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戦力増強緊急措置ニ伴フ昭和18年度下期物動計画調整ニ関スル件並ニ昭和19年度物資動員計画大綱ニ関スル件

昭和18年10月29日 閣議決定

収載資料:国家総動員史 資料編 第2 石川準吉著 国家総動員史刊行会 1975.8 pp.666-712 当館請求記号:AZ-668-5

戦力増強緊急措置ニ伴フ下期ノ一八物動計画調整ニ関スル件
九月二十三日閣議決定「陸海軍船舶増徴ト戦力増強トノ調整ニ関スル非常措置ノ件」ニ基ク下期/一八物動計画ノ調整ヲ本計画ノ如ク定ムルモノトス
本計画ニ於テハ先ニ決定セル十九年度戦力増強目標ノ外之ガ達成確保ノ為特ニ緊要ナル石炭、電力、工作機械、重要機械、並ニ一部化学製品拡充ノ為所要ノ資材ヲ捻出スルト共ニ鉄道、港湾施設並ニ乙造船ノ増強ニ関シ併セ措置シ今次措置ノ完遂ヲ期スルコトトス
別ニ海軍艦艇等ノ緊急整備用鋼材並ニ陸軍ノ要望ニ係ルボルネオ製油所建設用資材ノ一部ヲ追加配当ス
以上各措置ニ伴フ所要資材ノ造出ニ関シテハ「企計M物A〇六七号」ニ則リ本計画ノ如ク定ムルモ之ガ実行途上ニハ多大ノ難関ヲ予想セラルルヲ以テ左記諸方策ヲ強行シ関係各庁協力シテ戦力増強目標ノ完全ナル実現ヲ期スルモノトス

一、鋼材限定品種ノ所要量確保ハ目標達成ノ関鍵ナルヲ以テ本計画ニ依ル増産ヲ強行スルト共ニ之ガ適正ナル配給ヲ期スル為所要ノ措置ヲ講ズルコト
二、鉄鋼原料ノ供給ニ関シテ左ノ如ク之ガ実行ヲ確保スルモノトス
イ 交易営団ノ鋼材等買上ニ関シテハ特ニ必要ナル航空造船関係資材ハ之ヲ除外スルモ所定量ニ達スル如ク別途細目ニ関シ協議スルコト
ロ A、B、C鉄屑供出ニ関シテハ本計画ニ基ク所定量ノ外十八年度既定計画ニ係ル一般回収、特別回収、別途管理工場供出分ノ供出ヲ遂行スルコトトシ細目ニ関シテハ別途協議スルコト
ハ 非常回収ニ関シテハ企業整備ノ保有工場又ハ保有設備ノ廃止ニ伴フ新規回収措置ヲ速カニ断行シ所定量ヲ確保スルコトトシ実施ニ関シテハ特段ノ強力ナル措置ヲ講ズルコト
三、製鋼能力就中平炉能力ノ拡充ニ関シ強力ナル措置ヲ講ジ隘路打開ヲ図ルモノトス之ガ為既決定日鉄富士平炉ノ南方移設ハ当分之ヲ延期シ全幅稼働ヲ図ルコト
四、鉄鋼増産ニ要スル下期海上輸送力ニ関シテハ海務院策定輸送計画ニ調整ヲ加フルト共ニ稼行率ノ向上ニ依リ所要ノ船腹ヲ捻出スルモノトス
五、朝鮮機帆船ノ活用ヲ図リ既定計画輸送力ノ外十一月以降月五万瓲ノ輸送力ヲ増加スルコト
六、製鉄用石炭ニ関シテハ原料炭及ビ発生炉炭ノミヲ別途増送シ一般炭ニ就テハ既定配炭(配船)計画ノ調整竝節約ニ依リ充足スルコト
七、機帆船動員等輸送力増強竝ニ製鋼能力増産ニ要スル重油ニ関シテハ之ガ取得ヲ確保スルコト
八、製鉄用ノ副原料ノ増産ヲ確保スルコト、特ニマンガン鉱石ニ関シテハ甲地域ニ於テ所要ノ増産ヲ遂行スルト共ニA船支援ヲ可及的増大スルコト
又苦灰石ノ増産ニ関シテハ之ガ担当機関ヲ明瞭ナラシムルト共ニ電極ノ所要量確保ノ為ピツチコークス、鱗状黒鉛等ノ確保ニ付特段ノ措置ヲ講ズルコト
九、大陸小型熔鉱炉ノ計画出銑確保ニ関シテハ至急検討改善シ目標達成ヲ図ルコト
十、A、B特殊製鉄ハ予定ノ生産ヲ遂行スルニ努ムルモノトシ不足分ハ屑鉄ノ追加供出若クハ海南島鉄鉱石之AB船支援ニヨル増送ニヨリ可及的補填スルコト
十一、A、Bノ特殊鋼ノ生産ニ関シテハ本計画ニ基ク鉄鋼増産ト競合セザル如ク連絡ヲ密ニスルト共ニ特殊鋼増産ニヨル普通鋼減産分ノ不足ハ消費割当ニ所要ノ調整ヲ加フルコト
十二、Aノ要望ニ係ル屑鉄処理ニ要スル平炉能力ノ取得ニ関シテハ別途調整ヲ図ルコト
十三、A、B屑鉄特別供出ニ依ル増産分ノ取得ニ関シテハ原料屑鉄トノ「バーター」制トシ一般計画ニ依ル生産トノ競合ヲ調整スルコト
(表省略)

