女子挺身隊制度強化方策要綱

昭和19年3月18日 閣議決定

収載資料:軍需省関係資料 第8巻 軍需省関係政策資料 1997 pp.204-207 当館請求記号:AZ-675-G30

方針
女子ノ勤労動員ヲ促進強化スルタメ女子挺身隊ノ制度ヲ強化シ其ノ勤労能率ノ昂揚ヲ図ルモノトス

要領
一、女子挺身隊ノ結成
1、学校長、女子青年団長、婦人会長其ノ他適当ナル□域又ハ地域ノ団体ノ長ヲシテ女子挺身隊ヲ組織スルニ必要ナル措置ヲ執ラシムルコト
2、女子挺身隊ニ依リ勤労ニ従事セシムベキ者ハ国民登録者タル女子ニシテ家庭ノ根軸タル者ヲ除キ尚身体ノ状況、家庭ノ事情等ヲ斟酌シテ之ヲ選定スルコト
尚戦時農業要員タル女子ニ就テハ之ヲ隊員トシテ選定セザルコト
3、右ニ依リ選定セラレタル者ニ対シテハ必要ニ応ジ挺身隊組織ニ依リ必要業務ニ挺身協力スベキコトヲ命ジ得ルモノトスルコト
4、2ノ者ノ外特ニ志願ヲ為シタル者ハ之ヲ挺身隊員トスルコトヲ妨ゲザルコト
5、結婚ソノ他ノ場合ニ於イテ已ムヲ得ザル事由アル隊員ニ就テハソノ離隊ヲ認ムルコト
6、挺身隊ニハ統率者ヲ附シ概ネ隊長及ビ隊員ヲ以テ組織スルコト一隊ノ人員ハ原則トシテ二十人乃至五十人トシ要スレバ之ヲ班ニ分チ班長ヲ置クコト
二、女子挺身隊ノ運営
1、挺身隊ヲシテ従事セシムル工場、事業場ハ規律、従業条件其ノ他ノ勤労管理優良ニシテ受入態勢ノ整備シタルモノヲ選定スルニ努メ又可及的通勤可能ナル範囲内ニ於テ之ヲ選定スルコト、尚通勤不可能ナル場合ニハ寄宿舎施設ノ完備セルモノヲ選定スルコト又学校同窓会ヲ単位トシテ結成セラルル女子挺身隊ニシテ当該学校ガ工場化セラレアル場合ニ於イテハ成ル可ク同所ニ従業セシムルコト、尚地域ヲ単位トシテ結成セラルル女子挺身隊ニ就テハ当該地域内ニ於ケル家庭作業場ニ従事セシムルコトヲ考慮スルコト
2、工場、事業場ニシテ前項ノ条件ニ欠陥アル場合ニ於イテハ当該挺身隊ヲ他ノ工場事業場ニ配置替スルノ措置ヲ講ズルコト
3、一挺身隊ハ原則トシテ各種ノ職場ニ分散セシムルコトナク同一ノ職場ニ纏メテ之ヲ配置セシムルコト
4、配置スベキ職種ハ当該挺身隊ニ適当ナルモノヲ選定スルコト
5、挺身隊員ノ家庭ノ事情等ニ依リテハ従業時間、始業及ビ終業時刻、休日等ニ関シ相当ノ配慮ヲ為スト共ニソノ通勤ニツキ所要ノ措置ヲ講ズルコト
6、挺身隊員トシテ従業スベキ期間ハ差当リ一年トスルコト
7、挺身隊員ニ対シテハ従業実施前可及的所要ノ予備訓練ヲ行フコト
8、挺身隊員ノ給与其ノ他ノ従業条件ハ原則トシテ通常ノ方法ニ依ル勤労者ト同一トスルモ其ノ給与ノ支給方法ニ就テハ別途措置スルコト
9、相当数ノ挺身隊員ノ従業スル工場事業場ニ於テハ挺身隊専門ノ係員ヲ置カシムルコトトシ、此ノ場合要スレバ女子ヲ以テ之ニ充ツルモノトスルコト
10、挺身隊ニ関スル動員ノ業務ハ原則トシテ総テ地方長官之ヲ行フコトトシ尚ソノ業務ノ一部ハ国民勤労動員署長ヲシテ分掌セシムルコトヲ得ルノ外、学校長、市区町村長ソノ他ノ団体ノ長ヲシテ輔佐セシムルコト
(備考)
(1) 本要綱中基本事項ニ就テハ国家総動員法第五条ニ基ク勅令ヲ制定スルモノトス
(2) 協力命令ヲ肯ンゼザル者ニ対シテハ必要ニ依リ国家総動員法第六条ニ基ク就業命令ヲ発シ得ルモノトスルコト