<中国語>『中国の生物安全 : 戦略と対策』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2023年5月公開)

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アジア情報室 作成

王宏广, 朱姝 等 著『中国生物安全 : 战略与对策 (中国の生物安全 : 戦略と対策)』北京 : 中信出版集团, 2022.4, 21, 324 p【EG225-C92

キーワード

中国、生物安全、バイオセキュリティ、バイオセーフティ

著者情報

著者の王宏広は、中国生物技術発展センター主任などを歴任し、現在は、清華大学国際バイオエコノミーセンター主任・教授、北京大学中国戦略研究センター執行主任等を務める。朱姝は中国科学技術発展戦略研究院の副研究員[1]。バイオ技術、技術予測及び評価を専門とする。

出版の背景・目的

人類の生命・健康、生物の正常な生存、生態系の正常な構造・機能が、生物技術(バイオテクノロジー)の研究開発・応用活動による侵害から安全であることを、狭義の生物安全(biosafety)、病原性有害生物、外来種、生物技術やその応用による侵害・損害から安全であることを、広義の生物安全(biosecurity)という[2]
2020年10月に「中華人民共和国生物安全法」[3]が制定され、2021年9月に開催された中国共産党中央政治局の集団学習では、習近平総書記が「生物安全は人民の生命と健康、国家の長期にわたる安定、中華民族の永続的発展に関わる」と発言した[4]。本書の出版の背景には、生物安全を重視する国の姿勢と社会の関心の高まりがあるとみられる。

本書のポイント

新型コロナウィルス感染症の世界的流行にみられるように、生物安全は、中国のみならず、世界全体にとって重大な問題である。本書は、中国内外の生物安全をめぐる歴史的経緯、現在の課題、対策等をまとめており、この問題を把握し、各国の状況を比較検討する上で参考となる。

目次

第1篇 生物安全と世界情勢
 第1章 生物安全と世界情勢の変化
 第2章 過去の回顧 生物に関する災禍はかつて何億何万もの人々の生命を奪った
 第3章 未来の展望 生物安全に関する形勢はさらに深刻化する可能性がある
第2篇 世界における生物安全
 第4章 世界の生物安全に関する現状と趨勢
 第5章 米国は生物に関する脅威を同国最大の脅威と認識している
 第6章 いくつかの国はかつて生物兵器を研究製造あるいは使用した
 第7章 多くの国・地域が続々と生物安全に関する保障措置を講じている
第3篇 中国における生物安全
 第8章 歴史の回顧 生物安全は七大成果を取得した
 第9章 現状の目撃 生物安全に関する情勢は激変している
 第10章 未来の展望 生物安全に関する新たな戦略が強く待たれる
 第11章 安全の確保 生物安全にはいまだに10の欠陥がある
 第12章 災いの予防 生物安全に関する十大システムを構築する
 第13章 バイオエコノミー時代 新たな科学技術革命をリードする可能性がある

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

吉澤剛「開かれた時代におけるバイオセキュリティ」『ライフサイエンスをめぐる諸課題 : 科学技術に関する調査プロジェクト報告書』2016.3
https://dl.ndl.go.jp/pid/9913625/1/1
湯野基生「中国における生物安全法の制定」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』No. 288, 2021.6
https://dl.ndl.go.jp/pid/11680351/1/1

(アジア情報課 濱川 今日子)


[1] 本書p.304及び中国科学技術発展戦略研究院ウェブサイト(http://www.casted.org.cn/member/info/87/9外部サイト)による。

[2] 湯野基生「中国における生物安全法の制定」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』No. 288, 2021.6, p.50.
この論文によれば、中国の学会において、生物安全の定義に定説はなく、ここで示される「生物安全」の定義は、代表的な説である。

[3]「中华人民共和国生物安全法」(中華人民共和国主席令第 119 号)

[4]「习近平主持中共中央政治局第三十三次集体学习并发表重要讲话」2021.9.29.
http://www.gov.cn/xinwen/2021-09/29/content_5640153.htm外部サイト