谢曙光 主编『中国皮书发展报告 = Pishu development report of China 2022 (智库成果蓝皮书 = Blue book of think tank output)（中国皮書発展報告.2022（シンクタンク成果白書））』 北京 : 社会科学文献出版社, 2023.1, 2, 2, 333 p【UE21-C255】

キーワード

中国、皮書

著者情報[1]

本書主編の謝曙光（本名：謝寿光）は、2020年まで22年の長きにわたり社会科学文献出版社の社長を務めた人物であり、同社の報告書シリーズ「皮書」[2]創設の立役者として知られる。現在は中国出版協会副理事長、中国社会学会事務局長等の要職にある。

出版の背景・目的

本書は「皮書の発展動向をまとめた皮書」という特異な位置付けの刊行物であり、2019年版を嚆矢として各年版が刊行されている。皮書の「皮」は本のカバーのことであり、皮書とは「（色付きの）カバーで装丁された書籍」を意味する。例えば、中国の政府機関が発行する白いカバーの報告書は「白皮書」（日本の白書に相当）と称される。ただし、社会科学文献出版社が報告書シリーズ「皮書」の出版を精力的に続けてきた結果、皮書と言えばこのシリーズを指すことも多く、本書もその例に当たる。

報告書シリーズ「皮書」の基本的な特徴は次のようなものである。①特定テーマの下で毎年刊行され、②大学の研究機関や民間のシンクタンクが執筆に携わることが多く、③当該テーマの発展動向をまとめた論考からなる。同社では、社会科学分野を中心に多種多様なテーマの皮書を刊行してきた。1997年の出版開始以来、2022年12月時点での累計出版点数は4,900点近くにのぼるという[3]。なお、皮書は分野ごとにカバーが色分けされており、経済・産業・社会等に関する「藍皮書」、生態・環境・農村等に関する「緑皮書」、国際政治経済等に関する「黄皮書」が存在する[4]。

本書のポイント

社会科学文献出版社では、デジタル版の皮書を収録した「皮書データベース」を運営している[5]。本文の閲覧は有料だが、検索のみの利用は無料であるため、特定分野の皮書の存在や収録内容を調べる際に重宝するデータベースである。本書の特徴として、このデータベースの利用統計（閲覧数・ダウンロード数等）をはじめとした各種指標を用い、皮書の定量評価を試みている点が挙げられる[6]。その他にも、目次に見るとおり多様な論考を収録しており、今や中国の最新動向を知るための重要情報源となった皮書について多くの知見を得ることができる。

目次

I 全体報告
B.1 皮書の制作・出版の現状、動向と対応（2022年）

II 分野別報告
B.2 デジタル科学技術とその応用に関する皮書の発展報告（2022）
B.3 社会・政治・法律に関する皮書の発展報告（2022）
B.4 国・地域・グローバルガバナンスに関する皮書の発展報告（2022）
B.5 文化・メディアに関する皮書の流行テーマと動向分析（2022）

III 規範・評価篇
B.6 皮書のコンテンツに関する評価分析報告（2022）
B.7 2021年版皮書のメディア影響力の分析報告
B.8 皮書のテーマ選定に関する分析報告（2022）
B.9 皮書の学術規範性に関する考察の報告（2022）

IV テーマ篇
B.10 シンクタンクの知識生産を可能にする皮書のデジタルプラットフォーム：原動力、道筋と展望
B.11 皮書のデジタル化に関する発展報告（2022）
B.12 皮書ブランドの伝播力に関する研究報告（2022）
B.13 計量書誌学から見た我が国の皮書の発展状況と対応策

V 事例篇
B.14 地方の社会科学院における皮書制作の実践－2021年の河南シリーズ藍皮書を例に―

VI 付録
B.15 皮書に収録された各論考の使用状況トップ100

（アジア情報課　木下　雅弘）

注

[1]本書「主要编撰者简介」及び以下の記事に基づく。
「社会科学文献出版社社长谢寿光卸任，担任该职已有22年」澎湃新闻, 2020.11.4
https://www.thepaper.cn/newsDetail_forward_9847511

[2] 皮書の概要は以下の記事に詳しい。
前田直俊「皮書について―中国の社会科学報告書」『アジア情報室通報』第5巻第3号, 2007.9
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3051650_po_bulletin5_3.pdf?contentNo=1

[3]本書「全体報告」及び裏表紙の記載に基づく。

[4]皮书研究院「皮书类别」皮书网，2020.9
https://www.pishu.cn/gyps/psfl/448560.shtml

[5]皮书数据库
https://www.pishu.com.cn/skwx_ps/database?SiteID=14

[6]本書「全体報告」「付録」等