昭和17年度国民動員実施計画策定ニ関スル件
閣議決定年
昭和17年5月26日 閣議決定
収載資料:国家総動員史 資料編 第1 石川準吉著 国家総動員史刊行会 1975.8 pp.1101-1105 当館請求記号:AZ-668-5
昭和十七年度国民動員実施計画ハ大東亜戦争完遂ノ為戦争遂行力ノ確保増強ヲ目途トシ将来ニ亘ル国民職業ノ再編成ヲ考慮シツツ昭和十七年度各種総動員計画ニ照応シテ重要業務ニ於ケル要員ノ充足並ニ勤労総力ノ最高度発揮ヲ図ル根本方針ノ下ニ左ノ要領ニ依リ之ヲ策定ス
第一 一般方針
一、本計画ニ於テハ前年度同様常時要員ト臨時要員ニ区分シタルモ計画ノ対象タル業務及要員ノ範囲ヲ拡大スルコトトシ労務動員ノ名称ヲ本年度ヨリ国民動員ト改ム
二、需給計画ハ給源逼迫ノ現状ニ鑑ミ努メテ需要ヲ圧縮シ之ガ為生ズル要員ノ不足ハ生産能率ノ増進ニ依リ補填スルモノトス
三、労務配置ノ重点化ヲ徹底スル為別途昭和十七年度国民動員重要工場事業場労務実施計画ヲ設定シ労務ノ優先的充足ヲ行フ
四、徴用ノ迅速適正ヲ期スル為徴用計画特ニ技能者ニ付テハ工場事業場別個人別計画ヲ確立シ徴用工場事業場ノ労務管理ニ付具体的指導方針ヲ樹立ス
五、需給計画ノ実施特ニ重要工場事業場ニ対スル要員ノ充足ヲ確保シ且労務管理ヲ調整シ能率増進ヲ図ル為労務調整令及重要事業場労務管理令ノ適正ナル運用並ニ労務管理等ノ活用ヲ図ル
六、満洲開拓民、満洲開拓青少年義勇軍ニ付テハ満洲開拓第二期五ヶ年計画ニ基キ実行可能ナル限度ニ於テ努メテ之ガ供出ヲ図ル
南方占領地ニ於ケル労務要員ノ充足ニ付テハ原則トシテ現地調達トスルモ必要ナル指導者ノ送出ニ付テハ事態ノ推移ヲ稽ヘ別途考慮ス
七、新規国民学校修了者及新規中等学校卒業者ノ給源ヲ確保スル為不急ト認メラルル学校殊ニ文部大臣ノ認可ニ依ラザル各種学校及之ニ類スル施設ニ対シ之ガ制限又ハ収容定員ノ抑制等特別ノ措置ヲ講ズ
八、学校卒業者使用制限令ニ基ク昭和十七年九月及十二月卒業者ノ割当ハ本年度ヨリ指定学校及指定学科ニ土木建築ヲ加ヘ別途之ヲ行フ
第二 策定要領
常時要員
一、常時要員ノ需要ニ付特ニ考慮シタル事項概ネ左ノ如シ
1、常時要員ハ一般労務者、事務職員及公務要員ノ三種ニ区分シ計画ス
2、需要ノ産業別ハ従来ノ軍需産業、生産拡充計画産業、同附帯産業、生活必需品産業、交通業、国防土木建築業ノ外農業及水産業ヲ加フルモノトシ事務職員ニ於テハ金融保険業ヲモ考慮ス
3、軍需ノ充足並ニ輸送ノ確保ニ重点ヲ置キ極力之ガ要員ノ充足ヲ図ル
4、生産拡充計画産業ニ於テハ昭和十七年度生産拡充計画ニ即応スル如ク鉄鋼、石炭、電力、アルミニユム、非鉄金属、石油ノ生産及造船等ニ付特ニ之ガ要員ノ充足ニ努ム
5、二以上ノ計画産業ニ関連シ其ノ何レカ一ニ計上スルヲ適当トセザル産業ノ要員ハ便宜生拡附帯産業中ニ包含ス
6、生活必需品産業ニ於テハ国民生活ノ安定ヲ図ルノ要緊切ナル現状ニ鑑ミ前年度ノ計画範囲ヲ拡大シ之ガ生産確保ニ努ム
7、生拡附帯産業及生活必需品産業中企業整備ノ対象タル業種ニ在リテモ整備後ノ操業ノ為ノ要員ハ之ヲ考慮ス
8、交通業ニ於テハ船舶及鉄道ニ依ル輸送ニ重点ヲ置クト共ニ之ニ関連スル仲仕ノ充足ニ努ム
