政令第201号の解釈と取扱について

昭和23年8月10日 閣議了解

収載資料:国家公務員法沿革史 資料編1 人事院 1969.3 pp.310-311 当館請求記号:AZ-341-44

一、本政令は、マ書簡に基くものであるから、解釈上疑義があるときは、同書簡の趣旨に照らして解釈するものとする。
二、団体交渉権の否認に関する事項(第一条第一項)
1 同盟罷業、怠業的行為等の脅威を裏付とする拘束的性質を帯びた、いわゆる対等の立場における団体交渉権は公務員については、認められない。(各省庁からその省庁の労働組合に対し通告する必要がある。)
2 勤務条件の改善を求めるために、(書簡に「公務員たるものが自ら若しくわ選ばれた代表を通じ、雇傭条件の改善を求めんがために・・・」とある。)公務員又はその団体が、その代表者を通じて苦情、意見、希望又は不満を表明し、且つ、これについて、十分な話合をなし、証拠を提出することができるという意味において、当該省庁の所轄当局と交渉する自由は認められる。(通告を可とする。)
3 人事委員会に対する関係については、国家公務員法第八十六条に規定しており、本政令第一条第一項の規定するところではない。
三、労働協約等の失効に関する事項(第一条第二項)
1 公務員はいわゆる団体交渉権を有しないのであるから、政府と対等の立場において団体交渉し、協定する能力を有せず、この意味における当事者能力を有しない。従つてこれを前提とした労働協約、協定又は申合せ等は当然失効する。(通告を要する。)
第一条第二項は、このことを前提として、なお実質的に効力を存続せしむべきものについて、規定しているのである。
2 労働協約等が失効するのであるから、それに基いて設置せられた経営協議会は当然消滅する。(通告を要する。)
3 本政令の趣旨に矛盾し又は違反しない限り、給与、服務の如き公務員の身分に関する従前の措置は、引続き効力を有するものとする。
効力を存続せしむべきものについては、別途具体的に決定措置する。(趣旨については通告の要がある。)
4 組合事務専従者は、書簡に、公務員は「国民の主権に基礎をもつ政府によつて使用され」・・・「公共の信託に対し無条件の忠誠の義務を負う。」とあり、又労働協約等の基礎の上に認められているものであるから、従来の如き専従者は当然その存在の根拠を失う。
仍て、これに対する措置としては、各省庁より組合、及び専従者に対してこの旨を通告し、直ちに職場に復帰せしめることとするも、各省庁の長において一定の期限(非現業庁職員については遅くとも八月末限り、現業庁職員については遅くとも九月末限りとすること)及び条件を定めて組合の事務に従事することを承認することができる。
四、斡旋、調停又は仲裁に関する事項(第一条第三項)
本政令により、公務員は、いわゆる団体交渉権並びに争議権を有しないから、労働委員会は、公務員については労働組合法第二十七条にいう「団体交渉の斡旋」並びに、「労働争議の調停及仲裁」を行うことができない。従つて現に繋属中の斡旋、調停又は仲裁に関する手続は中止しなければならない。
五、争議権の喪失に関する事項(第二条)
1 公務員に対する争議権は認められない。同盟罷業、怠業的行為は勿論、いやしくも業務の正常な運営能率を阻害する行為は許されない。(通告を要する。)
2 前項違反の行為は本政令の罰則に触れることは勿論、行政処分により厳重処断する。
この場合、労働関係調整法、労働基準法、官吏懲戒令等に拘束されない。(通告を可とする。)