권창영 집필대표（クォン・チャンヨン 執筆代表）『중대재해처벌법 연구 = The study on the serious accidents punishment act. 1（重大災害処罰法の研究. 1）』파주, 法文社, 2022.11, 32, 598 p【EL171-K6】

キーワード

韓国、重大災害処罰法、労働災害、製品事故

著者情報

執筆者代表のクォン・チャンヨンは、法務法人チピョン（地平）所属の弁護士で、2019年からソウル大学校法学専門大学院兼任教授として労働刑法などに関する講義を担当している。2022年2月には、本書が取り上げる「重大災害の処罰等に関する法律」（以下、「重大災害処罰法」）の解釈等に関わる政府の諮問機関である大検察庁重大災害諮問委員会の初代委員長に就任した[1]。

出版の背景・目的

韓国では、産業従事者と市民の生命・身体を保護し、重大産業災害と重大市民災害を予防することを目的とする重大災害処罰法が2021年に制定された（2022年1月27日施行）。

本書は、同法について実務家の観点から体系的に研究・分析したものであり、各論考はクォン・チャンヨンがソウル大学校大学院で2022年に開設した災害刑法に関する講座の参加者によって分担執筆された。執筆者全員が判事、検事、弁護士等の法曹関係者である。

本書のポイント

2021年に韓国で重大災害処罰法が制定されると、同法は外国企業へも影響が及び得ることから、日本でも注目を集めた[2]。

その一方で、同法に対しては、施行後も解釈等について批判的な見解が提起され、混乱した状況にあるとされる。クォン・チャンヨンはこうした混乱が、同法の制定史や外国の類似法、災害に関する法令・制度の発展や運用実態等、この分野の法制度全般に対する包括的な理解が不足した状態で、同法への断片的な解釈が展開されていることに起因すると指摘する。

本書には、従来からあった産業安全保健法や裁判所の判例の分析、この分野における諸外国の法制度の分析、重大災害処罰法の立法過程など、重大災害処罰法を体系的に理解するための論考が収録されている。

目次

第1章 序論
第1節 安全保健権の地位
第2節 産業災害の歴史
第3節 産業安全保健法上の管理体系と安全保健措置義務の概観
第4節 産業安全保健法の法理上の限界（無罪判決の分析）
第5節 産業安全保健法の量刑上の限界（有罪判決の分析）
第6節 市民災害に対する判例の分析
第2章 外国の災害刑法の概観
第1節 イギリスの法人過失致死法[3]
第2節 カナダのWestray Law
第3節 オーストラリアの企業過失致死法
第3章 重大災害処罰法制定史
第1節 第20代国会までの災害刑法制定のための努力
第2節 第21代国会に提出された議案の内容
第3節 第21代国会法案審査第1小委員会の議論
第4節 重大災害処罰法の制定と施行令の制定
第5節 重大災害処罰法に対する改正議論
第4章 重大災害処罰法総論
第1節 意義
第2節 重大災害処罰法の合憲性
第3節 適用範囲と効力
第4節 受範者の概念と範囲
第5節 損害賠償の特則
第5章 重大産業災害
第1節 安全保険確保義務
第2節 注文者の義務
第3節 両罰規定と実効性確保案
第6章 重大市民災害
第1節 概念と適用範囲
第2節 安全及び保健確保義務
第3節 重大市民災害致死傷罪

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

中村穂佳「韓国 重大な産業災害等の処罰及び防止に関する法律の制定」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』(月刊版. 287-1), 2021.4.
https://dl.ndl.go.jp/pid/11659067

中村穂佳「韓国の重大災害の処罰及び防止に関する法整備」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』(290), 2021.12.
https://dl.ndl.go.jp/pid/11914487/1/1

岡久慶「英国における企業の致死事件に対する刑事処罰の拡大」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』(234). 2007.12.
https://dl.ndl.go.jp/pid/1000288/1/1

（アジア情報課　河村真澄）

注

[1] 「대검찰청 중대재해 자문기구 초대 위원장에 권창영 법무법인 지평 변호사」법률신문ウェブサイト. 2022.2.17.
https://www.lawtimes.co.kr/news/176561

[2] 「韓国の労働環境の変化－企業は適切な対応を－」JETROウェブサイト. 2021.5.17.
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/a404b5e852b236a4.html
「韓国における中小企業の重大災害処罰法対応（2022年3月）」JETROウェブサイト. 2022.3.31.
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2022/02/4867ffe88d1c8abc.html

[3] Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007（2007年法人故殺法）の日本語での解説として次の論考がある。
岡久慶「英国における企業の致死事件に対する刑事処罰の拡大」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』(234). 2007.12.
https://dl.ndl.go.jp/pid/1000288/1/1