9、農業ニ於テハ其ノ重要性ニ鑑ミ之ガ要員ノ確保ヲ図ルノ外農地開発営団等ノ新規開墾及木炭製造ノ要員ヲ計上ス
10、事務職員ハ中等学校以下ノ新規卒業者ヲ以テ充当シ得ル下級事務職員ヲ対象トシ一般労務者ニ準ジテ之ヲ取扱フ
11、公務要員ハ時局下特ニ充足ヲ要スル警察消防官吏、国民学校助教及青年学校専任指導員、看護婦、官庁及公共団体ノ雇傭員ヲ対象トシテ之ガ要員ヲ計上ス
二、常時要員ノ供給ニ付特ニ考慮シタル事項概ネ左ノ如シ
1、給源ハ新規国民学校修了者、新規中等学校卒業者、転職者、青壮年登録者及移入朝鮮人労務者トス
2、女子ニ付テハ未婚女子ヲ主タル対象トシ之ガ動員ヲ強化スルコトトシ特ニ事務職員及公務要員ニ在リテハ可及的ニ女子ヲ以テ男子ニ代替セシム
3、商業(接客業ヲ含ム)従事者ヨリノ供出ハ小売業整備ニ関スル実施方針ニ準拠シ昭和十七年度中整理可能ト認メラルル業種ニ付考慮ス
4、工業従事者ヨリノ供出ハ物資関係及事業ノ緊要度ヲ考慮シ其ノ整理範囲ヲ定メ極力之ガ確保ヲ図ル
5、農業従事者ヨリノ供出ハ満洲開拓民ノ外ハ労務需要ノ性質等ニ照応シ已ムヲ得ザル限度ニ止ムルモノトシ農業生産統制令第八条ノ統制ヲ受クル農業者以外ノ者ニ限ルモノトス
6、家事使用人、一般土木建築業従事者其ノ他有業者及無業者ヨリノ供出ハ青壮年登録者中ヨリ職業転換ノ難易等ヲ勘案シテ定ム
7、移入朝鮮人労働者ハ工場、鉱山、国防土木建築、仲仕等ノ要員ニ充当スルコトトシ本年二月閣議決定ニ係ル「朝鮮人労務者活用ニ関スル方策」ニ基キ内地及鮮内ノ労務事情ヲ勘案シ前年度ニ比シ相当多数ヲ増加計上ス
臨時要員
臨時要員ノ需給ニ付考慮シタル事項概ネ左ノ如シ
1、需要ハ常時要員ニ於テ計画シタル産業ノ外災害ノ復旧及防除事業等ノ要員タル臨時的又ハ季節的ノモノニシテ予メ推定シ得ルモノ及公務要員トス
2、農業ノ需要ニ対シテハ食糧生産ノ重要性及農村ニ於ケル労務事情ニ鑑ミ可及的多数ヲ計上ス
3、一般国民ヨリノ供出ハ国民皆勤労ノ精神ニ基キ供給範囲ノ拡大ニ努メ青壮年登録者並ニ年齢十四年及十五年ノ者ニシテ学生生徒ニ非ザル者ヲ基礎トシテ之ガ可及的多数ヲ動員ス
4、学生生徒ヨリノ供出ハ学校ノ種類ニ拘ラズ年齢十四年以上ノ者ヲ動員ス但シ青年学校生徒ニ在リテハ其ノ性質ニ鑑ミ僅少部分ノミ警備要員充足ノ為計上ス
5、臨時要員ノ需給ノ調整及活用ハ主トシテ国民勤労報国協力令ノ運用ニ待ツモノトス
第一表 国民動員需給計画(総括)
一、常時要員 (単位 人)
(一)需要数
区分 男 女 計
新規需要増加 七七七、九〇〇 二〇七、一〇〇 九八五、〇〇〇
一般労務者 七四〇、〇〇〇 一七二、一〇〇 九一二、一〇〇
下級事務職員 二五、六〇〇 二六、〇〇〇 五一、六〇〇
公務要員 一二、三〇〇 九、〇〇〇 二一、三〇〇
減耗補充要員 四五三、一〇〇 四三三、四〇〇 八八六、五〇〇
外地要員 七六、三〇〇 二〇、〇〇〇 九六、三〇〇
計 一、三〇七、三〇〇 六六〇、五〇〇 一、九六七、八〇〇
(二)供給数
区分 男 女 計
新規国民学校修了者 四一七、八〇〇 三五二、九〇〇 七七〇、七〇〇
〃 中等学校卒業者 五五、七〇〇 三八、四〇〇 九四、一〇〇
転職者 五〇一、〇〇〇 一四七、〇〇〇 六八四、〇〇〇
其ノ他有業者 一八四、〇〇〇 六〇、九〇〇 二四四、九〇〇
