国際音楽資料目録 (RISM)
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音楽・映像資料室 作成
1. 国際音楽資料目録(RISM)とは
国際音楽資料目録(※)は音楽研究の最も基本的なツールであり、世界の図書館、文書館、修道院等における手稿譜、印刷譜、音楽理論書等の所蔵を調査した所在目録です。一般にフランス語表記(Répertoire International des Sources Musicales)の略称でRISM(リスム)と呼ばれます。
(※)国際音楽資料総目録と訳されることもあります。
RISMは国際音楽学会(IMS)と国際音楽資料情報協会(IAML)が共同で取り組んでいる国際的事業です。なお、日本にはRISMの明確な受け皿となる機関はありません。日本国内では、国立音楽大学附属図書館等の機関が所蔵する資料情報が掲載されています。
RISMは大別して、A・B・Cの3つのシリーズから成り立っています。シリーズAは音楽資料所在目録、シリーズBは主題別資料目録、シリーズCは音楽図書館目録です。ただし、インターネットで無料公開されているオンライン目録(2.参照)に多くのデータが統合されたことで、シリーズの厳密な区分は二次的な役割となっています.
- シリーズA
A/IとA/IIの2種類の所在目録から成ります。シリーズAには1人の作曲家による楽譜の書誌情報と所蔵情報が含まれ、作曲家のアルファベット順に整理されています。現在では、インターネット上で無料のオンライン目録が公開されています。- A/Iは、1500年から1800年の間に出版された楽譜が対象です。当館では冊子体の一部と、CD-ROMを所蔵しています。
- A/IIは、1600年以降の主に手稿譜が対象です。冊子体は刊行されていません。当館ではDVD-ROMを所蔵しています。
- シリーズB
それぞれの主題に合わせて、楽譜(印刷譜・手稿譜とも)や音楽理論書を年代順、国別順等で整理した複数の目録が含まれます。冊子体で刊行されており、当館でも所蔵しています。また現在は、無料のインターネット上のオンライン目録で一部が公開されています。
詳細は「3-1. 図書」をご覧ください。 - シリーズC
シリーズA、Bに掲載されている所蔵館の住所録です。国・地域別に冊子体で刊行されており、シリーズC/Iはカナダとアメリカ、シリーズC/IIとC/IIIはヨーロッパ諸国、シリーズC/IVはイスラエル、日本、オセアニア、シリーズC/Vは東ヨーロッパの図書館を収録しています。当館では所蔵していません。
※RISMの詳しい情報は、RISMウェブサイトの出版物のページPublications(link to RISM website)を参照してください。また、このページの各シリーズの解説から、一部の資料について補遺等へのリンクをたどれます。
2. RISMのオンライン目録について
2-1. 概要
RISMのうち一部が、インターネット上で「RISM Catalog」として無料で公開されています。
現在の公開範囲はシリーズA/Iと A/IIの全てと、シリーズB/Iの全てとB/IIの一部などです。
2-2. 検索方法
検索はwww.rism.info とopac.rism.infoの2つのウェブサイトから可能です。2つとも言語選択に日本語がありません(言語は英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語から選択できます)。
ここでは英語を選択した場合の表示に基づいて説明します。
- www.rism.info(link to RISM website)
トップページにある「Online Catalogue of Musical Sources」の検索ボックスから、簡易検索ができます。検索ボックス横にある「RISM Catalog」にカーソルを合わせると「Advanced Search」が表示され、opac.rism.info(link to RISM website)の詳細検索に入れます。 - opac.rism.info(link to RISM website)
トップページの「RISM Catalog」の検索ボックスから簡易検索が、検索ボックス横のボタン「Advanced Search」から詳細検索ができます。
簡易検索は、キーワードで全文検索を行います。末尾に*(アスタリスク)を付けた前文一致検索、""(引用符)を付けた完全一致検索、大文字のAND、OR、NOT検索が可能です。
詳細検索は、最大3つの検索ボックスから、タイトル、作曲家名、言語などの項目を選択して検索が可能です。また、画面上に表示されるピアノキーボードで楽譜の最初の音程から検索できます。検索項目の詳細は、ヘルプ(Search Help)を参照してください。
3. 国立国会図書館所蔵のRISM
ここでは、当館の所蔵資料を紹介します。書誌事項末尾の【 】内は当館請求記号です。RISMの冊子体は巻の構成が複雑で、未刊行の巻もあります。なお、当館ではシリーズCは所蔵していません。
3-1. 図書
『Einzeldrucke vor 1800』(Kassel : Bärenreiter 1986- 【KD1-B24】)
シリーズAの冊子体です。当館で所蔵しているうち、第11巻から第14巻はシリーズA/Iの補遺と正誤表です。第15巻は、第1巻 から第9巻と第11巻から第14巻までの索引です。(当館では本編である第1巻から第9巻は所蔵していません。第10巻は未刊です。)『Répertoire international des sources musicales』 (München : G. Henle 1960- 【KD1-B64】)
シリーズBの冊子体です。【KD1-B64】に含まれる巻号と各巻タイトルは、国立国会図書館サーチで確認できます。- B/Iは、16世紀から17世紀に出版された楽譜集の目録です。
- B/IIは、1701年から1801年の間に出版された楽譜集の目録です。
- B/IIIは、カロリング朝時代(8世紀~10世紀)から1500年までの音楽理論の手写資料の目録です。6巻から成り、第1巻から第5巻は国別の目録、第6巻は補遺です。
