港湾運営計画書

昭和24年8月31日 閣議決定

収載資料:行政機構年報 第1巻 行政管理庁管理部 1950 pp.77-81 当館請求記号:317.2-G98g

(一)組織計画
一 港湾管理主体(ポート・マネージメント・ボディ)(以下管理主体という)
1 設定
イ 主要な港には原則として管理主体が定められなければならない。
ロ 管理主体は法律の定める所により左の何れかの方法に従い、関係地方公共団体の自由意志によつて定められるものとする。
A 関係地方公共団体の協議によりその中の一が管理主体となる。
B 関係地方公共団体の協議により管理主体を新に設立する。
ハ 関係地方公共団体が管理主体を定めない場合で国においてその必要を認めたときは、管理主体を定めさせることができる。
2 性格及び組織
イ 前1ロAの場合
当該団体の自由意志により定める組織によるがその形式としては左の何れかによることとなろう。
執行機関たる委員会、議決機関たる委員会、又は諮問機関たる委員会を置き、又は別に委員会の如きものをおかない。
ロ 前1ロBの場合
A 営利を目的としない公法人とする。(地方自治法により関係地方公共団体が一部事務組合を設立する場合を含む)
B 設立者である地方公共団体の長の協議により決定した委員が意志を決定し執行する。
C 委員は地方公共団体の代表者、学識経験者、港湾利用者の代表者等から構成される。
D 事務局を置く。
E 地方公共団体の一部事務組合を設立する場合には概ね前各号の方針に従い地方自治法の規定を適用する。
3 任務
イ 港湾内の全ての国、都道府県、市町村の所有する公共用港湾施設(税関構内、検疫施設、保安施設等を除く)をその目的に最も適合する様に管理若しくは運営し且つ当該港湾の将来の発展を計画し、その計画を実施すること。
ロ 自ら管理するピア(ピア上の上屋、起重機を含む。以下同じ)を自ら運営し又は必要に応じターミナル・オペレーターに運営せしめること。
ハ 港湾区域内のポート・オペレーション及びターミナル・オペレーションを監督調整すること。
ニ その他国又は地方公共団体が法律、政令、条例又は規則により委任した事務を執行すること。
(註)当分の間、委託に応じ外国船に対する外貨サービス料金のビル作成及び円貨代金の受領に関し取纏に当ることができるものとすること。
4 経費
前号ニ以外の業務を行う為に要する経費は当該管理主体の収入によりまかなうこと。但し港湾工事に要する経費で国又は地方公共団体より支出せられるものはこの限でない。
5 監督
国又は国民の利害に関係ある重大な事項に付法律の定める所により政府が監督する。
二 ターミナル・オペレーター
1 性格
競争入札、賃借、売却、其の他管理主体の定める方法によつてピアを商業的に運営する商社又は個人とする。
2 任務
イ ピアの経営
ロ ピアにおける又はピアを通過する一切の貨物の保護、記帳(船舶勘定の検数書類の整備を含む)引渡及び受領に関する一切の責任を負うこと。
ハ ピア上で提供される一切のターミナル・サービスが円滑に提供せられるよう監督し、調整し、或は自らこの様なサービスを提供すること。
ニ ターミナル・サービスに関する邦貨建及び外貨建ビルの作成。
三 インデペンデント・コントラクター
ターミナル・オペレーターの留保したもの以外のサービス(船内荷役、艀廻漕、沿岸荷役、船用品供給、船舶修繕等)を荷主、船会社との自由な契約に基づいて提供し、自己の供給したサービスに対する邦貨建及び外貨建ビルを作成する。
四 施設のシリーズ
1 国有の施設は税関構内、検疫施設、保安施設等国において自ら使用するものを除きすべて管理主体に移管する。地方公共団体に付ても同様である。
2 税関は事務所、監所、必要最小限度の旅具(又要すれば貨物)検査所及び正式に輸出又は輸入免許が与えられなかった貨物を保税状態に置くため使用せられる特定地域又は建物から構成せられる税関構内を自ら所有、管理することができる。
五 日本政府関係諸機関の責任
運輸省(本省)      法律の定める所による管理主体の認可及び監督
