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Bibliographic Record
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- Material Type
- 図書
- Author/Editor
- 山崎, 勝義
- Author Heading
- Publication, Distribution, etc.
- Text Language Code
- jpn
- Subject Heading
- NDC
- Target Audience
- 一般
- Note (General)
- type:text熱力学では,その第2法則の主役を演じる大スター「エントロピー(S)」がしばしば初学者の前に立ちはだかる。第2法則は「断熱系で自発変化が進行するとき,必ずエントロピーが増大する」という,いわゆる「エントロピー増大の法則」として表現されることが多いが,多くの成書でこの表現が強調されすぎている感がある。確かに,エントロピーは第2法則の“申し子"であるが,第2法則の真骨頂は自発変化(つまり不可逆過程)の記述であり,自発変化がどの方向にどこまで進行するかを,エントロピーだけでなく,他の熱力学関数(内部エネルギー(U),エンタルピー(H),Helmholtzエネルギー(A),Gibbsエネルギー(G)とも結びつけて理解しなければ熱力学の面白さは半減するし理解も不十分になる。 また,内部エネルギーやエンタルピーまではなんとかなっても,「T,V一定の系を考察するために適した熱力学関数としてHelmholtzエネルギーA=U-TSが考案された。Aは,定温条件下で系が行うことができる最大仕事を表す」とか,「T,p一定の系を考察するために適した熱力学関数としてGibbsエネルギーG=H-TSが考案された。Gは,定温,定圧条件下で系が行うことができる体積仕事以外の最大仕事を表す」と続くあたりから,先人の着想に追随できないまま,ただ敬服するのみという状況になることは多いのではなかろうか(筆者の学生時代の経験だけかもしれないが)。この最大仕事の問題も第2法則との関連で理解するべき問題であるが,そのつながりが頭に浸透するように書かれた成書が案外見当たらないように思われる。 熱力学におけるもう1つの重要ポイントは,理想気体の取り扱いである。定容熱容量(CV)と定圧熱容量(Cp)の差Cp-CVの計算は,ほとんどの教科書に書かれている定番解説である。その際,理想気体に対して「Jouleの法則」(∂U/∂V)_T=0が成り立つことを利用して,有名なMayerの関係式(Cp-CV=R)が導出される。その後,「Jouleの法則」は,あたかも理想気体の定義であるかのように随所で活躍するのだが,このことが,理想気体の特殊性を理解しないまま,実在気体でもすべて理想気体として扱える,という勘違いをもたらす原因になっているように思われる(事実,筆者も学生時代にこの"理想気体病"に感染した)。この状況を改善するには,Mayerの関係式はあとまわしにして,気体,液体,固体を問わず(当然,非理想気体に対しても成立する)「熱力学的状態方程式」をもとにしてJouleの法則を証明し,理想気体がどういう意味で「理想」なのかを理解することが必要である。 いわゆる"マクロな"熱力学は,ミクロな熱力学(分子統計熱力学)に比べて哲学的な表現が多く,アレルギー症状を起こしやすい学問であるが,本monographは,そのマクロな熱力学の習得過程において投与されるべき有効な抗アレルギー剤となることを目指して書かれたものである。第8版第3刷