ジェーン台風による災害復旧措置について

昭和25年9月22日 閣議了解

収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 p.99 当館請求記号:DG15-19

A 財政措置
一 災害救助
災害救助法に基く応急救助については、当初計上予算の残額千二百九十七万円と一般会計予備費七千三百九十万円と合せて八千六百八十七万円を支出する。
右の八千六百八十七万円は、災害救助法により算定した国庫負担額の半額を概算交付するものであって、残額は救済費使用確定後追って交付するものとする。
二 公共事業費
本年度災害復旧費予算百億円の残り五十億円のうちから相当金額を支出する。(1)
三 農業共済保険
被災地につき災害査定を行い、収穫期をまって各県別の損害額を確定の上再保険金額を決定するが、県単位の共済組合連合会が全損地域に対して概算払を行うための所要の措置を講ずる。
B 租税の減免措置等
一 国税の減免及び徴収猶予等
災害減免法の規定による減免及び徴収猶予と所得税法の規定による雑損控除制度の適切な活用により、実情に即した減免及び徴収猶予等の措置を講ずる。
二 地方税の減免及び徴収猶予
地方税法の規定に基き、関係各地方団体に対してそれぞれ減免及び徴収猶予の措置を講ずるよう連絡する。
C 金融措置
一 公共施設関係
(一)公共施設関係の本年度公共災害補助金のつなぎ資金については預金部資金より差当り一一億五千万円(大阪五億円、兵庫一・五億円、和歌山一・一億円、徳島二・一億円、その他一・八億円)の融資を決定したが国庫補助総額の見透しがつき次第更にその増額について考慮する。
(二)公共施設の災害中、地方の負担において措置する分についても、起債前貸の形において、預金部資金より可及的速かに融資を行うものとする。
二 一般民間企業関係
(一)一般民間企業の復旧資金に対しては、原則として市中金融機関の融資によることとし、融資を円滑ならしめるため次の措置をとる。
1 災害地に居住所又は主たる営業所を有し被害を受けた手形支払人の手形の取立につき、実情に即する調整を行わしめる。(通牒ずみ)
2 災害地に限り、本年末まで、災害復旧資金の融通については、融資準則別表産業費金貸出優先順位表の適用を停止する。(通牒ずみ)
3 市中銀行の災害復旧に対する協力を求め、必要な資金繰について日本銀行より資金的援助を行うものとする。(通牒及び連絡ずみ)
4 市中銀行の災害復旧資金の供給を円滑ならしめるため預金部資金の市中銀行預託につき所要の調整を加える。
(二)災害地の海上及び運送損害保険金の支払を、迅速に行わしめるよう督励する。
(三)災害地の企業については、復金貸付金の回収計画につき再検討する。(連絡ずみ)
三 中小企業関係
中小企業の復旧資金に対しては次の通り措置するものとする。
(一)商工中金等を極力活用することとし、日銀の中小別枠融資の限度を次の通り五億円増額する。(決定ずみ)
興銀  二億円
商中  二億円
勧銀  一億円
(二)中小専門店舗の特段の活用をはかるよう関係銀行に協力を求める。(通牒ずみ)
中小専門店舗を通ずる災害復旧融資については、日銀において資金的援助を行うものとし、右による日銀貸出金は高率適用を免除する。(決定ずみ)
(三)災害地府県の信用保証協会の出資金の増額又は、損失補償の方法により、信用保証協会の機能の拡充をはかる。
信用保証協会の災害復旧対策として、只今予定されているものは次の通りである。
大阪府の三億二千五百万円の出資(内一億二千五百万円は預託)により市中銀行より五億円の融資
大阪市の一億円の出資により市中銀行より三億五千万円の融資
兵庫県の一千万円の出資により市中銀行より一億円の融資
(四)見返資金の中小企業融資の枠の拡張に努力する。
(五)罹災者の自己調達をなし得ない部分は、できうれば地方団体経由により預金部資金の融通をなし得るよう努力する。
四 農林水産関係
(一)農林水産関係の復旧資金に対しては農林中金を極力活用するものとする。(連絡ずみ)
(二)農業災害共済保険金のつなぎ融資についても、必要ある場合は、農林中金から行わしめることを考慮する。
五 住宅金融関係
(一)住宅金融公庫を活用することとし次の措置をとる。(連絡ずみ)
1 融資の地域的配分につき、申込件数の増加に応じ、災害地に重点をおく等の調整を行う。
2 災害地住宅の建設については、公庫法の許す範囲内において、住宅の規格等融資条件の緩和を考慮する。
(二)罹災者の自己調達をなし得ない部分は、できうれば地方団体経由により預金部資金の融通をなし得るよう努力する。
欄外 (1)不足分二付テハ補正予算ニ於テ考慮スルコトトシテ了解