<中国語>『ロシア・ウクライナ戦争関係論文集』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2024年1月公開)

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アジア情報室 作成

姚宏旻 [ほか] 作『俄烏戰爭專題論文集(ロシア・ウクライナ戦争関係論文集)』桃園 : 國防大學, 2022.11, 227 p【AC8-651-C109

キーワード

台湾 国防 中台関係 ロシアによるウクライナ侵攻

著者情報

姚宏旻は、台湾の国防大学国際・国防事務学院国際安全保障研究所の副教授兼所長。その他の著者の多くは、多様な軍歴を有する国防大学の指導教官である。
国防大学は、国防関係の高等教育機関4校が統合され2000年に設立された国防部傘下の大学。軍の指導者及び専門的な人材の育成を目的としている。

出版の背景・目的[1]

2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻により、台湾では中台戦争のリスクに対する市民の危機意識が高まり、兵役制度の在り方などを含めた大きな議論が巻き起こった。国防大学では、侵攻開始直後から、学内の専門家を招集し研究討議を行い、その分析内容を各部署に提供して教学の参考とした。
これらの文章は、台湾の市民に専門的で明晰な軍事分析を提供すると共に、全民国防教育[2]の参考資料とすることを目的として、学術審査を経た上で出版された。

本書のポイント

本書は、陸、海、空、兵站、軍事動員、心理戦などをテーマとする8本の論文からなる。ロシアによるウクライナ侵攻の情勢を分析するだけでなく、台湾の軍部がこの問題をどのように認識し、自身の戦略に反映させようとしているかについて論じている。日本周辺の安全保障環境を検討する上で参考となる1冊である。

目次

第1篇 ロシア・ウクライナ戦争の教訓及び台湾海峡の防衛作戦への影響
第2篇 ロシア・ウクライナ戦争が中国共産党の軍事戦略に与える影響の検討及びわが軍の対応方策
第3篇 ロシア・ウクライナ戦争とテロリズム
第4篇 ロシア・ウクライナ戦争が中国人民解放軍の現代化及び台湾の安全保障に与える影響
第5篇 2022年ロシア・ウクライナ戦争における地上部隊の市街戦についての研究
第6篇 ロシア・ウクライナ戦争がわが海軍艦隊にもたらした反省
第7篇 ロシア・ウクライナ戦争の過程を教訓にわが軍の兵站及び軍事動員をいかにすべきか検討する
第8篇 ロシア・ウクライナ戦争期間中のウクライナのソーシャルメディアによるプロパガンダ戦略

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

西住祐亮「【アメリカ】ウクライナ危機のインド太平洋地域への示唆を検証する議会公聴会」『外国の立法』292-1, 2022.7
https://dl.ndl.go.jp/pid/12302078
上原有紀子, 島村智子, 青井佳恵「ロシアによるウクライナ侵攻と国際法(上) : 国連の枠組みを通じた対応」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.1229, 2023.3.29
https://dl.ndl.go.jp/pid/12767598
上原有紀子, 島村智子, 青井佳恵「ロシアによるウクライナ侵攻と国際法(中) : 武力行使禁止原則・国際裁判の活用」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.1230, 2023.3.29
https://dl.ndl.go.jp/pid/12767600
上原有紀子, 島村智子, 青井佳恵「ロシアによるウクライナ侵攻と国際法(下) : 国際人道法・国際人権法と刑事責任の追及」『調査と情報-ISSUE BRIEF-』No.1231, 2023.3.29
https://dl.ndl.go.jp/pid/12767602
竹野貴子「【アメリカ】台湾との防衛協力に関する下院軍事委員会公聴会」『外国の立法』298-1, 2024.1
https://dl.ndl.go.jp/pid/13127899

(アジア情報課 濱川 今日子)


[1]本書の序言による。

[2] 「全民国防教育」とは、国民の国防に関する知識と国家安全保障に対する意識を高めることを目的に実施されているものであり、国防部が「全民国防教育法」に基づき、政府、地方政府、学校現場などを対象とする年度活動計画を策定している。
『112年中華民國國防報告書 National defense report 2023』國防部, 2023.9, p.160.
https://www.mnd.gov.tw/PublishForReport112.aspx外部サイト