農業委員会法案要綱
閣議決定年
昭和26年2月6日 閣議決定
収載資料:農地改革資料集成 第12巻 農地改革資料編纂委員会編 農政調査会 1980 pp.98-101 当館請求記号:DM125-17
一 目的
この法律は、農業生産力の発展、農業経営の合理化を図り、農民の地位の向上に寄与するため都道府県及び市町村に農民の代表機関として農業委員会を設け、その所掌事務の範囲及び組織を定めることを目的とする。
二 市町村農業委員会
(一)設置
市町村に市町村農業委員会を置く。但し
(イ)市町村の区域又はその区域内の農地面積が著しく大きい市町村にあっては、都道府県知事の承認を得て二以上の市町村農業委員会を置くことができる。
(ロ)市町村の区域内の農地面積が著しく小さい市町村にあっては、都道府県知事の承認を受けて市町村農業委員会を置かないことができる。
(二)権限
1 市町村農業委員会は、左の事項を処理するものとする。
(イ)自作農の創設及び維持、農地関係の調整、土地の改良、交換分合及び小作調停に関する勧解
(ロ)農地等の利用関係の斡旋、争議の防止、交換分合の斡旋その他農地事情の改善に関する事項
(ハ)土地の開発、改良、保全その他土地の生産条件の整備に関する事項、農業技術の改良その他農業生産に関する事項、農畜産の加工、販売その他処理に関する事項、その他農業経営の合理化及び農民生活の改善に関する事項に付市町村長に建議し又は市町村長の諮問に応じ答申すること。
2 市町村農業委員会は、当分の間前項各号に掲げるものゝ外食糧管理法に基く主要食糧の生産者別政府買入数量の決定に関して市町村長の諮問に応ずるものとする。
(三)組織
1 選挙による委員の数を十五名とする。
2 右の委員は次の二階層により構成する。但し、各階層に属する選挙権を有する農民の数が、それぞれの属する区分の委員の定数の十五倍以下になった場合は、全層選挙を行うものとする。
(イ)一号委員 五名
A 耕作面積の半分以上を小作している者
B 二反歩をこえる面積の小作地を耕作している者でその者の耕作面積が都府県平均一町歩、北海道四町歩以下のもの
(ロ)二号委員 十名
耕作の業務を営む者で、(イ)に該当しない者
3 右の外、市町村長は農業委員会の所掌事務に関し学識経験を有する者で選挙による委員の各階層の委員のそれぞれ過半数が推薦したものにつき五名を限り選任することができるものとする。
4 会長は、委員の互選とする。
(四)選挙権、被選挙権
委員の選挙権、被選挙権を有する者は、二十才以上の一反歩(北海道では三反歩)以上を耕作する者及び同居の親族又はその配偶者で常時耕作に従事するものとする。
(五)任期 二年
(六)リコール、階層別(全層選挙の行われた場合は全層)全員のリコールとする。
(七)解散
都道府県知事は、市町村農業委員会が法令に違反したときは、都道府県農業委員会の意見を聞いて解散を命ずることができるものとする。
(八)書記
委員会の庶務を処理するため書記若干名を置く。
三 都道府県農業委員会
(一)設置
都道府県に、都道府県農業委員会を置く。
(二)権限
1 都道府県農業委員会は、左の事項を処理するものとする。
(イ)二の(二)の1の(イ)に掲げる事項(小作調停の勧解を除く。)及び同(ロ)に掲げる事項。
(ロ)二の(二)の1の(ハ)に掲げる事項につき都道府県知事に建議し又は都道府県知事の諮問に対し答申すること。
(ハ)都道府県の行う農業に関する試験研究及び普及事業に関する事項について都道府県知事に建議し又は都道府県知事の諮問に対し答申すること。
(ニ)市町村の行う二の(二)の1の(ハ)に掲げる事項の計画の樹立又はその実施についての総合調整を図る為都道府県知事の行う勧告等に関してその諮問に対し又は建議すること
2 都道府県農業委員会は、当分の間前項各号に掲げるものゝ外、食糧管理法により都道府県知事の指示する市町村別買入数量の決定に関して都道府県知事の諮問に応ずるものとする
(三)組織
1 選挙による委員の数を十五名とする。
2 右の委員は、市町村農業委員会と同じ二階層により編成する。
3 右の外都道府県知事は農業委員会の所掌事務につき学識経験を有する者で選挙された委員のそれぞれ過半数の推薦を得たものにつき五名を限り選任する。
4 会長は、都道府県知事とする。
5 都道府県知事は特定の事項を調査審議するため必要あると認める時は都道府県農業委員会の同意を得て専門調査員を置くことができるものとする
6 都道府県知事は都道府県農業委員会がその所掌事務を行う為必要と認めて請求した場合には都道府県農業委員会の補助機関として市町村農業委員会代表者会議を招集することができるものとする
(四)選挙権、被選挙権
選挙権を有する者は、市町村農業委員会の委員とし、被選挙権を有する者は、市町村農業委員会の被選挙権を有するものとする。
(五)リコール
階層別、全員のリコールとするがその請求権は市町村農業委員会の委員の選挙権者に与える。
(六)解散
農林大臣は、都道府県農業委員会が法令に違反した時は解散を命ずることができるものとする。
(七)委員の任期
書記については市町村農業委員会に同じ。
四 右の二及び三の外委員の兼職禁止、委員会の会議、特定委員の除斥、委員の就職、委員の失職等の規定を設ける。
五 委員会は、特定の事項に関して農民その他の関係者に対する出頭要求、報告の徴収、その他調査及び公簿の無料閲覧謄写をなし得るものとする。
六 農林大臣又は都道府県知事は、委員会からその事務に関し請求があったときは、助言を与え資料を提示し、その他必要な協力を行うものとする。
七 農林大臣又は都道府県知事は、委員会の議決が法令に違反し又は著しく不当であるときは、再議を求め、又はその取消を命じ得るものとする。
八 委員会の経費に関しては国は毎年度予算の範囲内でこれを負担するものとする。