未帰還対策要綱
閣議決定年
昭和23年11月24日 閣議決定
収載資料:内閣制度百年史 下 内閣制度百年史編纂委員会 内閣官房 1985.12 pp.318-319 当館請求記号:AZ-332-17
第一 ソ連地区よりの引揚促進
ソ連地区よりの引揚促進は、全国留守家族の痛切なる願望にも拘わらず毎月十六万送還の問題も解決せず、月五万の協定数すら実現しない現状であつて、在ソ同胞は四回の越冬を余儀なくされんとして居る。
連合国総司令部が常に引揚促進就中冬期継続送還の実現に関し絶大なる努力を致されていることに対しては、全国民は衷心より厚く感謝しているのであるが政府は今後とも連合国総司令部に懇請し本件実現につき格段の努力をするとともに今後一層国内受入態勢の万全を期し各般の措置を講ずること。
なお政府は在ソ生存者及び死亡者氏名の通報についても極力これが実現に努むること。
第二 中共地区よりの引揚促進
中共地区残留邦人の引揚は現在の情勢よりしてその実現は極めて困難とは思われるが政府は連合国総司令部に懇請して国際与論に訴え或は国際赤十字その他の国際機関の援助方を求め、また国民代表を派遣する等あらゆる方法を講じ引揚の促進に努力すること。
なおシベリヤに関しては抑留者、家族間の通信の途が開かれているのに反し、中央地区については現在まで全然通信不能の状況であるから、政府はなんらかの方法で抑留者と家族間の連絡が可能となるように適宜の措置を採ること。
第三 未帰還者及び留守家族の援護
一、未復員者に対する諸給与の改善
未復員者に対する諸給与は現在極めて少額であつて而も留守宅に支給されるのは一部を除き扶養手当のみに限られているので右諸給与を現物価の値上りに即応するよう増額するとともに俸給及び扶養手当を毎月留守宅に支給するよう改めること。
二、未復員者に対する災害補償
未復員中の被災害者に対しては労働基準法の災害補償に準じ災害補償の方途を講ずること。
三、未帰還一般邦人に関する援護
未帰還一般邦人にして未復員者と全く同様の実情にある者については一及び二の事項に関し未復員者に準じて取扱うこと。
四、留守家族に対する物資の特配
未帰還者留守家族の現状に鑑み衣料等必要物資の配給に関し特に考慮すること。
五、留守家族に対する育英資金の貸与
最近の経済事情に依り留守家族は、その子弟の教育費にもことかくのが多い実情であるからこれに対する大日本育英会の育英資金の貸与については特別の考慮を払ふこと。