昭和23年度第1四半期資金需給計画に関する件
閣議決定年
昭和23年4月12日 閣議決定
収載資料:経済安定本部戦後経済政策資料 第19巻 総合研究開発機構(NIRA)戦後経済政策資料研究会 日本経済評論社 1995.3 pp.526-546 当館請求記号:DC55-E831
第一、方針
一、資金蓄積の増強をはかるは勿論、資金配分を一層適正ならしめ、一面において経済再建に緊要な資金需要を確保するとともに他面不要不急の資金需要を厳に抑制して資金需給の均衡をはかり、通貨増発を最小限度に抑止して通貨及び国民経済の安定化を促進し、経済再建のための基盤を速かに育成する。
二、財政資金
(1)財政収入の推移を勘案しつつ財政支出をこれに適合せしめるように特に留意して財政収支の時期的均衡をはかり、財政資金の需要を已むを得ない必要最小限度にとどめる。
(2)徴税機能の充実強化を促進するとともに専売益金その他の財政収入を極力確保する。
(3)国債、地方債及び復興金融債券の民間消化を確保しこれによる通貨増発を防止する。要すれば融資規制に所要の改正を加える。
三、産業資金
(1)物資受給計画に照応し重要産業資金の重点的確保に努めるとともに一般に引続き融資の抑制をはかる。
なお資金効率の向上については特に留意する。
(2)一般金融機関の融資は融資規制の適正な運営により生産増強のため最も効率的となるように更に格段の配慮を加え、特に運転資金の供給は原則として適正な増加運転資金にとどめる。
(3)復興金融金庫の融資は厳にこれを抑制し重要産業資金で、しかも真に一般金融機関から融資を受けられないものに限定すると共に融資後の監理を厳重に励行する。又公団所要資金については極力一般金融機関よりの融資を促進する。
(4)赤字金融の根本的解決をはかり、健全金融の実現を期するとともに企業経営の健全化につき特に努力する。
(5)融資資金の目的外流用を防止するとともに融資の監査を厳重に実施する。
四、資金蓄積
貯蓄増強施策に更に新たな改善創意を加え、資金蓄積の強化をはかる。
第二、計画
一、昭和二十三年度第一、四半期における綜合資金需給は
(イ)財政資金需要総額 二百三十億円
(ロ)産業資金需要総額 五百億円
(ハ)資金蓄積総額 五百三十億円
とする。
二、資金需要
(1)財政資金需要は国庫財政資金百八十億円(復興金融金庫に対する政府出資八十億円を含む)、地方財政資金五十億円とする。
(2)産業資金需要は一般金融機関の融資純増加額等(地方公共団体に対する融資及復興金融金庫の保証融資を含む。)四百十億円、復興金融金庫の融資純増加額百七十億円とし、復興金融金庫に対する政府出資額を控除して総額五百億円とする。
三、資金蓄積及び配分
(1)資金蓄積は一般自由預金の増加六百八十億円、第一封鎖預金の減少二百億円、その他預金等の増加五十億円、合計五百三十億円とする。
(2)右の五百三十億円の中百六十億円程度を国債、地方債、復興金融債券等の財政資金に充当し、残余を経済再建に緊要な一般産業融資等に運用するものとする。
(3)右の蓄積資金により充当出来ない財政資金及産業資金需要に対する通貨増発は少くとも二百億円程度に抑制し、期末における日本銀行券発行高を二千四百億円以内にとどめることとする。