日本-条例の調べ方

条例とは、地方公共団体が自治立法権に基づいて制定する法の一形式です。ここでは、条例について簡単に説明したうえで、都道府県および市町村、都特別区の条例の調べ方について紹介します。なお、【 】内は当館請求記号です。

1. 条例とは

1-1. 自治立法

憲法94条Leave the NDL website. は、「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定し、地方公共団体の自治権を保障しています。地方公共団体がその自治権に基づいて自治法規を制定することを自治立法といい、主な自治立法には条例と規則があります。一般に、条例と規則をあわせて「例規」といいます。

1-1-1. 条例

条例は、地方公共団体が議会の議決を経て制定します。地方自治法第14条第1項Leave the NDL website. は、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる」と規定しており[1]、条例の制定範囲は自治事務のみならず法定受託事務についても及びます[2]。また、地方公共団体は、義務を課したり権利を制限したりするには、法令に特別の定めがある場合を除いて、条例で規定しなくてはなりません。

1-1-2. 規則

規則は、地方公共団体の長が、法令に違反しない限りにおいて、その権限の属する事務に関して制定することができます[3]

1-2. 条例の制定・改廃

条例の制定や改廃は、議会の議決によって成立します(地方自治法第96条第1項第1号Leave the NDL website. )。原則として、条例案は議会の議員または地方公共団体の長のいずれからでも提出することができ(同法第112条第1項Leave the NDL website. 及び同法第149条第1号Leave the NDL website. )、議決は過半数によります(同法第116条第1項Leave the NDL website. )。議会の議長は、条例の制定や改廃の議決があった場合、その日から3日以内に地方公共団体の長に送付しなければなりません(同法第16条第1項Leave the NDL website. )。送付を受けた地方公共団体の長は、再議等の措置を講ずる必要がないと認めれば、送付された日から20日以内に公布しなければなりません(同法第16条第2項Leave the NDL website. )。条例は、条例に特別の定めがある場合を除き、公布の日から起算して10日を経過した日に施行されます(同法第16条第3項Leave the NDL website. )。

2. 調べ方

具体的な条例の調べ方を紹介します。

2-1. 公報を見る

条例の公布に必要な事項は、各地方公共団体が条例で定めることとされています(地方自治法第16条第4項Leave the NDL website. )。一般に、条例の公布は、各地方公共団体の公報への掲載か、掲示板への掲示によって行われます。国の公報である『官報』には掲載されません。現在、すべての都道府県と一部の市町村が公報を発行しています。公報には、条例のほかに、規則や告示、公告なども掲載されています。

2-1-1. 冊子体で見る

東京本館の議会官庁資料室では、すべての都道府県の公報と一部の市町村の公報を所蔵しています。ただし、原則として戦後のものに限られます。また、最近では冊子体の刊行が廃止され、ホームページ上での公開のみとなっている地方公共団体もあります。
冊子体の公報の所蔵状況については、国立国会図書館サーチの「詳細検索」画面で、「キーワード」に「調べたい地方公共団体名」および「公報」(または「県報」「市報」など)と入力して検索してください。
また、各都道府県及び各政令指定都市の公報については、以下の表でそれぞれ所蔵状況をまとめてありますので、国立国会図書館サーチでの検索結果とあわせてご参照ください。

なお、東京都については、戦前(明治から昭和まで)の公報も所蔵しています。戦前の東京都の公報をお探しの場合は、以下をご参照ください。

2-1-2. インターネット等で見る

公報は、各地方公共団体のホームページでそれぞれ公開されており、なかには過去の公報まで遡って公開されているものもあります。当館のインターネット資料収集保存事業(WARP)の以下のページには、各都道府県の公報のウェブサイトのリンク集がありますので、ご利用ください。

  • 「都道府県公報」
    各都道府県の公報のウェブサイトのリンク集です。このうち、インターネット資料収集保存事業(WARP)では、各都道府県の公報をウェブサイトに掲載された状態のままで保存しています。また、国立国会図書館デジタルコレクション(電子書籍・電子雑誌)では、それらを巻号ごとに整理して保存しています。

2-2. 例規集を見る

現行の条例は例規集に掲載されます。例規集には、条例のほかに、規則や告示、通達なども収録されています。

2-2-1. 冊子体で見る

冊子体の例規集は加除式の形態のものが多く、東京本館の議会官庁資料室で、すべての都道府県の現行例規集と一部の市町村および都特別区の現行例規集を所蔵しています。国立国会図書館サーチの「詳細検索」画面で、「キーワード」に「調べたい地方公共団体名」および「例規集」(または「例規」など)と入力して検索してください。

2-2-2. インターネット等で見る

最近では、インターネット上で例規集を公開している地方公共団体が多くなっています。インターネット上で例規集を見るには、各地方公共団体のホームページから探すほか、以下のウェブサイトのリンク集、データベースで見ることもできます。

2-3. 参考資料を見る

  • 『実践自治 : Beacon Authority』(イマジン出版 2000- 季刊 【Z71-D842】)
    『自治体情報誌D-file』(イマジン出版 1990- 半月刊 【Z2-2068】)の別冊として、年4回刊行されています。前年中に制定、改正、公布、施行された条例のうち、先進的・特徴的な条例を収録し、解説しています。なお、インターネット上で閲覧できる条例は、全文ではなく、そのURLのみを掲載しています。

  • イマジン自治情報センター 編『地方自治体新条例集』(イマジン出版 1999-2004 【AZ-391-G395】ほか)
    上記の『実践自治 : Beacon Authority』の前身です。1999年版から2004年版まで発行されており、前年中に制定、改正、公布、施行された条例のうち、先進的・特徴的な条例を収録しています。まちづくり・福祉・環境・情報公開など分野別に収録され、条例の全文と解説が掲載されています。


[1] 地方公共団体には、普通地方公共団体と特別地方公共団体があります。普通地方公共団体は都道府県および市町村、特別地方公共団体は特別区および地方公共団体の組合、財産区です。特別地方公共団体である特別区の条例制定権について、同法第283条Leave the NDL website. には、「この法律又は政令で特別の定めをするものを除くほか、第二編及び第四編中市に関する規定は、特別区にこれを適用する」とあり、同法第14条第1項Leave the NDL website. で規定された条例制定権は特別区に対しても適用されます。
[2] 自治事務とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務を除いたすべての事務をいいます。法定受託事務とは、地方公共団体が処理する事務のうち、国(または都道府県)が本来果たすべき役割に係るものであり、国等において、その適切な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に特に定めるものをいいます。
[3] なお、これとは別に、自治立法には、議会が定める会議規則や、公安委員会、教育委員会、人事委員会、選挙管理委員会等が定める規則もあります。