ビルマ連邦に対する賠償実施要領に関する件

昭和29年12月24日 閣議決定

収載資料:行政管理年報 第5巻 行政管理庁管理部 1956 pp.40-43 当館請求記号:317.2-G98g

ビルマ連邦に対する賠償の実施は、左の要領により行うものとする。
1.基本方針
ビルマ賠償の実施は、ビルマ政府の希望にのつとり、ビルマ政府と日本人との間に個々の生産物及び役務を提供する契約を締結せしめて日本政府が日本人契約者に対し支払いをする民間方式を基本とし、右方式にこれをとることによつて日本経済に悪影響を及ぼす危険及び日本人が著しく不利な受注(出血受注)をなす危険をさけるための修正を施したところにより、これを行うものとする。
2.対ビルマ賠償実施方式
右の基本方針に基き、ビルマ政府と左の方式によるよう交渉するものとする。
(1)日本政府は、ビルマ政府との間に、毎会計年度開始前に当該年度の賠償実施計画及び支払予定額を協議決定する。
(2)ビルマ政府は、右実施計画に基いて日本人と直接に契約を締結する。ただし、日本政府は、適当と認める候補者を推薦することができる。
(3)ビルマ政府は、右契約につき日本政府の承認を受けるものとし、承認の基準については、別途ビルマ政府と協議決定しておくものとする。日本政府は、右の承認をなす際、その代金支払債務を引き受けるものとする。
(4)ビルマ政府は、契約による給付を受けたときは、日本政府に対し給付受領通知書を送付する。
(5)日本人は、ビルマ政府発行の給付受領書を添えた支払請求書を日本政府に提出して支払いを受けるものとする。
(6)日本政府が前項の支払いをなしたときは、日本国の賠償履行の義務は、その限度において完了されたものとする。
3.実施機構
賠償実施に当つては、関係各省の現存機構をできるだけそのまま利用することとし、ただ日本政府の賠償実施に関連する事務を円滑かつ統一的に処理するために左の機関を設ける。
(1)賠償実施連絡協議会
会長 外務大臣
委員 経審次長並びに外務・大蔵・文部・厚生・農林・通産・運輸・郵政及び建設の各事務次官
幹事 関係各省庁担当官(局部長・次長・課長等)
協議会は、関係各省庁の日緬賠償経済協力協定の実施に関連する事務の連絡協議を行うものとする。
日本ビルマ合同委員会日本政府代表は、協議会の協議を経た方針に基き、外務大臣の訓令を受けて交渉をなすものとする。
(2)賠償実施懇談会
委員は、民間学識経験者10名程度とし、経済団体連合会・日本商工会議所・経済同友会・アジア協会等の推薦する候補者中より外務大臣が指名する。
懇談会は、日緬賠償経済協力協定の円滑なる実施に関し、外務大臣に意見を述べる。
(3)賠償実施連絡部(仮称)
日本ビルマ合同委員会に関する事務その他日緬賠償経済協力協定実施に伴う連絡の事務を行わしめるために、外務省アジア局に賠償実施連絡部(仮称)を設ける。
契約の承認・代金支払債務の引受・給付受領通知書の受理等ビルマ政府との連絡及び交渉並びに業者に対する代金の支払は、賠償実施連絡部がこれを行う。ただし、契約の承認については関係各省の審査の結果に従つてこれを行うものとする。
賠償実施連絡部は、賠償実施協議会及び賠償実施懇談会に関する事務を併せ行う。
賠償実施連絡部長(仮称)は、日本ビルマ合同委員会の日本政府代表代理に任命されるものとする。
賠償実施連絡部の構成は、できる限り簡素なものとし、必要に応じ関係各省担当官をして連絡部職員を兼ねしめる。