<朝鮮語>『高齢社会の法的課題』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2024年1月公開)

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アジア情報室 作成

전종익(チョン・ジョンイク)ほか『고령사회의 법적 과제(高齢社会の法的課題)』서울, 박영사, 2023.7【AK4-541-K119

キーワード

韓国、高齢社会、社会保障

著者情報

本書の著者は、チョン・ジョンイク、キム・ドギュン、ジョン・グンシク、カン・グァンムン、イ・ドンジン、イ・ゲジョンの6名であり、いずれもソウル大学校法学専門大学院で教授または副教授を務めている。

出版の背景・目的

韓国では2017年に高齢化率(総人口に占める65歳以上の者の割合)が14.2%となり、いわゆる高齢社会[1]に突入した。2025年には20%を上回って超高齢社会になると予想されている。このように高齢化が進む韓国社会で、今後新たに生ずるであろう法的問題を予想し、解決策を提示する必要があるとの認識から、2020年から2年間、ソウル大学校法学研究所の支援のもとで共同研究「高齢社会の法的課題」が行われた。本書はその研究結果を取りまとめたものである。

本書のポイント

日本の高齢化率は1970年に7%を超え、1994年に14%に達すると、2005年以降は世界で最も高い水準で推移してきた。他方で韓国の場合、高齢化率が7%を超えたのは2000年と他の先進諸国に比べて遅かったが、今後の少子高齢化により、2045年には高齢化率で日本を上回るとも予想される[2]。急速な高齢化の進行によって、韓国は高齢社会という課題のフロントランナーになろうとしていると言えよう。
本書はこうした韓国の高齢社会における法的課題について、生活保障、医療、消費者保護等の側面から検討を加えている。また、第5章では、目下高齢化率で先を行く日本での法制度について取り上げ、高齢者法制の展開を「自己決定の尊重」と「保護の原理」という側面から分析する。
高齢社会への対応という両国共通の課題に関して、韓国側での動向や議論を多様な側面から把握できる一冊である。

目次

第1章 研究の背景と要約
第2章 高齢社会における年金の憲法的問題-財政安定性を中心に-
第3章 高齢者の人間の尊厳の尊重-自律性、アイデンティティ、脆弱性の側面から-
第4章 朝鮮時代の高齢者関連法制の考察
第5章 日本での高齢社会の法制に関する論議-概観、法理念、高齢者の人権-
第6章 高齢社会での医療法の課題-遠隔医療、共同決定、資源投入制限-
第7章 高齢社会での信託の役割-信託の公益的機能に注目して-
第8章 高齢社会での寄付文化活性化のための法的提言-公益信託を中心に-
第9章 高齢社会での契約法・消費者法
索引

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

川端一摩「超高齢社会と金融の役割」『調査と情報-Issue Brief-』(1032), 2019.1., https://dl.ndl.go.jp/pid/11222295
小寺正一「超高齢社会における終末期の医療と介護―看取りの政策に向けて―」『レファレンス』(833), 2020.6., https://dl.ndl.go.jp/pid/11504138

(アジア情報課 河村 真澄)

[1] 本書の基準では、高齢化率が7%以上14%未満の社会を高齢化社会、14%以上20%未満の社会を高齢社会、20%以上の社会を超高齢社会と呼んで区別している。
[2] 「令和5年版高齢社会白書」内閣府. https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/index.html外部サイト