昭和23年度暫定予算編成要領

昭和23年3月11日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 pp.1035-1036 当館請求記号:DG15-19

明昭和二十三年度本予算は諸般の情勢上本年度内に編成成立に至ることは困難と認められる、よってこの際財政法第三十条の規定により、差当り昭和二十三年四月分につき暫定予算を編成する。
右暫定予算の編成に当っては今後決定を要する本予算の編成に支障を来さないよう措置すると共に歳入歳出の均衡を図る趣旨の下に
(一)新規の計画にかかるものは原則として計上しない。
(二)従来よりの継続にかかるものについては、その後における情勢の推移、昭和二十二年度の実行状況等を再検討し最少限度の額を計上するに止める。
(三)経費の積算については現行の物価水準及び新給与水準を基礎とする。
こととし、概ね左の方針による。

第一、歳出
一、人件費
(一)俸給、給料については昭和二十三年度既定予算定員に基き積算するものとし、職員の新規増加は振替によるの外、原則として行わない。
(二)旅費等については昭和二十三年年度所要見込額等を勘案し当該期間内の所要見込額を計上する。
二、物件費
昭和二十三年度所要見込額等を勘案し当該期間内の所要見込額を計上する。
三、補助費
補助費についても、その性質に応じ、前二号に準じて措置する。但し
(一)義務教育費国庫負担金については法令により当該期間内に支出すべき額と前年度における精算未済額を考慮して積算計上する。
(二)警察費国庫負担金については警察費制度の改正を考慮し前年度における精算未済額の内所要額を計上する。
(三)補助率の引上補助範囲の拡張等は行わない。
四、価格調整費
生産実績等を基礎とし現行の物価体系により当該期間内における所要見込額を計上する。
五、物資及物価調整事務取扱費
第一号及び第二号に準じ措置する。
六、公共事業費
(一)新規の計画に属する事業については原則として計上しない。従来よりの計画にかかる継続事業について昭和二十二年度の当該期間内に施行した規模の程度において計上する。
(二)災害復旧事業等であって、この際早急に施行を必要とする工事については実情に応じ計上することができる。
七、地方分与税分与金
昭和二十三年度の税収見込額を基礎とし当該期間内の所要見込額による。
八、同胞引揚費
同胞引揚費については最近の引揚の実績に基き積算計上する。
九、終戦処理費及び賠償施設処理費
最近の支出実績に基き所要見込額を積算計上する。
一〇、国債費及び政府出費金
当該期間内におげる支出見込額を計上する。
一一、予備費
当該期間内におげる使用見込額を計上する。
一二、その他
その経費の性質等に応じ前各号に準じ措置するが
(1) 政府事業再建のためにする大蔵省預金部、簡易生命保険及郵便年金、国有鉄道事業並びに通信事業への繰入は計上しない。
(2) 地方職員の給与支給のための地方団体貸付金は取止める。
第二、歳入
(一)租税その他一般の歳入は原則として現行の制度を基礎とし、当該期間内における収入見込額による。但し
(1)手数料等については物価の状況等を勘案し相当の引上を行う。
(2)価格差益金、特殊物件収入等については、最近における収入状況に徴し極力徴収を促進する。
(二)公債又は借入金は一般会計においては計上しない。特別会計においては法令に基く建設的な経費に相当する財源に充当するもの並びに食糧証券及び薪炭証券等資金の一時融通のためにするものに限る。
第三、大蔵省証券及び一時借入金当該期間における国庫金の状況を勘案し所要額を計上する。