大蔵省(税関)      関税法規の執行及びそれによる取締
海上保安庁(海上保安本部)港内における船舶交通の安全、港内の整頓、及び船舶通信
厚生省(検疫所)     海港検疫
農林省(動植物検疫所)  動植物検疫
外務省(税関)      出入国管理
通産省(税関)      通商手続の監査
(二)運営計画
一 ポート・オペレーション
1 入港
イ 入港手配
A 船会社代理店はブイ又はバースの指定申込を管理主体に行い、管理主体はブイ又はバースを指定し関係機関に通知する。
B 船会社代理店は入港届を管理主体、港長及び税関長に提出する。
ロ 到着予定期日の通知
船舶は無電で船会社代理店に所要事項を通知し、船会社代理店は関係機関及び業者に連絡する。
ハ 入港の確認
信号所は船舶の入港を確認し船会社代理店に通知し、船会社代理店は之を関係機関及び業者に連絡する。
ニ 検疫官吏、水先人、管理主体の連絡員、税関管理の乗船
夫々の職務を執行する。
ホ ポートサービスの提供(水先、船舶荷役、艀廻漕等)
船会社代理店とインデペンデント・コントラクターとの契約によつてなされるが、管理主体はその円滑な提供に付てあつ旋を行うことができる。
2 出港
船会社代理店は出港届を管理主体、港長及び税関長に提出する。
二 ターミナル・オペレーション
1 ターミナル・オペレーターのいる埠頭の場合
イ 着埠作業
ターミナル・オペレーターは船会社代理店よりの通知に基いて着埠に関する一切の労務、施設を準備し提供する。
ロ 輸入貨物取扱
ターミナル・オペレーターは貨物が船舶のフックを離れてから荷受人又は貨物取扱人に正式に引き渡す迄その取扱、保管、警備、引渡に付て必要な一切の労務、資材、設備、監督者を準備し、提供し、貨物に付て記帳する責任をおう。
ハ 輸出貨物取扱    前ロに準ずる
ニ 離埠作業      前イに準ずる
2 ターミナル・オペレーターのいない埠頭の場合
船会社代理店、荷主、荷受人等が直接インデペンデント・コントラクター又は管理主体との契約により、1、イ、ロ、ハ、ニの作業をする。その際管理主体は施設管理者として一般的調整に当る。
三 税関取締
1 税関は関税法、保税倉庫法、税関貨物取扱人法等によつて取締を行う。
2 税関官吏は検査その他関税法規実施のため埠頭、上屋の共同使用及び全港湾区域への立入が認められる。
四 貨物等の損傷又は滅失に対する補償処理
1 補償金額の決定
イ 請求者と当該事故に対して直接責任のある日本政府機関、管理主体、ターミナル・オペレーター、インデペンデント・コントラクターとの間に直接取り決める。
ロ 相互取決めに到達し得ない時は連合国最高司令官が指定する機関の調査、決定を求め、又は日本国の裁判所の裁判を求めることができる。
2 外国為替の申請
補償金額が決定した時は請求者は大蔵省に許可申請をなし、大蔵省は外国為替管理委員会に協議の上、許可決定をする。
3 外貨の支払
外国為替管理委員会は、外国為替銀行を通じ補償責任者より請求額に相当する円貨額を徴収し、之を納入せしめた後、GHQに対し外貨の支払を求める。
(三)前各項の実施
本案を急速に実施する為にはポツダム政令によることが望ましいが、覚書は港湾の一般的機構を整備する趣旨を明記しておらず、京浜港及び神戸港のみにつき言及しているので、ポツダム政令による方法は取れず、従つて本案に対する総司令部の承認あり次第最近の国会に法律案を提出して、その議決を経て実施することとなる。
(四)京浜港及び神戸港に対する前各項の適用
一 京浜港に付て
1 管理主体の設定に付ては神奈川県、横浜市及び川崎市の協議によつて定めることとする。
2 港湾区域に付ては差当りは所謂東京港は含まないものとすること。
二 神戸港に付て
管理主体の設定に付ては兵庫県及び神戸市の協議によつて定めることとする。
三 前各号の協議は、正式には総司令部により本案が承認せられ、国会により法律が制定せられてから始めて行いうることとなるが、便宜上その前に非公式に関係地方公共団体の意向を取まとめ、九月三十日迄に総司令部に追加提出する予定である。