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価格調整補給金制度要綱(案)

昭和18年3月30日 閣議決定

収載資料:国立公文書館所蔵公文別録 89 ゆまに書房 1997.5 88-93 当館請求記号:YC-98

昭和十八年二月十六日閣議決定「緊急物価対策要綱」ニ基キ左記ニ依リ価格調整補給金制度ヲ整備シ其ノ運用ヲ刷新セントス

一、価格調整補給金ニ依リ価格調整ヲ為スベキ物資ノ範囲
差当リ別表ノ通トス
二、価格調整機構ノ整備
(一)価格調整補給金ニ依リ価格調整ヲ為スベキ物資ニ付原則トシテ物資別ニ価格調整機関ヲ整備スルモノトス但シ麦類及薪炭ニ在リテハ夫々食糧管理特別会計及薪炭需給調節特別会計ヲシテ価格調整機関ノ作用ヲ営マシムルモノトス
(二)右ノ価格調整機関ヲシテ原則トシテ当該物資ノ一手買取及一手販売ヲ為サシムルモノトス
(三)価格調整機関ノ買取価格ハ適正生産費ニ適正利潤ヲ附加シタル適正ナル生産者価格トシ
(イ)生産者ニ対シ原価計算ヲ実施セシメタル結果ヲ基礎トシ業種別統制会又ハ当該物資ノ価格調整機関ヲシテ之ヲ算定セシムルモノトシ、価格形成担当庁ハ之ニ基キ迅速ニ生産者価格ヲ決定スルモノトス
(ロ)麦類、薪炭等原価計算ヲ実施シ得ザル農芸物資ニ付テハ生産費調査ノ結果等ヲ基礎トシ適正ナル生産者価格ヲ決定スルモノトス
買取価格ハ事業ノ性質ニ依リ個別価格制、集団価格制又ハ単一価格制ヲ採用スルモノトス
尚買取価格決定ニ当リテハ別途決定スベキ報奨的価格制ヲ採用スルモノトス
(四)価格調整機関ノ販売価格ハ当該物資需要地迄ノ運賃諸掛ヲモ含ミタル価格トシ之ヲ現行水準ニ据置クモノトス
尚販売価格ニ付テハ需用者別ニ二重価格ノ設定ヲモ考慮スルモノトス
三、価格調整補給金制度ノ運用ノ刷新
(一)価格調整補給金ハ今後原則トシテ物資所管庁毎ニ包括的ニ予算ニ計上シ之ガ使用ハ当該主務大臣ニ一任スルモノトス
(二)価格調整機関ニ於ケル価格調整ノ収支ハ之ヲ別会計トシテ経理セシメ価格調整補給金ハ原則トシテ価格調整機関ニ対シ当該別会計ノ収支尻補填金トシテ之ヲ交付スルモノトス
(三)物資所管主務大臣ハ物資別ニ毎年度予算使用予定額ヲ概定シ其ノ範囲内ニ於テ価格調整機関ノ収支尻補填金ヲ交付スルモノトスルモ、適用物資間ニ於テ彼此流用スルヲ妨ゲザルモノトス
四、前各項実施ノ為左ノ措置ヲ講ズルモノトス
(一)価格調整機関ノ整備
物資別価格調整機関ハ差当リ現存ノ物資別配給統制機関ヲ活用シ能フ限リ統制会ノ全額出資ニ依ル法人トスルモノトス
(二)価格調整補給金制度ノ運用ノ刷新
(イ)価格調整補給金ハ原則トシテ三ケ月毎ニ之ヲ価格調整機関ニ交付スルモノトス、此ノ場合ニ於テ価格調整機関ガ借入金ヲ以テ調整ヲ為シタルトキハ当該借入金ニ対スル金利負担ハ之ヲ価格調整補給金中ニ加算スルト共ニ要スレバ所要資金ノ融通ニ付政府ニ於テ斡旋スルモノトス
尚生産者価格ノ決定及価格調整補給金ノ交付ニ際シテハ手続ノ簡易迅速化、徴取報告書類ノ簡素化ニ努ムルモノス
(ロ)価格調整機関ノ経理ニ対シテハ主務大臣ニ於テ厳ニ之ヲ監督スルモノトシ尚価格調整機関ノ職員ハ之ヲ公務員ト為スコトヲ考慮スルモノトス
備考
一、外地ニ於テモ本要綱ニ準ジ価格調整措置ヲ実施スルモノトス
二、価格調整補給金制度ノ総合運用ヲ図ル為速ニ特別会計ノ設置ヲ考究スルモノトス
三、本要綱ニ基ク価格調整ノ為昭和十八年度ニ於テ予算計上額以外ニ新ニ交付スルヲ要スル金額ニ付テハ原則トシテ之ヲ一括シテ予備金支出ヲ為シ必要アル場合ニハ昭和十八年度追加予算ニ計上スルモノトス
四、本件及別途決定スベキ価格報奨制度等ノ実施ノ為原価計算制度ノ確立ヲ期スルト共ニ戦時適正利潤算定要綱、財務諸表準則、財産評価準則等ヲ急速整備スルモノトス
五、米穀、電力、綿糸、人造絹糸及ステープルファイバーニ付テハ別途決定スルモノトス
別表
石炭   銑鉄   普通鋼々材
電気銅  麦類   薪炭
肥料