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炭鉱従業員賃金値上げに付て

昭和22年3月29日 閣議決定

収載資料:物価統制資料集 第1分冊 物価庁 1950 p.124 当館請求記号:337.83-B94b

炭礦労働組合全国協議会(全国炭礦労働者団体)と、日本石炭礦業連盟(全国炭礦経営者団体)との間に予て賃金引上の交渉が行はれて来たが、三月八日、両者間に本年一月乃至三月の賃金に付て協定成立し(別紙)四月以降の其に関しては双方の代表者に依る賃金委員会に於て研究の上確立を期することにした。越えて三月九日、両者は共同声明別紙を発し、三千万瓲達成の為に汎ゆる努力を尽す旨を国民に誓約した。
偖て右の労資妥結の条件は坑外夫(二・六人家族)の標準生計費一、二七三円を基礎とし、これに基準外収入を加えた一五〇〇円を坑外夫の平均月収とし坑内夫の平均月収はその四割増とするものであるが、之は、炭礦従業者の現実の生活状況及び石炭増産の重要性に鑑みて妥当なるものと認められるので、政府としても之を是認しこれがため左の如き措置をとることとする。
一、一月乃至三月分に付ては石炭販売価格は現状の儘とし、賃金値上り分については之に相当する金額(約十五億円)を政府より炭礦経営者に対し石炭買取補償金として支給する。又炭礦経営者に対しては右値上り分支払の為、必要な資金の融通を政府に於て斡旋する。
尚右は石炭増産が我国産業再建の為に最緊急であるが故に断行する異例の措置であつて、他の産業が先例として之に倣う事は認めない。
二、炭礦従業者に対する生活必需物資の公定価格による配給を確保し、之により現実に生計費の下つた場合には、賃金の改訂に当り現実の生計費を基準とする。
三、炭礦従業者に対しては、差当り主食、煙草に付てその代金の封鎖支払を認める。
四、賃金支払方法に関しては可及的広範に能率給を採る様指導すること。