昭和十九年度物資動員計画大綱ニ関スル件
現下戦争指導上ノ要請ニ基キ航空戦力ノ飛躍的増強ヲ中心トスル所要ノ直接戦力造出ヲ目途トシテ九月二十三日閣議決定セル戦力増強目標物資並ニ爾余ノ重要物資ノ供給計画ヲ策定シ之ガ確保ヲ期スル為昭和十九年度物資動員計画大綱(輸送計画及供給計画)ヲ別冊ノ如ク定ム
本供給力目標達成ノ為ニハ別記ノ如キ幾多ノ困難ナル条件ヲ克服スルヲ要スルモノニシテ之ガ為昭和十八年度下期物資動員計画ヲ別冊ノ如ク調整シ緊急措置スルト共ニ爾後軍官民真ニ一体トナリ適切ナル具体的方策ヲ強力果敢ニ遂行シ以テ本大綱所期ノ国力発揮ニ邁進スルモノトス
尚昭和十九年度物資動員計画ハ今後ニ於ケル戦力増強ニ関スル要請並ニ諸般ノ措置ノ進捗状況ヲ勘案シテ本供給力目標ニ所要ノ調整ヲ加ヘ策定スルモノトス

別記
一、十九年度計画輸送力ヲ確保スル為船舶稼行率昂上ニ関シ□□ノ方策ヲ講スルト共ニ木船輸送力ノ増強、陸運輸送ノ強化ニ対応スル鉄道輸送力及小運送力ノ増強並ニ関係港湾能力ノ拡充ニ必要ナル要員、資材及燃料ノ確保ニ関シ特段ノ措置ヲ講ズルコト
二、九月二十三日閣議決定セル戦力増強目標達成確保ノ為ノ非常措置事項ノ完遂ヲ期スル為鉄鋼、軽金属、非鉄金属、造船、航空機附帯産業等ノ関係部門ニ対シ昭和十八年下期ニ於テ普通鋼々材約四十万瓲及之ニ応スル銑鉄、鍛鋳鋼、特殊鋼、銅、鉛、セメント、木材等ノ諸資材就中鋼材限定品種ノ特配ヲ為スコト
三、右諸資材就中普通鋼々材ノ現物確保ヲ図ル為九月二十三日閣議決定セル軍民需ヲ通シ優先圧延、配給ノ計画化等ノ措置ヲ講シ又所要機器ノ急速確保ヲ図ル為軍民需ヲ通シ優先製作、発注ノ一元化等ノ措置ヲ講ズルコト
四、鉄鋼関係部門ニ付テハ特ニ
(イ) 内地及朝鮮鉄鉱石並ニ満鉄俺石ノ画期的増産ニ必要ナル措置ヲ講ズルト共ニ石炭ノ品位向上ヲ図リ且平炉能率向上ノ為所要ノ重油ヲ確保スルコト
(ロ) 銑鉄ノ所要量ヲ確保スル為ニ支石影山ヘノ内地熔鉱炉第二基分ノ移設ヲ更ニ促進スルト共ニ小型熔鉱炉ノ計画生産量確保ノ為徹底セル措置ヲ講ズルコト
尚満洲銑十万瓲ノ増産及増送ニ付テハ鉱石及石炭ノ需要関係及輸送力ヲ勘案ノ上所要ノ調整ヲ為スコト
五、アルミニウム及マグネシウムノ生産確保ノ為ニハ特ニ
(イ) 北支及国産アルミナ資源ノ非常開発ヲ実施スルト共ニ之カ輸送ニ関シ特段ノ措置ヲ講スルコト
(ロ) 新規建設工場ニ必要ナル設備ニ転用ニ関スル超非常措置ヲ実施スルコト
(ハ) 蛍石、苦汁及ピツチコークス等ノ原材料ヲ確保スルコト
(ニ) 国産アルミナ及マグネシウムノ製造技術ヲ確立スルコト
六、石炭ニ際シテハ特ニ本州及九州ニ於テ大巾ノ増産ヲ期スル坑木其ノ他ノ生産用資材ヲ充足スルト共ニ重要物資ノ供給力目標確保ノ為配炭ヲ適正ナラシムルコト
七、銅ノ生産確保ノ為ニハ特ニ住宅用木材及坑木ノ優先確保ヲ図ルコト
八、木材ニ関シテハ供給力ノ基礎タル鉄道竝木船輸送力ノ所要請ヲ確保スルコト
九、技術者及労働者特ニ重筋労務者ノ急速充足ヲ図ルト共ニ勤労管理ヲ刷新スルコト
一〇、所要電力ノ確保ヲ図ルコト
一一、戦時国民最低生活ノ維持就中食糧ノ確保ハ戦力増強ノ基盤ナルニ鑑ミ直接的戦力物資トノ調整ヲ適切ナラシムルコト

(別冊省略)