<朝鮮語>『大学入試制度 : 身分制度なのか? 教育制度なのか?』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2024年1月公開)

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アジア情報室 作成

서남수, 배상훈 지음(ソ・ナムス、ぺ・サンフン 著)『대입제도 : 신분 제도인가? 교육 제도인가?(大学入試制度:身分制度なのか? 教育制度なのか?)』, 476 p【FB52-K266

キーワード

韓国、教育、大学入試

著者情報

ソ・ナムスは、1979年の文教部(現・教育部、部は日本の省に相当)入庁以来、大学入試制度に係る実務に携わった後、朴槿恵政権下で教育部長官 (2013年3月~2014年7月)に就任して、同制度の簡素化を含む教育改革に取り組んだ。
ぺ・サンフンも、大統領府の職員として大学入試に関する政策に携わった経歴を持つ。現在は成均館大学教育学科教授を務めている。

出版の背景・目的

韓国では、出身大学が重要なステータスであるとされているため、大学入試をめぐる競争は極めて激しい。しかし、本書によれば、韓国の学界において、自国の大学入試制度を多元的な視点から綿密に調査した成果は存在せず、同制度を体系的に説明した書籍・論文すら多くない。このような問題意識に基づいて、韓国の大学入試制度を複眼的に分析した上で、分かりやすく説明することを目指して本書は執筆された。

本書のポイント

本書は、まず、韓国の現在の大学入試制度が形成されるまでの歴史的なプロセスを明らかにしている。その上で、同制度の形成に影響を与えた教育的・社会的現象を示しつつ、同制度がもたらした韓国社会の変化も説明している。
日本では、文部科学省の大学入試制度改革において中心政策であった共通テストでの英語民間試験の活用が、居住地域や経済状況により受験機会に格差が生じる可能性について国内で指摘されたため実現に至っていない[1]。社会的な要因を視野に入れつつ韓国における同制度の歴史や現況について詳細に分析した本書は、日本の大学入試制度の今後を考える上で も参考となると思われる。

目次

著者の文1
著者の文2
第1章 大学入試制度は教育制度なのか? 身分制度なのか?
第2章 大学入試制度とは一体何なのか?
第3章 教育課程が変われば大学入試制度も変わるというのか?
第4章 修学能力試験のリスニングの時間に、どのようにして飛行機が離着陸できないようにするのか?
第5章 なぜ三不[2]
第6章 大学入試制度を根本的に改革しようというのか?
第7章 大学入試制度、 独り韓国だけが問題なのか?
第8章 自律型私立高校、特殊目的高校がなぜ問題なのか?
第9章 私教育を根絶できる大学入試制度?
第10章 家庭教師の禁止はなぜ憲法に反するのか?
第11章 大統領はなぜ定時募集の比率を高めるよう指示したのか?
第12章 大学入試制度、どこに行けばよいのか?
参考文献

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

ローラーミカ「大学入試改革の動向」『調査と情報-Issue Brief-』No.1073, 2019. 11.28.
https://dl.ndl.go.jp/pid/11389903

(アジア情報課 野間 俊希)


[1] 二宮徹「大学入試改革"2本柱"断念 文科省は混乱の反省を」NHKウェブサイト 2021.7.13 https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/452262.html外部サイト
[2] 三不とは、一定の金額を大学に払って特例入学する制度である寄与入学制、主要科目に対する試験を大学が自主的に実施して選抜する本考査、韓国所在の全ての高校を入学結果で区分して等級化した後、その結果を入試に反映する高校等級制の3つを禁止することを意味する。三不を根幹とする教育政策(三不政策)は、韓国政府により1999年に導入された(「삼불정책 (3不政策)」한국민족문화대백과사전ウェブサイト https://encykorea.aks.ac.kr/Article/E0073850#:~:text=3%EB%B6%88%20%EC%A0%95%EC%B1%85%E4%B8%89%E4%B8%8D,%ED%95%B4%EC%86%8C%20%EB%B0%A9%EC%95%88%E3%80%8D%EC%9D%B4%20%EB%B0%9C%ED%91%9C%EB%90%98%EC%97%88%EB%8B%A4.外部サイト