- Place of Publication (Country Code)
- JP
- Text Language Code
- jpn
- NDLC
- Target Audience
- 一般
- Holding library
- 国立国会図書館
- Call No.
- Z21-1836
- Data Provider (Database)
- 国立国会図書館 : 国立国会図書館雑誌記事索引
- Bibliographic ID (NDL)
- 034381069
- Bibliographic Record Category (NDL)
- 632
- Summary, etc.
- 歌川国芳画「源頼光公館土蜘作妖怪図」(天保13~14[1842~1843]年、以降「妖怪図」と略記)と、英国の絵入り風刺雑誌『パンチ』に掲載されたA Drop of London Water(1850)の比較を通して、江戸後期の人々の風刺精神について検討する。「妖怪図」は、その寓意についてさまざまな浮説が立ち、模倣絵が出回るほどの評判となったことが知られている。国芳の意図は判然としないものの、この絵は風刺錦絵の嚆矢的作品とみなされてきた。一方で、版元の商業的な側面も指摘されており、これを天保の改革批判の作品であると断定することは難しい。本論では、すでに風刺画が政策批判や世論形成の有効的手段であったロンドンで出されたA Drop of London Waterを比較対象として、「妖怪図」を再検討する。江戸期の出版物に見られる風刺性は、それが風刺か穿ちか、あるいは寓意の拡大解釈による一人歩きか、その見解が分かれるところだが、政治的批判性が明らかな英国の風刺画との比較を通して、天保期における江戸の人々が有した風刺の眼差しについて、その一端を捉えたい。 両作品は、[1]どちらも当時よく知られた画題を用いたパロディーである、[2]江戸とロンドンという都市生活に関わる問題が扱われている、[3]人間社会の中でイレギュラーな存在である妖怪やモンスターに擬えて集団を描いている、といった共通点を有しながら、[4]寓意の明瞭さに明らかな差がある、[5]妖怪またはモンスターに擬えられた人々への眼差しに温度差がある、といった相違点が見られる。これらの点に着目し、比較検討を行った。その結果、明瞭かつ辛辣な風刺で既得権益者を攻撃すると同時に、市民への問題提起をも行ったA Drop of London Waterに対し、「妖怪図」の寓意の曖昧さが浮き彫りになった。多くの模倣絵を生んだこの絵は、その後、幕末維新期の風刺画にも影響を与え、合戦絵や子供絵などと並んで一つのスタイルを形成してゆく。このことは、鑑賞者の問題への当事者意識や政治的批判性の希薄さ、そして判官贔屓とも言える鑑賞態度へと結びついた。 結論として、「妖怪図」及びその受容からは、その後の戊辰戦争、明治維新、そして自由民権運動へと繋がってゆく風刺精神の大衆的萌芽が見られる。本図は、テキスト読解を要さない錦絵を媒体としたことで、政権批判に繋がるような風刺が大衆化したと考えられる。その一方で、判じ物による風刺の裾野拡大は、風刺画の体裁を持ちながら、その実、主体的かつ長期的な目線での批判精神が希薄であるという問題点を孕んでいたといえよう。
- DOI
- 10.15055/0002000495
- Format (IMT)
- application/pdf
- Source
- nike_071_025.pdf (fulltext)
- Access Restrictions
- インターネット公開
- Periodical Title (NCID)
- AN10088118
- Data Provider (Database)
- 国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)
- Original Data Provider (Database)
- 人間文化研究機構国際日本文化研究センター : 国際日本文化研究センター学術リポジトリ
- Summary, etc.
- 歌川国芳画「源頼光公館土蜘作妖怪図」(天保13~14[1842~1843]年、以降「妖怪図」と略記)と、英国の絵入り風刺雑誌『パンチ』に掲載されたA Drop of London Water(1850)の比較を通して、江戸後期の人々の風刺精神について検討する。「妖怪図」は、その寓意についてさまざまな浮説が立ち、模倣絵が出回るほどの評判となったことが知られている。国芳の意図は判然としないものの、この絵は風刺錦絵の嚆矢的作品とみなされてきた。一方で、版元の商業的な側面も指摘されており、これを天保の改革批判の作品であると断定することは難しい。本論では、すでに風刺画が政策批判や世論形成の有効的手段であったロンドンで出されたA Drop of London Waterを比較対象として、「妖怪図」を再検討する。江戸期の出版物に見られる風刺性は、それが風刺か穿ちか、あるいは寓意の拡大解釈による一人歩きか、その見解が分かれるところだが、政治的批判性が明らかな英国の風刺画との比較を通して、天保期における江戸の人々が有した風刺の眼差しについて、その一端を捉えたい。 両作品は、[1]どちらも当時よく知られた画題を用いたパロディーである、[2]江戸とロンドンという都市生活に関わる問題が扱われている、[3]人間社会の中でイレギュラーな存在である妖怪やモンスターに擬えて集団を描いている、といった共通点を有しながら、[4]寓意の明瞭さに明らかな差がある、[5]妖怪またはモンスターに擬えられた人々への眼差しに温度差がある、といった相違点が見られる。これらの点に着目し、比較検討を行った。その結果、明瞭かつ辛辣な風刺で既得権益者を攻撃すると同時に、市民への問題提起をも行ったA Drop of London Waterに対し、「妖怪図」の寓意の曖昧さが浮き彫りになった。多くの模倣絵を生んだこの絵は、その後、幕末維新期の風刺画にも影響を与え、合戦絵や子供絵などと並んで一つのスタイルを形成してゆく。このことは、鑑賞者の問題への当事者意識や政治的批判性の希薄さ、そして判官贔屓とも言える鑑賞態度へと結びついた。 結論として、「妖怪図」及びその受容からは、その後の戊辰戦争、明治維新、そして自由民権運動へと繋がってゆく風刺精神の大衆的萌芽が見られる。本図は、テキスト読解を要さない錦絵を媒体としたことで、政権批判に繋がるような風刺が大衆化したと考えられる。その一方で、判じ物による風刺の裾野拡大は、風刺画の体裁を持ちながら、その実、主体的かつ長期的な目線での批判精神が希薄であるという問題点を孕んでいたといえよう。
- DOI
- 10.15055/0002000495
- Related Material (URI)
- Data Provider (Database)
- 国立情報学研究所 : CiNii Research
- Original Data Provider (Database)
- Japan Link Center学術機関リポジトリデータベース雑誌記事索引データベース
- Bibliographic ID (NDL)
- 034381069