昭和21年産米供米対策要綱
閣議決定年
昭和22年2月28日 閣議決定
収載資料:食糧管理史 V 制度篇 各論(上) 食糧庁食糧管理史編纂室・統計研究会食糧管理史研究会編 統計研究会 1958 pp.99-104 当館請求記号:611.31-Sy9576s-T
昭和二十一年産米の買入は、初期の好調にも拘らず最近の社会経済状況に影響せられて前途極めて憂慮すべき状態にある。
此の際政府は、国民経済の実情を明かにし、農村の協力を求むるとともに農村の要望については、為し得る最大限の努力を払い、以て既供出割当量を確保し、更に超過供出を促進する為左の措置を直ちに講ずるものとする。
一 国民経済の実情を農村に明示し供米を促進するための措置
(一)食糧の安定が経済復興、国家再建の基盤であること並に国内供米の完遂が要輸入食糧確保の前提条件である所以を広く農民に自覚せしめる施策を講じ積極的な供米意欲の昂揚を計る事。
(二)危機に直面せる国民経済の実相を明かにするとともに、農村向物資の供給がその中において、如何なる事情にあるかその現状を農民一般、特に農村指導者に知悉滲透せしめ政府は誠意を以て供米に対する報奨的措置を採りつつあることを明かにすること。
二 特別報奨金交付に関する措置
(一)特別報奨金は、左の場合に当該農家に交付する。
(イ)農家が昭和二十二年三月三十一日までに当該農家について割当てられた数量を供出したときは、割当数量の二割に対して一石当り百五十円の割を以て計算した金額を交付する。
(ロ)農家が昭和二十二年四月三十日までに当該農家について割当てられた数量を超えて供出したときは、その超過供出分については、一石当り三百円の割を以て計算した金額を交付する。
(ハ)部落につき、割当てられた数量の供出が昭和二十二年四月三十日までに完了した場合において、当該部落内の農家が同日までに当該農家について割当られた数量を超えて供出したときは、その超過供出分については、(ロ)の金額を交付するの外、一石当り三百五十円の割を以て計算した金額を交付する。
(ニ)(ロ)及び(ハ)の実施に伴い、昭和二十一年十一月一日付物価庁、農林省告示第一号(昭和二十一年産米穀の政府買入価格の件)の附記三を廃止する。
(二)(一)の特別報奨金交付額決定の基礎となる供米数量は、(イ)については昭和二十二年三月三十一日、(ロ)及び(ハ)については昭和二十二年四月三十日現在における政府買入数量(米の代替として認められた雑穀及び甘藷の数量を含む)に拠る。
三 農業再生産資材その他農村必需物資の供給と配給を確保する措置
(一)肥料
(イ)供米リンク用肥料(窒素質肥料を既割当供出米一俵当り一貫、超過供出米一俵当り二貫)の優先確保を計ることはもちろん、自家保有米用肥料は保有米生産のため必要なる面積に対し稲肥につき反当窒素質肥料三貫の確保完遂を期する措置を一-七月の間に講ずること。
(ロ)これがため工場別重点生産を強化するとともに石炭、コークス、硫化鉱、電力等の配当割当増加により全工場の能力を増強発揮せしめる。
硝安の適期輸入増加について特別の配意を懇請すること。
(ハ)工場別の肥料の生産責任体制を樹立し生産計画及びその実施状況はこれを公表すること。
(ニ)不正肥料及び闇肥料の取締を徹底すること。
(ホ)加里肥料及び燐鉱石の輸入増加を懇請すること。
(二)農機具
(イ)重要機械の更新需要量はこれを極力優先確保することを目途とし、その生産、出荷を確実にするため資材、資金その他について必要な措置を講ずること。
(ロ)供米完遂農家に対し鍬等の優先修理を行うものとし、指定修理施設の配置、これに対する資材の特配、労務加配米の増加等の措置を講ずる。
(ハ)不良農機具の製造販売制限を強化すること。
(三)その他必要物資
農村必需物資の配給を特に確保し原則として供米成績とリンクする等供米促進に効果あるように特配する。
(イ)既に決定せる輸入缶詰、酒、煙草、塩の外繊維製品、地下足袋、ゴム靴、自転車のタイヤ及チュウブ等約五六〇万点を捻出し一定の基準により供米農家に特配する。
(ロ)右物資は配給の適確を図る為特に必要がないものを除き原則として取扱機関をしてこれを特定させ絶対に他に流用することのない様にする。
(ハ)空俵、空叺を可及的多量に農村に還元する措置を講ずること。
(四)中央及び地方に農村必需物資に関する委員会の如きものを設置し、農村必需物資の生産の促進、配給の適正に資し且つこれらに関する実情の周知徹底及び査察を行うこと。
四 輸送力の確保に関する措置
(一)米の輸送は絶対に完遂するものとし、この為必要に応じて適時適所に臨時米輸送列車の配置を行うこと。
(二)各地方毎に米輸送に必要な小運送はこれを他と区別して特定確保する措置を講じ、この為に米輸送とガソリン及肥料等の配給とをリンクすること。
(三)肥料その他この要綱により供米促進のため特別に確保する物資の輸送は特別手配により、適時に配給し得るよう主要食糧に準じこれを優先確保すること。
五 県外搬出に関する措置
各府県毎の年間需給計画を速に確定し、米と米以外の食糧を極力全国平均化せしめる方針の下に県外搬出量を決定し、輸入食糧の一部は速かに当該搬出県に搬入貯蔵すること。
六 取締に関する措置
主食の闇取引を徹底的に撲滅し、ブローカーの集団買出を各府県協力して取締るとともに、供米及び県外搬出を阻害するような言説、煽動する者並びに供出不良農家に対しては断乎たる措置をとること。
報奨物資について
昭和二十一年度産米に対する報奨計画
(1)既定計画にして現在実施中
(表省略)
(2)新規計画として追加せるもの
(表省略)
(3)其の他、地下足袋、銘仙、縫糸等更に検討中