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タイの失地回復斡旋に関連するタイ及び仏印施策に関する日本政府(四相会議)の決定

昭和15年11月21日 閣議決定

収載資料:資料体系アジア・アフリカ国際関係政治社会史 第2巻 アジアIb 浦野起央編著 パピルス出版 1987.3 pp.1024-1025 当館請求記号:A76-94

方 針
帝国ハ速ニ泰、仏印間ヲ斡旋調停シ、泰ノ失地恢復ニ協力スルコトニ依リ、日泰緊密関係ヲ確立スルト共ニ、仏国ヲ利導シテ仏印ニ対スル帝国勢力ノ進出拡充ヲ図リ、以テ帝国ノ大東亜ニ於ケル指導的地位ノ確立ニ資セントス。
実施要綱
一 対泰施策
泰ヲシテ速ニ我方要求(一一月五日四相会議決定)ヲ容認セシメ、速ニ「ルアン・プラバン」及「パクセ」ノ失地恢復斡旋ニ着手スルト共ニ、右以外ノ失地(特ニ英領)恢復ハ将来ノ考慮ヲ約ス。尚右ニ関連シ経済的援助及武器供給ヲモ考慮ス。
備考
泰ニシテ我方要求ニ対シ曖昧ナル態度ヲ執ル場合ニハ、日仏印関係緊密化ヲ促進シ、南部仏印ニ対スル帝国勢力ノ進出、対仏印武器供給、対泰武器供給ノ停止、将来惹起スルコトアルヘキ日泰関係ノ悪化ヲ、仄カス等ノ手段ニ依リ、我方要求ヲ容認セシム。
二 対仏印施策
(イ)仏印ニ対シテハ泰ノ失地恢復要求ノ局限、爾余仏印領土保全ニ対スル支援ヲ条件トシ、「ルアン・プラバン」及「パクセ」両地域ノ泰領編入ヲ容認セシムルト共ニ、南部仏印ニ対スル日仏印間軍事的協力ヲ認メシムル如ク施策ス。
備考
イ 仏印ニシテ我方要求ニ応セサル場合ニハ、要スレハ顕ハニ援泰ノ態度ニ出テ、又ハ英米ノ対泰積極工作、並ニ仏印南部ニ対スル英ノ積極的施策ニ対スル共同対抗策ノ要アルヲ示唆スルト共ニ、更ニ要スレハ経済協定遅延ヲ理由トシ、松岡「アンリー」協定廃棄ヲ仄カス等、所要ノ圧力ヲ加フルモノトス。
ロ 泰ニシテ我要求ヲ峻拒スル如キ場合ニハ、日泰関係上仏印ヲ全面的ニ支援スルノ態勢ヲトリ、積極的ナル軍事的協力ヲ行フ如ク施策ス。
(ロ)対仏交渉ニ当リテハ其ノ概要ヲ独ニ通告シ、且ツ要スレハ仏本国ニ対スル独ノ圧力ヲ利用シ、仏政府ヲ誘導セシムルコトアリ。