価格補正の基本方針

昭和23年5月10日 閣議決定

収載資料:戦後物価統制資料 第3巻 大森とく子 日本経済評論社 1995.6 pp.1-2 当館請求記号:DF66-G1

国鉄運賃、通信料金、石炭価格、電気料金、肥料価格等赤字企業における公定価格の補正は、この際やむを得ないものと認められる。但し公定価格の補正を行うに当つては、財政、企業及び家計えの影響を国民経済全体の総合的見地に立つて、比較考量しなければならない。特にわが国経済の現段階においては、健全財政を維持するとともに、公定価格水準の上昇を極力軽度にとどめる必要がある。
よつて次のような基本方針に基づき、現行価絡体系に所要の補正を加えるものとする。
一、国鉄運賃は旅客貨物共に三倍半、船舶運営関係の海上運賃は三倍に引上げる。
二、通信料金は四倍に引上げる。
三、生産財、消費財及び料金を通じ原価計算の検討を厳にし、消費財及び料金の公定価格の引上げが、平均七割程度にとどまるように努める。
四、公定価格織込み賃金の水準は、現在の実質賃金を確保することを目途とし、動労所得税の大巾軽減を行う前提の下に、全国工業総平均賃金月三千七百円とする。
なお、各省各庁は全力をあげて、公定価格による生活物資配給の増加によつて実質賃金の充実につとめる。
五、昭和二十三年度一般会計予算に計上する価格調整補給金は、五百三十億円とする。
六、市場価格の推移、統制の実情等を検討し、重要物資生産上及び日常生活上余り重要でないものについては、公定価格の廃止を考慮する。
七、価格補正開始の時期は、六月一日とする。