昭和14年度交通電力動員実施計画綱領ニ関スル件

昭和14年5月26日 閣議決定

収載資料:国家総動員史 資料編 第1 石川準吉著 国家総動員史刊行会 1975.8 pp.306-309 当館請求記号:AZ-668-5

昭和十四年度交通電力実施計画綱領
第一章 総則
第一 本綱領ハ昭和十四年度交通電力動員実施ニ関スル準縄ヲ定ムルモノトス
第二 本綱領ノ目的ハ「昭和十四年度国家総動員実施計画設定ニ関スル件」(昭和十三年九月十三日閣議決定)ニ基キ長期戦時態勢ノ強化ヲ目標トシ重要物資ノ動員、労務ノ動員、資金並ニ貿易ノ統制ト相俟テ交通電力ノ動員計画ヲ策定シ以テ軍需充足ヲ主眼トスル外物資動員ノ実行ノ完璧ヲ期スルト共ニ日満支間ニ於ケル運輸通信ノ調整ヲ図ルニ在リ
第三 昭和十四年度ノ需要量ハ昭和十三年度ノ実績ニ概ネ一割増ヲ標準トス
第四 各庁ハ本綱領ニ依リ先ニ「昭和十四年度交通電力動員実施計画設定ニ関スル件」ニ基キ策定セル計画ニ所要ノ修正ヲ加ヘ之ヲ昭和十四年六月末日迄ニ企画院ニ提出スルモノトス
第五 各庁ハ其ノ設定セル計画ニ基キ動員ヲ実施スルモノトス
第六 動員計画設定並ニ実施上特ニ重点トスル事項左ノ如シ
一、軍需ノ充足並ニ物資動員ノ円滑ナル遂行ヲ期スル為適正ナル措置ヲ講ズルコト
二、各庁ノ定ムル交通電力動員実施計画ハ昭和十四年度物資動員計画ニ吻合スル如ク定ムルコト
三、以上ノ目的遂行ノ為所要ニ応ジ各庁ハ一般運輸通信及電力ニ対シ夫々適正ナル管制方策ヲ講ズルコト
四、以上ニ依リ生ジタル交通能力ノ特ニ大ナル支障ニ対シテハ交通電力動員委員会ニ依リ之ヲ調整スルコト
五、別ニ想定セラルル特殊輸送ノ遂行ノ為生ズルコトアルベキ各種ノ支障ニ対シテハ更ニ関係各庁ニ於テ適正ナル管制ノ方策ヲ樹立スルコト
六、前号ニ依リ更ニ人員、資材ノ補填ヲ必要トスル場合ハ企画院ニ於テ其ノ総量ヲ集計ノ上之ガ確保ニ付別途適正ナル計画ヲ樹立スルコト
第七 北、中、南支並ニ蒙疆ニ対シテハ本綱領ニ準ジ関係庁ト連絡ノ上興亜院ニ於テ適宜措置スルモノトス
第八 昭和十七年ヲ目標トスル交通電力ニ関スル長期整備計画ハ別ニ樹立スルモノトス 但シ生産力拡充計画ニ包含セラルルモノハ該計画ニ拠ルモノトス
第九 交通電力動員計画実施ニ関連シ必要ナル事項左ノ如シ
一 内外地並ニ日満支ノ交通ヲ有機的ニ総合調整スル為必要ナル機関ヲ整備スルコト  二 現下ノ物価政策ニ対応シ運輸通信電力ノ運賃料金ヲ適正ニ規正スルコト
三 現下物資輸送ノ逼迫ヲ救済スル為海陸運輸ノ有機的統制ニ依リ輸送力ノ総合的運用ヲ図ルコト

第二章 鉄道
第十 内外地及満洲ニ於ケル各鉄道機関ハ其ノ建設改良ニ関シ左ノ方針ニ準拠スルモノトス
一 内地鉄道ハ現下国内物資需給ノ実情ニ鑑ミ輸送力拡充ニ重点ヲ置キ特ニ幹線輸送路ノ増強及所要輸転材料ノ充実ヲ図リ鉄道新線ノ建設ハ軍事上及生産力拡充上真ニ已ムヲ得ザルモノニ止ムルコト
二 朝鮮鉄道ハ其ノ軍事上ノ使命ニ鑑ミ幹線ノ複線化、所要輪転材料ノ充実及平行線ノ完成ヲ図リ以テ輸送力ノ増強ヲ行フコト
三 満洲鉄道ハ現下ノ時局ニ鑑ミ特ニ所要輪転材料ノ充実及幹線輸送力ノ増強等ノ各種改良計画ノ充実ヲ期スル如ク措置スルコト
第十一 鉄道ニ関シ特ニ措置スベキ事項左ノ如シ
一 生産力拡充計画ノ(判別不能文字)ニ於ケル石炭輸送(判別不能文字)等ニ於ケル(判別不能文字)ニ関スル(判別不能文字)ルコト
二 大都市及其ノ(判別不能文字)スルコト
三 □内ニ於ケル主要物資ニ付テハ(判別不能文字)スルコト
四 (判別不能文字)円滑適正ヲ期スル為物資(判別不能文字)ムルコト
五 内外(判別不能文字)ルコト

