駐留軍撤退に伴う離職者の対策について
閣議決定年
昭和32年9月24日 閣議決定
収載資料:防衛施設庁史 第2巻 各論編 第2部 防衛施設庁史編さん委員会編 防衛施設庁総務部総務課 1983 pp.280-281 当館請求記号:AZ-675-19
駐留軍の引揚及び特需の減少に伴う離職者については、累次にわたる閣議了解に基き、その対策を講じてきたところであるが、現在行われつつある米地上軍撤退等に伴う離職者の発生は、広汎な地域にわたり、且つ、従来に比し特に大規模となる見込であるので、この事態に対処して対策を強化するため、左記の措置を講ずるものとする。
記
一 職業補導の拡充
1 離職者の優先入所をはかるとともに、既設補導所を活用して短期補導、夜間補導等を実施し、補導種目の新設、定員の増加をはかるほか、なお必要がある場合には,臨時補導所を設置する等により職業補導の大幅拡充を行う。
2 在職中の労務者についても軍側の了解を得て、基地内における職業補導を実施する。
二 就職斡旋の強化
1 官公庁においては、離職者の採用に努めるものとし、特に自衛隊が返還施設を引継使用する場合には、職員の採用条件を緩和する等により、離職者をできる限り採用する。
2 職業安定機関においては、労務管理機関と協力して、離職前の就職相談の実施、民間事業への雇用勧奨等により職業紹介の強化に努める。
3 離職者の求職を広く他地域にわたって連絡し、広域職業紹介を行うとともに、その実効を挙げるため、返還施設等国有財産のうち適当なものを臨時の居住施設として活用を図る。
三 離職者の行う事業の育成
1 離職者が自立のために組織する企業組合その他の事業団体に対しては、その事業の許認可について優先的に取扱う。
2 前項の企業組合等が行う事業に対しては、国有の財産の払下げ等について、実情に即した措置を講ずるものとし、許認可を受けた事業団体に対する米軍財産の処分についても、軍側と協議して同様の配慮をなしうるように努力する。
3 国民金融公庫等の政府関係金融機関が、関係府県知事の推薦を参酌して駐留軍離職者による自立営業及び企業組合に対して、実情に即し、条件を緩和して能う限り資金の需要に応ずるにつき、好意的配慮を加えるよう行政措置をとる。なおそれらの事業に対し、中小企業振興資金助成法による資金の活用をも図る。
4 自衛隊その他の官公庁において、売店等の委託経営、需要の部外発注等を行う場合はできる限り離職者の行う事業を優先的に取扱う。
四 海外移住の斡旋
離職者のうち海外移住を希望する者については、移住者の選考に際し優先的に考慮する。
五 公共事業、失業対策事業等の重点的実施
離職者の大量に発生する地域においては、その吸収のため公共事業、失業対策事業等を重点的に行うものとし、その場合当該地域の産業基盤の造成に資するよう配慮する。
六 企業の誘致
大量の離職者に対しその恒久的就業を確保するためには、当該地域に新たな企業を誘致し、産業の育成を図ることが最も有効であることにかんがみ、返還施設の転用については、自衛隊その他の政府関係諸機関等の使用との調整を図り、自衛隊等において必要とするもの以外は、できる限り企業誘致のためにあてる。
この場合国有財産の評価にあたって、次の事情を認められるものは利用効率による低減を充分考慮し、従来の一般的措置にとらわれることなく、実情に沿うように留意する。
1 物件の位置、環境等の立地条件が不利である場合
2 敷地の規模及び敷地内にある建物及び工作物の配置状況からみて、当該建物及び工作物を利用する上に相当不便である場合
3 建物及び工作物の規模、構造等が軍用施設としての特殊性が強くこれがため特に不経済、非能率となる場合
4 機械の能力、容量が国内全般の企業規模からみて過大である場合
七 対策の推進
1 前各項の対策その他所要の対策を有効適切に推進するためには、当該地域の実情に応じて、対策を計画し実施することが最も適当であるので、関係都道府県にそのための「駐留軍離職者対策本部」の設置を勧奨する。
2 政府は、各都道府県の駐留軍離職者対策本部における対策の立案実施に対し、特需等対策連絡会議において、参与の意見を参考として、その指導、援助及び推進にあたる。そのため同連絡会議に「離職者対策推進本部」を設ける。
3 本対策のための地方公共団体等の負担については、その実情に応じ対策を円滑に実施し得るよう配慮する。
4 本対策推進のため予備費の支出その他必要な予算措置を講ずるものとし、なお必要がある場合には法令の改正をも考慮する。
なお、特需の減少に伴う事態についても、右に準じて処置するほか所要の措置を講ずる。