昭和23年度租税収入確保対策要綱

昭和23年6月4日 閣議決定

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第17巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1981 pp.1129-1130 当館請求記号:DG15-19

本年度二千六百三十余億円に上る租税収入を、適時、適正且つ円滑に確保することは、洵に容易の業ではない。しかしながら経済復興の基盤を形成するインフレの抑制、健全財政の堅持を貫徹するためには、先づ何を措いても、又如何なる障碍を排除しても、この難問題を克服することが絶対の要請である。そしてそのためには、差し当り少くとも
(一)納税倫理の格段の昂揚を図り税金の滞納を一掃し申告納税の普及促進を期すること。
(二)適切にして権威ある申告指導と更正決定とによって早期に収入を確保すること。
(三)実地調査を充実強化してインフレ利得を徹底的に捕捉すること。
(四)中央及び地方を通じて税務官署の事務能率と執務態勢とを刷新改善し円滑適正な税務行政の運用を図ること。
を目標として、左記各項を急速に実施しなければならない。

一、国会その他各方面との緊密な連絡の下に、認識と理解に基く自主的納税への広汎且つ強力な運動を展開する。
二、中央及び地方を通じて、税務の執行を一貫した科学的合理性に立脚せしめる如き、常時調査と監査の機構を確立すると共に、税務行政機構の全体を通じて一段と整備強化する。
全国税務官吏中特に優秀な者より簡抜して、新に大蔵省及び財務局に相当多数の国税査察官(仮称)を置き、専らインフレ利得等の徹底的捕捉に従事せしめる。
税務職員の職責の特殊性に対応する任用資格、職階給与、身分その他に関する制度を確立して、量及び質において所要の人材を確保する。
前三項に関し特別の懇談会を設けて速かに調査審議を了する。
三、税務職員に対して差し当り必要な最少限度の再教育を行う。即ち雇員及び経験年数の短い官吏に対する短期講習及び実務訓練を全面的に実施する外、既存の税務講習所制度を整備するとともに、税務職員全体を対象とする昇進制度と結び付けた通信教育制度を開設する。
四、税務職員が夜間執務その他特別の激務に従事する場合は主食その他を特配する。
五、税務官署を相当増設する。
六、税務官署の設備改善、税務職員に対する福利厚生施設の整備充実特に庁舎、備品、職員宿舎、保健施設等の整備を行い、所要の人材確保と執務能率の向上に資する。
七、実情に即し円滑適正なる税務行政の運営を図るため、地方公共団体及び各種団体等との連絡を緊密にして十分な協力を求めることとし、その反面悪質な反税運動に対しては徹底的に取締を行う。
八、納税を円滑ならしめるため、納税組合の普及発達を促進助長するとともに金融機関の積極的な協力を求める。
九、以上各項その他税務の適正円滑な遂行に必要な経費は予算上優先的に確保する。