昭和21年度予算編成ニ関スル件
閣議決定年
昭和20年8月24日 閣議決定
収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 pp.281-282 当館請求記号:210.76-Si569
今ヤ肇国以来最モ困難ナル時局ニ直面シ臣子尽ク承詔必謹刻苦奮励以テ総力ヲ将来ノ建設ニ傾クルノ要アル処我ガ国財政経済ニ関シ今後ニ処スベキ途ハ国内秩序ヲ飽ク迄維持シ民生ノ安定ヲ図り国民経済ノ速カナル再建ヲ期スルニアリ而シテ之ガ為ニハ食糧ノ増産、産業及労務ノ転換、戦災ノ復興並ニ戦死者、傷痍軍人及戦災者ニ対スル援護其ノ他事局ニ対処シ緊急ナル諸施策ノ果断適実ナル実施ヲ要ス
翻ツテ思フニ戦災其ノ他ノ為我ガ国経済ノ受ケタル打撃ハ相当深刻ニシテ国力ノ減耗ハ財源ノ調達ニ重大ナル影響ヲ齎スベキコト自明ノ理タルノミナラズ更ニ戦後処理ニ要スル各種経費ノ増高、対外関係ニ依ル国家負担ノ加重ハ必至ニシテ此ノ際財政ノ絶対緊縮方針ヲ確立シ之ニ依リ断乎トシテ経済秩序ノ維持ト民生ノ安定トヲ図リ国家ノ再建ヲ期スベキハ蓋シ現下当然ノ要請ナリ
昭和21年度予算編成ニ当リテハ各省ハ叙上ノ趣旨ニ則リ其ノ構想ヲ新ニスルト共ニ苟モ安易ナル平時復帰ノ思想ハ厳ニ之ヲ戒メ真ニ時局ニ即応セル予算ノ成立ニ協力スルモノトス
昭和21年度予算編成ニ付準拠スベキ事項左ノ如シ
記
1.各省ニ於ケル施策ノ主眼ハ之ヲ将来ノ建設ニ置キ社会及経済ノ秩序維持国民生活ノ安定等ヲ目途トシ従来ヨリノ施設ニシテ右ノ趣旨ニ副ハザルモノニ付テハ此ノ際其ノ根本的整理切換ヲ断行スルコト
2.昭和21年度予算ニ計上スル経費ハ左ニ掲グルモノニ限ルコト
(1)皇室費、国債費等ノ特殊経費
(2)前号ノ外法令等ニ基ク義務的経費
但シ時局処理其ノ他新事態ニ即応シ其ノ存続ヲ必要トスルモノニ限ル
(3)食糧其ノ他生活必需物資ノ増産及確保ニ要スル経費
(4)戦災者及戦災死者ノ遺族、傷痍軍人並ニ戦災者ノ更生援護ニ要スル経費
(5)帰還将兵ノ厚生ニ要スル経費
(6)産業ノ転換、労務ノ再配置、戦災地ノ復興運輸通信機能ノ回復其ノ他時局ニ対処シ緊急措置ヲ要スル施設ニ関スル経費
(7)其ノ他必要欠クベカラザル行政ノ運営二要スル経費
3.最近ニ於ケル財政経済ノ推移ニ鑑ミ補助費、奨励費等ニ付テハ此ノ際厳密ナル検討ヲ加ヘ過剰購買力造出ニ依ル悪影響ヲ阻止スルコト
4.対外関係ヨリ生ズベキ各種事情ノ変動ニ対処スル等ノ為特ニ必要トスル予備費ヲ計上シ其ノ他予算上適切ナル措置ヲ講ジ以テ財政ノ機動的運営ヲ図ルコト
5.予算編成ニ関シ各種事務ノ徹底的簡素化ヲ図ルコト
6.各省ヨリ大蔵省ニ提出スベキ概算書又ハ概計書ノ提出期限ハ左ノ通トシ必ズ之ヲ厳守スルコト
概算書 9月30日
概計書 10月20日
概算書又ハ概計書ノ調整ニ付テハ大蔵省ハ積極的ニ各省ニ協力シ共同作業ノ実ヲ挙グルコト
(備考)
1.対外交渉ノ結果要スルコトアルベキ経費(第4号前段ニ属スルモノヲ除ク)ニ付テハ別途措置スルコト
2.陸軍省及海軍省関係ニ於テ経費ヲ要スルモノアルトキハ別途処理スルコト