- B/IVは、11世紀から16世紀のポリフォニー(多声音楽)の手写資料の目録です。6巻から成ります。第1巻は11世紀から14世紀初頭のアルス・ノバ時代初めまでを、第2巻は1320年から1400年まで(チェコ、ポーランド、及びイタリアのアルス・ノバ時代を除く)及び第1巻の補遺を、1-2巻別冊は第1巻と第2巻の補遺及び1100年から1400年までのイギリス及びアイルランドの資料を収録しています。 第3巻と第4巻は第1巻と第2巻で扱わなかった14世紀チェコとポーランド等を、第6巻はイタリアの図書館に保存されている15世紀から16世紀の資料を扱っています。
- B/Vは、トロープスとセクエンツィアの手写資料の目録です。
- B/VIは、1474年から1800年までに出版された、理論、歴史、美学等の音楽に関する文献の目録です。2巻から成り、著者名のアルファベット順に収録されています。
- B/VIIは、リュートとギターのタブラチュア譜として伝えられている手写資料の目録です。
- B/VIIIは、15世紀末から1800年までのあらゆる宗派のドイツ賛美歌について楽譜を含んでいる出版物の目録です。2巻から成り、第1巻は目録、第2巻は索引です。
- B/IXは、ヘブライ語の資料の目録です。第2巻(B/IX/2)は933年から1800年までの音楽に関する手写資料と出版物です。(第1巻(B/IX/1)は【KD1-A25】にあります。)
- B/Xは、900年から1900年までのアラビア語の音楽理論に関する手写資料の目録です。2巻から成ります。
- B/XIは、11世紀から17世紀までの古代ギリシャの音楽理論に関する手写資料の目録です。
- B/XIIは、下記の【UP72-A373】にあります。
- B/XIIIは、16世紀から18世紀までのスラブ語の賛美歌の楽譜を含んでいる出版物の目録です。
- B/XIVは、行列聖歌集の手写資料の目録です。2巻から成ります。
- B/XVは、スペイン・ポルトガル・ラテンアメリカのポリフォニー音楽の印刷譜と手写資料の目録です。
- B/XVIは、楽譜を含むヤシの葉写本(貝葉写本)の目録です。
- B/XVIIは、トリオ・ソナタの印刷譜の目録です。2冊から成ります。
『Hebrew notated manuscripts sources up to circa 1840』 (München : G. Henle Verlag c1989 【KD1-A25】)
シリーズB/IX の第1巻(B/IX/1)の冊子体です。(第2巻(B/IX/2)は【KD1-B64】にあります。)1840年頃までの楽譜が含まれるヘブライ語の手写資料の目録です。B/IX/1は2巻から成り、その第1巻は目録、第2巻は索引です。『Manuscrits persans concernant la musique』(München : G. Henle c1996 【UP72-A373】)
シリーズB/XIIの冊子体です。ペルシャの音楽理論に関する手写資料の目録です。『RISM-Bibliothekssigel : Gesamtverzeichnis』(München : G. Henle Verlag c1999 【UL311-A81】)
RISMでは各図書館を略記号(Library siglum)で表しており、その略記号の索引です。シリーズAからCとは別に、Special volumesとして発行されました。最新版はRISMウェブサイトのOnline Directory of RISM Library Sigla(link to RISM website)から入手できます。『Das Tenorlied : mehrstimmige Lieder in deutschen Quellen 1450-1580』(Kassel : Bärenreiter 1979-1986 【YM1-B5】)
ドイツ語資料における多声音楽の楽譜集の目録です。3巻から成り、第1巻は印刷物の目録、第2巻は手写資料の目録、第3巻は索引です。シリーズAからCとは別に、Special volumesとして発行されました。
※当館で所蔵していないシリーズA/Iの本編と、冊子体が発行されていないシリーズA/IIは、電子資料またはオンライン目録(2.参照)をご利用ください。
3-2. 電子資料
次の2点の電子資料の内容は、全てインターネット上で、無料で利用できるオンライン目録(2. 参照)に含まれます。
- 『Einzeldrucke vor 1800 Datenbank auf CD-ROM』(Kassel : Bärenreiter c2011 【YH245-B1050】)
シリーズA/IのCD-ROM版です。補遺と正誤表含むシリーズA/Iの冊子体の内容が全て収録されています。検索画面の言語はドイツ語と英語が選択可能です。 - 『RISM [electronic resource] : manuscrits musicaux après 1600』([München] : K.G. Saur c2006 【YH265-B13】)
A/IIのDVD-ROM版です。当館で所蔵している2006年刊は、約29,000の作曲家、540,000件以上のデータを収録しています。検索画面の言語はドイツ語、英語、フランス語、イタリア語、スペイン語が選択可能です。
4. 参考文献
RISMについて解説した資料を紹介します。
市川啓子「RISM(リスム)とRILM(リルム) ―音楽学・音楽史研究に不可欠な情報ツール―」(『Parlando』 (263) 2009 pp.4-5 【Z21-932】 )
RISMについて簡明に紹介した記事です。杉本ゆり, 宮崎ひとみ「Réportoire International des Sources Musicales」(『塔』 23 1983 pp.85-110 【Z21-382】 )
RISMのシリーズA及びシリーズBについて説明しています。『ニューグローヴ世界音楽大事典 第6巻』(講談社 1993.7【KD2-G49】)
排列は人名・事項名の五十音順で、「国際音楽資料総目録」が立項されています。樋口隆一「国際音楽資料目録(RISM)と資料情報入力ソフト「カリスト Kallisto」」(『明治学院大学藝術学研究』 (25) 2015.7 pp.1-6 【Z11-2282】)
RISMのプロジェクトについて触れています。
※明治学院大学 機関デポジトリでも公開されています。明治学院大学藝術学研究(参照日:2023-11-7)『Music research : a handbook Third edition』(New York, NY : Oxford University Press [2020] 【KD1-B158】)
音楽研究のための文献目録です。Chapter6、Chapter9で、RISMについて触れています。