第三章 海上運送(含小運送)
第十二 日満支交通□制ノ確立ニ(判別不能文字)無力(判別不能文字)道路ノ改良ニ努ムルモノトス
(以下判読不能)

第四章 船舶
第十七 船舶ニ関シテハ軍需充足ノ外重要物資ノ輸送ノ円滑及遠洋航路ノ充実ヲ期スルモノトス
第十八 船舶ノ特性ニ鑑ミ日満支ヲ通ズル船舶運輸ノ総合的調整ヲ図ルモノトス
第十九 船舶ニ関シ特ニ措置スベキ事項左ノ如シ
一 不足船舶補填ノ為船舶新造ノ促進及外国船ノ傭入要スレバ輸入ニ関シ必要ナル措置ヲ講ズルコト
二 重要物資輸送ノ円滑ヲ確保スルコト
イ 期間別配船予定計画ヲ樹立シ之ヲ実施スルコト
ロ 国体的輸送契約制ノ実行ヲ促進スルコト
ハ 物資輸送順位ヲ設定スルコト
三 小型汽船、機附帆船及帆船ニ依ル重要物資輸送計画及之ニ必要ナル小型汽船、機附帆船及帆船ノ補填及管制ニ関スル計画ヲ樹立シ之ヲ実施スルコト
四 遠洋航路充実ニ関スル具体的方策ヲ樹立シ之ヲ実施スルコト
五 配船統制ヲ行フ為強力ナル機構ヲ急遽整備スルコト
六 船員ノ充実ヲ図ル為適切ナル措置ヲ講ズルコト
七 時局ニ対応スル為海事行政機構ヲ整備充実スルコト

第五章 港湾
第二十 港湾ニ関シ措置スベキ事項左ノ如シ
一 各港湾ヘノ輸送ノ配分又ハ使用ノ方法、時期等ニ関シ考慮スルコト
二 水上ニ於ケル船舶艀等ノ供給ヲ円滑ニシ貨物ノ陸揚積込ヲ容易ナラシムルコト
三 港湾行政ノ統一簡易化、港湾事業ノ統制合理化ヲ図リ港湾ノ利(以下判読不能)
第二十一 港湾施設(判別不能文字)左ノ如シ
一 生産力拡充計画ノ(判別不能文字)ニ伴ヒ九州北□□ニ於ケル石炭ニ□スル港湾施設ヲ□□スルコト
二 内地(判別不能文字)ノ□□ニ必要ナル関係各(判別不能文字)スルコト
三 大(判別不能文字)ノ如キ現有□力ノ(判別不能文字)不足スル主要□□ニ□シテハ所要□□□其ノ□力ノ□□□□ヲ為スコト
四 大□□ノ□□ニ鑑ミ之ガ為(判別不能文字)シ其ノ(判別不能文字)合理化スルコト
五 □支□□ノ□□□ニ伴ヒ之ニ必要ナル(判別不能文字)スルコト

第六章 空運
第二十二 航空輸送ノ特性ニ(判別不能文字)ズル(判別不能文字)ノ総合的□□□□ルモノトス
第二十三 空運ニ関シ□□措置(判別不能文字)充ノ如シ
一 航空保安施設ヲ拡充□□スルコト
二 航空□ノ□産化ヲ図ルコト
三 □□航空□網ノ拡充ヲ図ルコト
四 航空要員の充□ヲ図ルコト

第七章 通信
第二十四 (判別不能文字)
一 (判別不能文字)充スルコト
二 主要地間ノ連絡通信施設等ニ市外電話回線ヲ整備スルコト
三 通信施設ノ合理的建設並ニ運用ニ努ムルコト
第二十五 日満支ヲ通ジ放送網ノ相互連絡ヲ図ルト共ニ放送ニ関スル諸施設ヲ整備拡充スルモノトス
第二十六 通信要員特ニ無線有技者ノ養成ニ関シテハ日満支ヲ通ジ需給ノ状況ヲ考慮シ適切ナル措置ヲ講スルモノトス
第二十七 時局関係重要通信ハ秘密ヲ確保スルト共ニ通信ノ取締ニ遺憾ナキ如ク臨機適切ナル措置ヲ講ズルモノトス

第八章 電力
第二十八 電力消費ノ規正ニ関シ適切ナル措置ヲ講ズルモノトス