<朝鮮語>『韓国社会の不平等と貧困の現実』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2023年6月公開)

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アジア情報室 作成

이성균(イ・ソンギュン)『한국사회 불평등과 빈곤 현실(韓国社会の不平等と貧困の現実)』서울, 피와이메이트, 2022.11, xiv, 227 p【ED5-K2

キーワード

韓国、格差問題、貧困

著者情報

著者のイ・ソンギュンは、蔚山大学校で社会・福祉専攻の教授を務める社会学者であり、韓国社会学会、批判社会学会、不平等研究会等多数の学会で活動している。

出版の背景・目的

韓国では、1990年代までの高度成長期には、多くの国民に就職の機会があり、家庭での生活を送るうえで十分な収入も確保できたため、貧富の格差は低い水準で維持されていた。しかし、2000年代には、高度成長の終焉に伴い就職の機会が減少し、生活に必要な所得を得ることが難しくなり、貧困と不平等の拡大が社会問題として浮上した。韓国における経済的・社会的不平等は、第4次産業の登場やコロナ・パンデミックにより近年一層深刻化している。

本書は、このような状況を踏まえつつ、ウィズ・コロナ時代の韓国の格差問題を解決するための示唆を得ることを目的として刊行された。

本書のポイント

本書では、2000年代から現在に至るまでの時期を主な対象として、韓国社会の不平等と貧困をめぐる問題が検討されている。この分野における先行研究の関心が所得や資産等の経済的格差に集中している中、本書の第3章から第7章では、雇用機会の質に関する地域差や住居環境、労働者のメンタルヘルス等の社会的格差について分析が行われている。

日本国内においても、コロナ・パンデミックによる格差問題の悪化を指摘する論調が見受けられるところであり[1]、本書は、韓国における同問題の実態を調査するうえで参考となる。

目次

はじめに
Ⅰ.不平等と貧困の理解
Ⅱ.所得と資産の不平等
Ⅲ.相対的貧困の現実
Ⅳ.住居の貧困と単身世帯
Ⅴ.地域の不平等と良質の働き口
Ⅵ,労働市場の不平等と業務ストレス
Ⅶ.青少年の機会不平等意識
Ⅷ.コロナ19パンデミック状況の不平等と貧困
参考文献

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

中村穂佳「【韓国】家事勤労者の雇用改善等に関する法律の制定」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』月刊版. No.291-2, 2022.5.
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/12251714
中村穂佳「【韓国】求職者の就業促進に関する法律」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』月刊版. No.286-1, 2021.1.
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/11613493
藤原夏人「【韓国】 国民基礎生活保障法の改正 : 個別給付への転換」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』月刊版. No.262-2, 2015.2.
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/8965190
藤原夏人「【韓国】 社会保障基本法の全面改正」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』月刊版. No.254-1, 2013.1.
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/6018661
白井京「韓国における格差問題への対応 : 非正規職保護法と社会的企業育成法」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説.』(236), 2008.6.
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1000238

(アジア情報課 野間 俊希)


[1] 橋本健二「データで解明『コロナで階級社会化が加速』の衝撃 : 打撃を最も受けたのは非正規の若者と女性」東洋経済オンライン 2021.11.29.
https://toyokeizai.net/articles/-/470173Leave the NDL website.