無業者 二八、八〇〇 六一、三〇〇 九〇、一〇〇
朝鮮人労務者 一二〇、〇〇〇 ‐ 一二〇、〇〇〇
計 一、三〇七、三〇〇 六六〇、五〇〇 一、九六七、八〇〇
二、臨時要員 (単位万人延人員)
区分 男 女 計
(一)重要数 八、二〇〇 二、五〇〇 一〇、七〇〇
(二)供給数 八、二〇〇 二、五〇〇 一〇、七〇〇
一般 五、九二〇 一、七〇〇 七、六二〇
学生生徒 二、二八〇 八〇〇 三、〇八〇
備考
本計画ハ事態ノ推移ニ依リ修正スルコトアルベキモノトス
第二表 常時要員新規需要数
(一)内地ニ於ケル一般労務者新規需要数
区分 男 女 計
新規需要増加数 七四〇、〇〇〇 一七二、一〇〇 九一二、一〇〇
軍需産業 三九七、六〇〇 一〇一、一〇〇 四九八、七〇〇
生産拡充計画産業 一六四、三〇〇 一九、一〇〇 一八三、四〇〇
前号ノ附帯産業 三五、三〇〇 二五、九〇〇 六一、二〇〇
生活必需品産業 八、三〇〇 八、四〇〇 一六、七〇〇
交通業 八〇、一〇〇 一三、九〇〇 九四、〇〇〇
国防土木建築業 三二、三〇〇 三、三〇〇 三五、六〇〇
農業 二二、一〇〇 四〇〇 二二、五〇〇
減耗補充要員数 四〇〇、四〇〇 三八三、二〇〇 七八三、六〇〇
計 一、一四〇、四〇〇 五五五、三〇〇 一、六九五、七〇〇
備考
一、水産業ニ於ケル需要トシテ七万人ヲ確保スルモノトスルモ特ニ之ヲ計上セズ
二、減耗補充要員数中ニハ農業及水産業ニ於クル純減耗ノ補充トシテ新規国民学校修了者中三十二万人ヲ計上ス
(二)内地ニ於ケル下級事務職員新規需要数
区分 男 女 計
新規需要増加数 二五、六〇〇 二六、〇〇〇 五一、六〇〇
軍需産業 五、三〇〇 二、三〇〇 七、六〇〇
生産拡充計画産業 五、九〇〇 三、〇〇〇 八、九〇〇
前号ノ附帯産業 一、四〇〇 一、〇〇〇 二、四〇〇
生活必需品産業 七〇〇 三〇〇 一、〇〇〇
交通業 三、四〇〇 一、三〇〇 四、七〇〇
国防土木建築業 八〇〇 一〇〇 九〇〇
金融保険業 五、〇〇〇 三、九〇〇 八、九〇〇
農業 三、一〇〇 一四、一〇〇 一七、二〇〇
減耗補充要員数 二八、四〇〇 二九、〇〇〇 五七、四〇〇
計 五四、〇〇〇 五五、〇〇〇 一〇九、〇〇〇
(三)内地ニ於ケル公務要員新規需要数
区分 男 女 計
新規需要増加数 一二、三〇〇 九、〇〇〇 二一、三〇〇
警察官吏 二、〇〇〇 ‐ 二、〇〇〇
消防官吏 一、二〇〇 ‐ 一、二〇〇
国民学校助教及
青年学校専任指導員 一、八〇〇 二、三〇〇 四、一〇〇
看護婦 ‐ 二、四〇〇 二、四〇〇
雇傭員(官庁) 五、八〇〇 三、五〇〇 九、三〇〇
(公共団体) 一、五〇〇 八〇〇 二、三〇〇
減耗補充要員数 二四、三〇〇 二一、二〇〇 四五、五〇〇
計 三六、六〇〇 三〇、二〇〇 六六、八〇〇
(四)外地満州支那等ノ内地ニ対スル新規需要数
区分 男 女 計
朝鮮 七、五〇〇 一〇〇 七、六〇〇
台湾 一、〇〇〇 ‐ 一、〇〇〇
満州 四五、四〇〇 一八、七〇〇 六四、一〇〇
新規中等学校卒業者
及新規国民学校修了者 一七、二〇〇 七〇〇 一七、九〇〇
青少年義勇軍 一二、一〇〇 ‐ 一二、一〇〇
