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危機突破生産復興運動要綱

昭和22年10月1日 閣議決定

収載資料:森戸辰男関係文書 片山・芦田政権下「閣議」関係文書 マイクロ版集成 Reel No.8 409-411 当館請求記号:憲政資料室

一 趣旨
経済の危機を突破し、産業を復興し、民生の安定を図るためには、一つに労働の生産性昂揚に期待しなければならない。
現在多くの労働者が、今日の窮乏に堪えつヽ、生産にいそしみつヽあることは誠に感激に堪えない所であって、国家及び経営者は高能率の労働者に対して、それに相応する報賞をなすと共に、国民的感謝の意を表し、進んで一段の努力を期待するものとする。
因ってこれがため関係者の意見を聴き、概ね左の措置を講ずるものとする。
二 実施要領
1 実施事業
本運動は石炭業、鉄鋼業、肥料業、生活必需物資生産業、輸出物資生動本部、交通運輸業等の重要事業に展開せられるものとする。
2 運動主体
本運動は、経済復興会議を中心とし、経営者及び労働組合が協力してこれに当るものとする。この際特に労働組合が積極的にこれを推進することを期待するものとする。
右のため、中央、地方及び各現場に夫々関係者を以て構成する危機突破生産復興運動本部を設けるものとする。
3 実施方法
イ 運動実施上必要な生産昂揚の目標及び方法は各運動本部において、夫々の業種及び現場の実情に即し、具体的に妥当するやうに決定するものとし、併せて趣旨の徹底に当るものとする。
ロ 生産昂揚の目標及び成果は、労働者個人単位たるのみならず、一定の共同作業に従事する一定の労働者の集団、更に進んで当該労働組合そのもの□一体として考慮するものとする。
ハ 経営者は現場における運動本部の議を経て、少くとも、基準作業を越える能率に対しては、明確なる累進的給与の支給を承認し、一方事業の利潤について所要の資本留保の外は、組合に対しても分配するものとする。
ニ 本運動に自主的に参加し、実施計画を樹立した運動本部が、その計画を関係行政庁に提出すれば、関係行政庁は、その計画に応じ、必要な資材の供給その他必要な援助、更に要すれば物資配給等の可能な行政事務の一部委託をなし、その自主的運動遂行を助成するものとする。
ホ 政府は本運動実施に際し、中央運動本部と密接な連繋を保持するものとする。
4 報賞方法
成績の優秀な労働者、労働者の集団、労働組合は、概ね左の要領によつて報賞されるものとする。
イ 当該経営者は、現場運動本部の審査の結果に基いて予め当該運動本部と協議決定した方法により報賞するものとする。
ロ 地方運動本部においては、概ね三ヶ月毎に成績成果を審査し、該都道府県は、その審査の結果に基いてその都道府県において国家報賞に準じ凡ゆる可能な報賞措置を講ずるものとする。
ハ 中央運動本部においては、概ね三ヶ月毎に地方委員会の申請に基く被報賞候補者(団体、組合を含む)につき成績を審査し、政府はその審査結果に基いて概ね左の報賞措置を講ずるものとする。
(一)内閣総理大臣による表彰
(二)国鉄、国営保養所等国家施設の優先的乃至無料利用
(三)一般労務者用物資の増配、特殊物資の特配
(四)クーボン式による映画館、劇場、浴場、理髪店等各種私的施設の無料利用
(五)その他
優秀な成績を挙げた企業に対しては、右の措置と相俟つて、生産拡充資材等の特配をなすものとする。
5 予算及び経理措置
本件に伴い所要の予算その他の経理措置を講ずるものとする。