石炭増産緊急対策ノ件
閣議決定年
昭和15年3月8日 閣議決定
収載資料:国立公文書館所蔵公文別録 87 ゆまに書房 1997.5 10-21、31、36 当館請求記号:YC-98
内外地石炭増産緊急対策(案)
内外地ニ於ケル石炭ノ増産ニ付テハ各種ノ実施方策ヲ講ジ鋭意努力シ来リタル処ナルガ昭和十五年度ニ於ケル情勢ヲ察スルニ重要物資ノ生産、輸出ノ増進其ノ他各般ノ施設ハ石炭ノ供給量ニ制約セラルルノ実状ニ在ルヲ以テ之ガ急速ナル増産並ニ輸送ノ円滑ヲ図ルハ最モ緊要ト認メラルルニ付テハ別紙ニ依リ緊急措置シ以テ石炭ノ供給確保ニ付遺憾無キヲ期セントス
尚将来ノ恒久的石炭増産対策ニ付テハ日満支ヲ通ズル需給ヲ考慮シ速カニ之ヲ樹立スルモノトス
(別紙)
第一 緊急基本対策
一 生産力拡充計画産業中ニ於テ当分ノ間石炭部門ヲ優先的ニ取扱フコト
二 企業採算ヲ考慮シテ積極的増産ヲ行ハシメ必要ニ応ジ増産命令等ヲ発動スルコト
三 炭質低下ノ防止ニ付適切ナル措置ヲ講ズルコト
四 石炭ノ配給機構ヲ整備拡充シ配給ノ円滑ヲ図リ以テ石炭ノ増産ニ支障ナキヲ期スルコト
五 急速ナル増産ヲ目途トシ新炭田ノ開発並ニ隣接鉱区ノ整理等ニ関シテ積極的ニ措置スルコト
六 鉱業報国精神ノ作興ニ関シ適切ナル措置ヲ講ズルコト
七 満洲国及支那ニ於ケル石炭ノ増産及輸送ニ対シ緊急措置ヲ要スル事項ニ関シ日本側ニ於テ協力ヲ要スルモノニ付テハ本対策ニ準ズルコト
第二 緊急労務対策
一 炭礦労務ノ充足ニ当リテハ生産力拡充計画産業中ニ於テ当分ノ間優先的ニ斡旋スルコト
二 炭礦労務ノ特殊性ニ鑑ミ其ノ募集ヲ容易ナラシムル為特別ノ措置ヲ講ズルコト
三 労務給源涸渇ノ現状ニ鑑ミ朝鮮人労務者等ヲ移入シ炭礦労務者ヲ充足スルコト
四 季節労務ノ利用及鉱業勤労報国隊ノ活動ヲ計画化シ炭礦ニ於ケル労務不足ノ緩和ヲ図ルコト
五 荷役労務ヲ改善充実スルコト
六 生産能率及稼働率ノ向上ヲ図ル為労務管理ヲ刷新シ作業条件ヲ適正ナラシムルト共ニ産業報国運動ノ普及強化ヲ図ルコト
七 炭礦従業者中勤務成績特ニ優秀ナル者ニ対スル功労表彰制度ヲ実施スルコト
第三 緊急資材対策
一 炭礦用資材ノ重要性ニ鑑ミ差当リ主要資材ノ急需ニ応ズル為生産力拡充計画産業中ニ於テ特ニ之ヲ優先的ニ生産配給スルコト
現在炭礦要主要資材中鉄鋼素材(特ニ中軌条、坑枠レール、パイプ、中板、小型棒□等)、釘、針金、□線、亜鉛鉱板、機械器具及部分品(特ニ電動機、鉱山□機及輸送□□類、炭車、チ□ン、ロールベアリング、電気安全燈、電纜等)、地下足袋、ゴム靴、セメント、カーバイト及坑木等ハ不足特ニ甚シキ現状ニ鑑ミ之ガ供給上左ノ措置ヲ講ズルコト
1 鉄鋼素材
(イ)現在迄ノ発行切符ニ付テハ商工省並ニ日本鋼材連合会ニ於テ適切ナル方法(例ヘバ色別ニ明確ニ区分セル切符ヲ以テ)ニ依リ責任ヲ以テ現物入手方ヲ斡旋スルコト