一般開拓民 一五、四〇〇 一七、四〇〇 三二、八〇〇
指導員 七〇〇 六〇〇 一、三〇〇
支那 二、四〇〇 二〇〇 二、六〇〇
軍現地附帯要員 二〇、〇〇〇 一、〇〇〇 二一、〇〇〇
計 七六、三〇〇 二〇、〇〇〇 九六、三〇〇
備考
一、内地ヨリ樺太ヘノ渡航労務者十万人ヲ確保スルモノトスルモ特ニ之ヲ計上セズ
二、朝鮮、台湾及支那ノ新規需要数ハ新規中等学校卒業者及新規国民学校修了者ノ割当数ノ合計トス
三、新規中等学校卒業者ノ需要数ハ割当未済ノ昭和17年十二月□上卒業者ニ付便宜前年同期卒業者ノ割当数ヲ計上セルヲ以テ□□アルモノトス
第三表 内地ニ於ケル常時要員供給数
区分 男 女 計
新規国民学校修了者 四一七、八〇〇 三五二、九〇〇 七七〇、七〇〇
農村関係 一二五、〇〇〇 一九五、〇〇〇 三二〇、〇〇〇
其ノ他 二九二、八〇〇 一五七、九〇〇 四五〇、七〇〇
新規中等学校卒業者 五五、七〇〇 三八、四〇〇 九四、一〇〇
要整理工業従事者 一三四、三〇〇 六〇、七〇〇 一九五、〇〇〇
商業従業者 三六六、七〇〇 八六、三〇〇 四五三、〇〇〇
家事使用人 二、〇〇〇 二五、〇〇〇 二七、〇〇〇
其ノ他有業者 七八、〇〇〇 二一、六〇〇 九九、六〇〇
一般土木建築業従事者 二〇、〇〇〇 ‐ 二〇、〇〇〇
農業従事者 八四、〇〇〇 一四、三〇〇 九八、三〇〇
無業者 二八、八〇〇 六一、三〇〇 九〇、一〇〇
朝鮮人労務者 一二〇、〇〇〇 ‐ 一二〇、〇〇〇
計 一、三〇七、三〇〇 六六〇、五〇〇 一、六九七、八〇〇
第四表 内地ニ於ケル臨時要員需要目標数
(単位万人延人員)
区分 男 女 計
軍需産業 三〇二 七五 三七七
生産拡充計画産業 七七九 二一 八〇〇
前号ノ附帯産業 二五二 九五 三四七
生活必需品産業 四五 九三 一三八
交通業 四七一 四四 五一五
国防土木建築業 一、四三七 一〇〇 一、五三七
災害復旧事業 九〇九 ‐ 九〇九
金融保険業 一 六 七
農業 三、二二四 二、〇二九 五、二五三
公務要員 七八〇 三七 八一七
計 八、二〇〇 二、五〇〇 一〇、七〇〇
第五表 内地ニ於ケル臨時要員供給目標数
(一)一般 (単位万人延人員)
区分 男 女 計
軍需産業 一九二 四八 二四〇
生産拡充計画産業 七〇五 二一 七二六
前号ノ附帯産業 二〇一 八六 二八七
生活必需品産業 三〇 七〇 一〇〇
交通業 三九三 ‐ 三九三
国防土木建築業 一、一〇七 一〇〇 一、二〇七
災害復旧事業 七二九 ‐ 七二九
金融保険業 ‐ 二 二
農業 二、三八七 一、三五三 三、七四〇
公務要員 一七六 二〇 一九六
計 五、九二〇 一、七〇〇 七、六二〇
(二)学生生徒 (単位万人延人員)
区分 男 女 計
軍需産業 一一〇 二七 一三七
生産拡充計画産業 七四 ‐ 七四
前号ノ附帯産業 五一 九 六〇
生活必需品産業 一五 二三 三八
交通業 七八 四四 一二二
国防土木建築業 三三〇 ‐ 三三〇
災害復旧事業 一八〇 ‐ 一八〇
金融保険業 一 四 五
農業 八三七 六七六 一、五一三
公務要員 六〇四 一七 六二一
計 二、二八〇 八〇〇 三、〇八〇