工場緊急疎開要綱
閣議決定年
昭和20年2月23日 閣議決定
収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 p.587 当館請求記号:DG15-19
第一 方針
戦局ノ状勢ニ鑑ミ一時ノ不利ハ之ヲ忍ビ計画的、系統的ニ工場疎開ヲ徹底実施スルモノトシ効果的ニ分散、地下移設等ノ方法ヲ講ズルト共ニ緊要工場ノ地域的総合自立ヲ図リ軍需生産ノ長期確保強化ヲ期スルモノトス。
第二 要領
一、工場疎開ハ概ネ左ノモノヲ中心トシ重点主義ニ依リ之ヲ実施スルモノトス
イ、航空機及同部品工場
ロ、兵器及同部品工場
ハ、重要機械工場
ニ、右関係重要原材料工場
二、工揚疎開ハ企業再整備ト一体的ニ実施スルト共ニ軍作業庁及軍管理工場ニ之ヲ計画ス
三、工場疎開ハ航空機工場、兵器工場等ノ系列ニ従ヒテ実施スルコトトシ此等計画相互ノ間ニ調和ヲ図ルト共ニ協力工場ノ所属系列ヲ調整ス
四、疎開先ノ選定ニ当リテハ防空、防衛上ノ条件ヲ重視スルト共ニ各地方毎ニ関係工業ガ均整ヲ保持総合自立シ得ルガ如ク計画ス
尚此ノ場合疎開後ノ生産及輸送上ノ条件ヲ勘案スル外要スレバ之等条件ノ調整充足ヲ図ル
五、特ニ緊急ナル施設ハ厳選シテ地下ニ移設スルコトトシ既存ノ隧道等ヲ利用スルノ外能フ限リ隧道等ヲ建設ス
右ノ外能フ限リ分散ニ依ル防空上ノ安全ヲ図リ既存ノ堅牢建築物ノ徹底利用ヲ期ス
六、本件実施ニ関連シ軍官民建設力ノ総合的動員ヲ図ルト共ニ既発注土建工事ハ原則トシテ暫ク之ヲ停止ス
七、本件実施ニ付テハ凡ユル輸送力ヲ総動員スルト共ニ爾余ノ輸送ハ暫ク之ヲ強力ニ規制ス
八、本件実施上必要ナル労務ハ各地方ニ於テ労務ノ機動的運用ヲ活発ニ行ヒ又官民ノ組織的挺身出労ヲ強力ニ指導シテ之ヲ充足ス
九、所要資材ニ付テハ最優先的ニ之ガ確保ヲ図ルモ速急実施ノ為極力所在ノモノヲ融通活用ス
一〇、前各号ニ関連シ軍ノ強力ナル支援ヲ期待ス
一一、疎開後ノ所要労務ニ付テハ従前ノ従業者ヲ能フ限リ随行セシムル外労務配置ノ調整、所在労務ノ吸収等ヲ図ル労務者ニ対スル施設ニ付テハ之ガ充足ノ為強力ナル措置ヲ講ズルト共ニ猶当然予想セラルル諸種ノ不便ハ之ヲ忍バシムルモノトス
一二、本件実施ニ当リテハ用意ヲ周到ニシ努メテ生産ノ低下ヲ防止スルモ止ムヲ得ザル一時ノ低下ハ之ヲ忍ビ完遂ヲ期スルモノトス
一三、本件実施上必要ナル経費ハ全額国庫ニ於テ負担スルヲ原則トスルモ企業ノ実情ニ応ジ補助金ノ交付ニ止ムルコトアルモノトス
一四、本件ニ関スル限リ特例ヲ設ケ法令上ノ諸手続ノ徹底的簡捷ヲ図ル