昭和27年度予算編成方針
閣議決定年
昭和26年12月21日 閣議決定
収載資料:昭和財政史 終戦から講和まで 第18巻 大蔵省財政史室編 東洋経済新報社 1982 pp.170-171 当館請求記号:DG15-19
昭和二十七年度予算編成に際しては、経済力の増強と国民生活の確保をはかるとともに、平和回復に伴って新たに加えられる責任を遂行し、もって自立国家としての地位の確立を期するものとする。
第一、予算編成の基本方針としては、左記による。
一、均衡予算の方針を堅持し、資金蓄積の強化その他金融面の施策と相まって国民経済の健全な運営を確保し、生産の増強と企業の合理化をはかるとともに、物価は国際的水準を勘案しつつその安定を期する。
二、平和条約の成立その他諸状勢の推移に伴う財政需要に対処するため、経費の重点的配分を更に徹底せしめ、財政規模は国民経済力に適合した限度に止める。
三、税制については、原則として既定の改正を維持恒久化し、国民負担の軽減適正化を推進する。
四、さきに決定せる行政整理を遂行する外行政機構及び事務を簡素合理化し、行政の根本的刷新をはかる。
第二、右基本方針の下に左の諸点に重点を置く。
一、平和回復に伴う措置
(一)国民経済力に応じた限度に於て、治安力の増強を期するため、警察予備隊等の漸進的充実をはかる外、安全保障条約の趣旨に基き所要の経費を計上する。
(二)賠償その他対外債務の処理については、平和条約の精神に鑑み、存立可能な経済を維持しつつ円満なる解決に努め、友邦善隣の関係を確立する方針の下に、所要の経費を計上する。
二、経済力増強のための措置
(一)経済基盤の充実をはかるため、電源の開発を中心として特に緊要な産業資金を優先的に確保するとともに、輸出入の増進のための措置を講ずる。
(二)食糧自給体制整備のため農業生産力の増強をはかるほか、治山治水その他災害防除に関する施策を行う。
(三)農林漁業の経営を健全化するため、農業災害補償制度の整備と農林漁業金融の円滑化をはかる。
三、民生安定及び文教振興のための措置
(一)社会保険、生活保護制度の運営の適正化、失業対策、住宅資金、中小企業金融の充実等社会福祉の維持向上を期する。
(二)戦傷者および戦死者遺家族については財政力その他諸般の事情を勘案しつつ能う限りの援護を行う。
(三)既定計画に基く六三制校舎の急速な整備を行うとともに、学術振興、職業教育のための施策の充実をはがる。
第三、地方公共団体についても国と同様行政を刷新簡素化し、地方財政の徹底的改善をはかる。