<中国語>『中国大陸綜覧.2023年版』:アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2024年2月公開)

更新
アジア情報室 作成

劉文斌 [ほか] 編撰『中國大陸綜覽 = Overview of mainland China. 2023年版(中国大陸綜覧.2023年版)』 新北 : 法務部調查局展望與探索雜誌社, 2023.6, 23, 222 p【GE341-C149

キーワード

中国、両岸関係

著者情報

本書は、台湾・法務部調査局内の組織「『展望と探索』雑誌社」[1]が編集・発行したものである。法務部調査局は、国家安全保障や重大犯罪の防止を担う政府機関[2]であり、日本の公安調査庁に相当する[3]

出版の背景・目的

法務部調査局では、とりわけ大陸情勢と両岸関係の理解・把握を重要とみなし、1988年に『中国大陸綜覧』の刊行を開始した[4]。同書は、政治、経済、エネルギー、教育など、様々な分野における中国の政策動向をまとめた概説書である。5年に一度開催される中国共産党全国代表大会にあわせて改訂を行っており、今回の2023年版は第二十回全国代表大会(2022年10月)の内容を反映したものとなっている。

本書のポイント

内容面のポイントとして、まず「情報の新しさ」が挙げられる。本書は2018年版以来5年ぶりの改訂版であり、中国における最新の政策動向を概観することができる。また、軍事、対外関係、統一戦線工作[5]、対台湾工作といった国家安全保障に関わる分野の記述が比較的手厚い点も特徴であり、これは法務部調査局の担務を反映したものと言える。形式面では、色分け(本書は全てカラーページ)と図表の活用を通じ、読みやすさの向上を図っている点が印象的である。なお、法務部調査局ウェブサイト上で本書のPDF版が公開されており[6]、無料でダウンロード可能である。

目次

第一類 総論
第二類 党政
第三類 法制
第四類 財政と経済
第五類 交通運輸とエネルギー
第六類 文化と教育
第七類 社会
第八類 軍事
第九類 対外関係
第十類 統一戦線工作
第十一類 対台湾工作
第十二類 大陸用語

関連する国立国会図書館刊行物収載の文献

渡邊幸秀「中台関係の動向 : 「1つの中国」原則をめぐって」『レファレンス』(818), 2019.3., https://dl.ndl.go.jp/pid/11253886
湯野基生「台湾 : 国家安全法の改正」『外国の立法 : 立法情報・翻訳・解説』(296), 2023.6., https://dl.ndl.go.jp/pid/12888736

(アジア情報課 木下 雅弘)


[1] 雑誌『展望と探索』の発行元として知られる。同誌の概要については以下の記事に紹介がある。
「<中国語>『展望と探索』19(3):アジア情報室の社会科学分野の新着資料紹介(2021年3月公開)」リサーチ・ナビ, https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/asia/shinchaku2103_chi2

[2] 法務部調査局の担務については以下のページに詳しい。
「法務部調查局組織法」法務部調査局, https://www.mjib.gov.tw/EditPage/?PageID=11227b6c-63b9-41ef-98fe-faf9dfdabb63外部サイト
「本局重大政策」法務部調査局, https://www.mjib.gov.tw/EditPage/?PageID=750fb6eb-aad6-440e-84e8-6d3689b13e6f外部サイト

[3] 台湾の政府系ニュースサイト「Taiwan Today」の記事に「法務部調査局(日本の公安調査庁に相当)」とある。
「APG年次総会、台湾の「通常のフォローアップ」への格上げを承認」Taiwan Today, 2019.8.26., https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148&post=161007外部サイト

[4] 本書「序言」に基づく。

[5] 以下の論文では、統一戦線工作を「主要敵に対抗するために、主要敵を内部分裂させたり、友好勢力を増やそうとする策略」と説明している。
山口信治「中国の影響工作概観——その目標・手段・組織・対象」『NIDSコメンタリー』第288号, 2023.12.8., https://www.nids.mod.go.jp/publication/commentary/commentary288.html外部サイト

[6] 「中國大陸綜覽」法務部調査局, https://www.mjib.gov.tw/eBooks/eBooks_Detail?CID=63外部サイト