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昭和19年度物資動員計画並ニ昭和19年度物資動員計画第1四半期実施計画ニ関スル件

昭和19年4月26日 閣議決定

収載資料:国家総動員史 資料編 第2 石川準吉著 国家総動員史刊行会 1975.8 pp.715-785 当館請求記号:AZ-668-5

昭和十九年度物資動員計画策定ニ関スル件
昭和十九年度物資動員計画ハ三月二十六日閣議決定(三月二十五日大本営政府連絡会議了解)「昭和十九年度物動計画運営ニ関スル件」ニ基キ策定セルモノニシテ戦力増強ヲ目標トセル諸般ノ重要施策具現ノ為海陸輸送力竝生産力動員ニヨリ達成セントスル重要物資ノ供給力見渡ト之カ配当基準トヲ定メタルモノナリ本供給力確保ノ為ニハ輸送力、資材、燃料等ノ充足ニ関シ未解決ノ点少カラサルモ関係各庁就中陸海軍ノ全幅的協力ニ依リ国家総力ヲ挙ケテ之カ打開ニ努メ以テ之カ完遂ニ邁進スルト共ニ実施計画ハ当時ノ情勢ニ即応スル如ク各四半期毎ニ所要ノ調整ヲ加ヘテ策定スルモノトス
本計画ハ左記諸項ニ付特ニ留意シ運営ノ適正ヲ期スルモノトス
第一 輸送力ニ関スル事項
一、乙造船ニ関シ建造能力、資材特ニ燃料ノ需給ヲ勘案シテ調整ヲ加フル場合ニ於テモ国家使用機帆船ノ輸送力ハ極力計画輸送力ヲ保持スル如ク努ムルコト
二、汽船輸送力ノ算定ハ新造貨物船一三〇万総噸(甲造船一九〇万総噸ノ場合)トシ甲造船完遂目標二五五万総噸計画(内貨物船一七二万総噸)トノ差額ハ特別船舶トシテ専ラ鉄鋼ノ特別増産ニ充当スルコト
三、大陸物資ノ南鮮中継輸送ハ六五〇万瓲ヲ目標トスルモ日満支ヲ通ズル大陸鉄道輸送力増強用資材ノ調達見込ニ鑑ミ第二、四半期以降ニ関シテハ第一、四半期ノ実施状況ニ基キ再検討ノ上所要ノ調整ヲ加フルコト
四、鉄道(貨車航送)ニヨル九州炭並北海道炭ノ本州向輸送ハ優先之ヲ確保スルコト
五、小運送力ノ逼迫ハ物動計画遂行上重大ナル隘路ヲ成形シアルヲ以テ之カ増強ニ関シテハ特段ノ措置ヲ講ズルヲ要スルコト
二 供給力ニ関スル事項
一、第二、四半期以降ノ供給力ハ年間計画ヲ基準トシ各四半期別実施計画ニ於テ策定スルコト
二、供給力ノ計画ハ鉄鋼、アルミニウム、石炭等直接的戦力物資ニ重点ヲ指向セル結果爾余ノ物資ハ一般ニ強度ニ圧縮セサルヲ得ス之カ為戦力増強若ハ国民生活確保上重大ナル阻碍的影響ヲ及ス虞アルヲ以テ之カ実相ヲ把握スルニ努メ是正ヲ要スルモノハ所要ノ調整ヲ行フコト
三、石炭供給力ノ不足ハ顕著ニシテ就中本州地区ニ於テハ重点部門ニ於テモ所要ヲ充足シ得サル状況ニシテ物動計画運営上重大ナル隘路ヲ成形シアルヲ以テ生産竝海陸輸送ニ関シ万全ヲ期スルノ外特ニ重点産業ノ消費節約ヲ徹底セシムルモノトス
尚第二、四半期以降ノ産業別配炭計画ニ関シテハ第一、四半期ノ実施状況トソノ影響トシテ勘案シ所要ノ調整ヲ加フルコト
四、液体燃料ノ見透ハ南方還送石油ノ取得量ニ関シ特ニ不安定ナル因子ヲ包蔵シアルヲ以テ之カ実施計画ハ月別ニ策定スルコトトスルモ国力ノ維持増強上絶対必要ナル民需最低需要ハ緊急ヲ要スル作戦需要ニ充当スル場合ヲ除キ優先確保スルコト
本計画ニ於テハ海上輸送力竝ニ直接的戦力物資ノ供給力確保ヲ重点トセル民需最低需要ト之カ充足ノ為絶対必要ナル南方石油埋蔵量トヲ計上セリ
尚潤滑油ノ需要充足ノ為ニハ油脂就中南方植物油脂ニ依存スルヲ要スルヲ以テ石油還送ト総合調整ヲ図ルコト
五、鉄鋼供給力ノ構成内容ハ特別船舶等ニヨル増産分ト併セ複雑多岐ニ亘ルノミナラス未曾有ノ生産量ニ達スルヲ以テ臨時鉄鋼増産協議会ヲ中心トシテ原料ノ開発取得設備ノ利用拡充配船ノ能率化等ニ関シ綜合推進ヲ図ルコト
六、食糧ニ関シテハ戦力増強ノ基底タルニ鑑ミ自給体制確立上増産ノ徹底ヲ期スルモノトシ之ガ為必要ナル肥料其ノ他ノ資材確保ニ努ムルト共ニ集荷配給等ノ諸施策ニ付テモ更ニ一層ノ強化ヲ図ルコト
七、軍民ヲ通シ物資ノ退蔵ヲ警メ迅速ナル回転活用ヲ図リ実供給力ノ増大ニ努ムルコト
第三 配当ニ関スル事項
一、各期実施計画ニ於テ供給力ノ変動スル場合ニ於テハ年間配当基準ヲ基礎トシテ按分調整スルモノトス
二、鉄鋼ノ需給ニ関シテハ鉄鋼需給実施要項ニ則リ就中出荷管理ノ厳格ナル遂行ニヨリ超過取得ノ絶無及取得ノ確実ヲ期スルモノトシ超過取得分ハ軍需省ト関係各省連絡ノ上翌々月以降ノ圧延及出荷計画ニ於テ其ノ全量ヲ調整スルコト
「各需要部門ニ対スル現物引取ノ促進、竝ニ引取未済ノモノ措置ニ関シテハ別途措置スルコト」
三、重要現場取得物資ノ配当ハ現地ニ於ケル供給力ノ変動ノ為調整ヲ要スル場合ニ於テハ中央ニ於テ之ヲ決定スルコト

了解事項
一、配当計画未了ノ物資ニ付テハ可及的速ニ之ヲ決定スルコト
二、日満支重要物資交流計画、配当計画中取得地区分ハ本計画ノ附属資料トシテ之ヲ策定スルコト
(表省略)