(ロ)炭礦用トシテ最モ緊要ナル坑枠レール、中軌条、筒管、中板、【以下原本に記述ページなし】
第四 緊急輸送対策
一 石炭輸送ノ重要性ニ鑑ミ陸上、港湾及海上ヲ通ジ石炭及炭礦用資材ノ輸送ニ付優先的考慮ヲ払フコト
二 陸上、港湾、海上輸送ノ能力拡充及能率向上ニ資スル為適切ナル方法ヲ講ズルコト
1 山元ニ於テハ努メテ上半期ニ於ケル出炭ヲ増加シ以テ下半期出炭トノ均衡ヲ図ルト共ニ坑所ノ一□休業ヲ改メテ出炭量ノ平均化ヲ図ルコト
尚坑所ノ貯炭設備ヲ改善増設スルコト
2 目下計画中ノ石炭輸送ニ関係アル船舶車輛ノ落成ヲ促進シ特ニ昭和十五年度新造石炭車ノ増強ヲ図ルコト
3 目下改造工事中ノ若松□藤ノ木□橋ヲ速ニ完成セシムルコト
4 炭種及銘柄ノ可及的単純化ヲ図ルコトニ努メ且積合セ輸送を出来得ル限リ避クルコト尚冬期ニ於ケル北海道炭ノ水洗選炭ニ付 【以下原本に記述ページなし】
北支蒙彊石炭増産緊急対策(案)
現下ノ石炭供給不足ノ情勢ニ鑑ミ日満支ヲ通ジ最モ急速ニ之ガ充足ヲ図ル為北支蒙彊ノ石炭開発ニ付特別ノ考慮ヲ払フト共ニ之ガ増産並ニ対日供給ニ付別紙ニ依リ緊急措置スルモノトス
(別紙)
一、北支蒙彊ニ於ケル産業ニ付テハ石炭部門及石炭ノ対日供給ニ直接関連スル部門即チ鉄道、港湾、積込施設等ヲ優先的ニ取扱フモノトス
二、本格的炭礦会社ノ設立ヲ促進スルモ情況ニ即応シ運営会社ヲ設立スルモノトス
三、特ニ対日供給ニ遺憾ナキヲ期スル為石炭ノ配給機構ヲ整備スルモノトス
四、重要炭礦ノ治安確保ニ付一層軍ノ協力ヲ要望スルモノトス
五、輸送及資材関係
石炭ノ対日供給上ノ最大障碍ハ輸送ニアルヲ以テ之ヲ円滑ナラシムル為左ノ措置ヲ講ズ
(一)左ノ資材ハ支那向物資中優先的ニ取扱フモノトシ配給順位ハ内地ニ於ケル炭礦用主要資材ト同等ニ取扱フコト
(1)炭礦用主要資材
(2)鉄道用所要資材中石炭輸送ニ関係アルモノ(特ニ車輌用及路線用資材)
(3)港湾ノ増強新設及石炭荷役労力増進ニ必要ナル資材
(4)石炭積込ライター及曳船用資材
(二)石炭輸送用車輌ノ製造時期ヲ可及的ニ繰上ゲルコト
(三)開発資材ニ付日本ヨリ中古品及浚渫船ノ転用転設ニ付至急措置スルコト
(四)右資材ノ輸出ニ付テハ特ニ其ノ手続ノ簡易化及迅速化ヲ図ルコト
(五)石炭対日輸送用ノ曳船及荷役ニ関シテハ統制ヲ強化シ対日供給確保ニ遺憾ナキヲ期スルコト
(六)石炭対日輸送ニ関シ関係各庁ノ連絡ヲ更ニ緊密化シ円滑ナル輸送ト配船ヲ図ルコト
六、労務関係
(一)日本人技術者ノ数ヲ増加スルコト
(二)苦力募集事務ヲ能率化シ且稼働率向上ヲ図ル措置ヲ講ズルコト
(三)苦力ノ定着性ヲ促進スル為食糧ノ供給ヲ確保スルコト
七、開□炭礦関係
(一)開□炭礦ガ中支ノ外国系会社等ニ対シ供給スル特粉及一号粉ヲ対日供給ニ振向ケシムル様努力スルコト
(二)開□炭礦ノ所要資材中若干ハ日本ヨリモ供給スルコト