現下の失業情勢に対処すべき失業対策

昭和24年3月4日 閣議決定

収載資料:失業対策事業二十年史 労働省職業安定局失業対策部 労働法令協会 1970.3 pp.183-185 当館請求記号:AZ-535-3

経済九原則の強力なる実施に伴い、近き将来に大量の失業者の発生をみることは必至である。さらに潜在失業の顕在化、引揚者の失業等はいよいよ深刻化しつつある。これらの失業者に就労の機会を与え、雇用の安定を得るには輸出産業を中心とする民間企業を急速に振興し、雇用量の可及的拡充を図ることが根本的解決であることはもちろんであるが、産業の振興には時間的経過を必要とし、当面離職者を直ちに吸収するに足る雇用の拡大は困難であると認められる。かかる情勢に対処し、失業の深刻化が社会不安の原因となり、ひいては経済九原則の円滑なる推進を妨げることのないようつぎのごとく失業対策を急速に確立整備するものとする。

第一 人員整理の実行を適正ならしめるよう必要措置を講ずること。
1 政府は各産業別に労務の実態調査を行い、生産との関連における所要労務量の測定と過剰労務の調査をなすこと。
2 民間企業において人員整理のやむをえない場合においては、整理の人員、時期等の整理基準、将来における優先的再雇用等につき十分に考慮のうえこれを行うよう指導する。
3 行政整理の実施に当つては必要に応じ一定の待機期間を設け、再就職の円滑化を図るとともに、民間企業の人員整理に当つても同趣旨により適当な勧奨を行うこと。
4 人員整理の円滑化を図るため、退職金等の整理資金の供給に特別の考慮を払うこと。

第二 公共事業に失業者を吸収すべき特別方途を講ずること。
1 公共事業量の拡大を図り、これに失業者をでき得る限り多数使用するよう関係官公庁の協力により公共職業安定所の全面的活動を強化すること。
2 公共事業に失業の情況に応じて失業者を一定数以上優先的に雇用せしめることとし、これがため必要なる場合は法律的措置をすること。
3 公共事業における失業者吸収の現況に鑑み、失業者救済を主たる目的とする失業対策事業費を公共事業費とは別途に設けること。

第三 配置転換を円滑ならしむべき措置を講ずること。
1 住宅の絶対的不足は労働者の地域的移動を極めて困難にしている現状に鑑み、労働者用住宅建設のための措置を講ずること。
2 労働者の配置転換に関し公共職業安定所の活動を援助するため、公共職業安定所の所在地を中心として労資協議会を設けること。

第四 失業保険制度の整備拡充
企業合理化による失業者および日雇労働者については、その失業中の生活は失業保険により保障することを原則とし、そのため左のごとく失業保険制度の整備拡充を行うこと。
1 給付期間の延長
現在の給付日数一八〇日に対し緊急措置として暫定的にさらに九〇日(三カ月)給付日数を延長し得る措置を講ずること。
2 適用範囲の拡充
現在の適用事業のほかに土木建築業、映画の製作、映写その他興業の事業および旅館、飲食店等の事業を適用事業とすること。
3 日雇労働者に対する失業保険制度の創設
日雇労働者に対して失業保険を適用し、その保護を図ること。

第五 職業補導事業を整備拡充すること。
技能の不足している現況に鑑み、現行の職業補導事業を整備拡充し、もつて失業者に対し短期技能訓練を行い、その就業を促進するとともに民間業者の協力を求め、職業補導を実施し技能工の養成を行うこと。

第六 その他
1 新制中学卒業者の就職難については、関係学校当局と公共職業安定所とがいよいよ緊密な協力をなし、これが打開に努めるの措置を講ずる。
2 前各号の対策によるもなお失業し生活困難せる者に対しては、生活保護の適用により保護すること。