公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱

昭和37年6月29日 閣議決定

収載資料:日本道路公団例規集 用地編(昭和59年8月20日現在)  pp.3282-3292 当館請求記号:CZ-451-2

目次
第1章 総則(第1条-第6条)
第2章 土地等の取得に係る補償
第1節 土地の取得に係る補償(第7条-第9条)
第2節 土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償(第10条-第13条)
第3節 建物、土石砂れき、漁業権等の取得又は消滅に係る補償(第14条-第18条)
第3章 土地等の使用に係る補償(第19条-第23条)
第4章 土地等の取得又は土地等の使用により通常生ずる損失の補償
第1節 移転料等(第24条-第28条)
第2節 立木補償(第29条・第30条)
第3節 営業補償(第31条-第33条)
第4節 農業補償(第34条-第37条)
第5節 漁業権等の消滅又は制限により通常生ずる損失の補償(第38条-第40条)
第6節 残地等に関する損失の補償(第41条・第42条)
第7節 その他通常生ずる損失の補償(第43条)
第5章 土地等の取得又は土地等の使用に伴うその他の措置(第44条-第46条)
附則

第1章 総則
(目的)
第1条 この要綱は、土地収用法その他の法律により土地等を収用し、又は使用することができる事業に必要な土地等の取得又は土地等の使用に伴う損失の補償基準の大綱を定め、もつてこれらの事業の円滑な遂行と損失の適正な補償の確保を図ることを目的とする。

(定義等)
第2条 この要綱において「土地等」とは、土地、土地収用法第5条に掲げる権利、同法第6条に掲げる立木、建物その他土地に定着する物件及び同法第7条に掲げる土石砂れきをいう。
2 この要綱において「土地等の取得」とは、前頃に掲げる土地、物件及び土石砂れきの取得並びに同頃に掲げる権利の消滅をいう。
3 この要綱において「土地等の使用」とは、第1項に掲げる土地及び物件の使用並びに同項に掲げる権利の制限をいう。
4 この要綱において「土地等の権利者」とは、土地等の取得又は土地等の使用に係る土地等に関して権利を有する者、第1項に掲げる土石砂れきの属する土地に関して権利を有する者及び当該土地、当該権利の目的となつている土地又は当該土石砂れきの属する土地にある物件に関して権利を有する者をいう。
5 この要綱において「権利」とは、社会通念上権利と認められる程度にまで成熟した慣習上の利益を含むものとする。

(補償額算定の時期)
第3条 土地等の取得又は土地等の使用に係る補償額は、契約締結の時の価格によつて算定するものとし、その後の価格の変動による差額については、追加払いしないものとする。

(補償を受ける者)
第4条 損失の補償は、第5章に規定する場合を除き、土地等の権利者に対してするものとする。

(個別払いの原則)
第5条 損失の補償は、各人別にするものとする。ただし、各人別に見積ることが困難であるときは、この限りでない。

(損失補償の方法)
第6条 損失の補償は、原則として、金銭をもつてするものとする。
2 土地等の権利者が金銭に代えて土地又は建物の提供、耕地又は宅地の造成その他金銭以外の方法による給付を要求した場合において、その要求が相当であり、かつ、真にやむを得ないものであると認められるときは、事情の許す限り、これらの給付を行なうよう努めるものとする。

第2章 土地等の取得に係る補償
第1節 土地の取得に係る補償
(土地の補償額算定の基本原則)
第7条 取得する土地(土地の附加物を含む。以下同じ。)に対しては、正常な取引価格をもつて補償するものとする。
2 前項の場合において、当該土地に移転すべき建物その他の物件があるときは、当該物件がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。
3 第1項の場合において、土地を取得する事業の施行が予定されることによつて当該土地の取引価格が低下したと認められるときは、当該事業の影響がないものとしての当該土地の正常な取引価格によるものとする。

(土地の正常な取引価格)
第8条 前条の正常な取引価格は、近傍類地(近傍地及び類地を含む。以下同じ。)の取引価格を基準とし、これらの土地及び取得する土地の位置、形状、環境、収益性その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。
2 前項の場合において基準とすべき近傍類地の取引価格については、取引が行なわれた事情、時期等に応じて適正な補正を加えるものとする。
3 地代、小作料、借賃等の収益を資本還元した額、土地所有者が当該土地を取得するために支払つた金額及び改良又は保全のために投じた金額並びに課税の揚合の評価額は、第1項の規定により正常な取引価格を定める揚合において、参考となるものとする。
4 第1項の規定により正常な取引価格を定める揚合においては、一般の取引における通常の利用方法に従つて利用し得るものとして評価するものとし、土地所有者がその土地に対して有する主観的な感情価値及び土地所有者又は特定の第三者がその土地を特別の用途に用いることを前提として生ずる価値は、考慮しないものとする。

(所有権以外の権利の目的となつている土地に対する補償)
第9条 土地に関する所有権以外の権利の目的となつている土地に対しては、当該権利がないものとして前2条の規定により算定した額から次節の規定により算定した当該権利の価格を控除した額をもつて補償するものとする。

第2節 土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償
(土地に関する所有権以外の権利の補償額算定の基本原則)
第10条 消滅させる土地に関する所有権以外の権利に対しては、正常な取引価格(一般的に譲渡性のないものについては、土地の正常な取引における当該権利の有無による土地の価格の差額)をもつて補償するものとする。
2 第7条第3項の規定は、前項の場合について準用する。

(地上権、永小作権及び賃借権の正常な取引価格)
第11条 地上権、永小作権又は賃借権に係る前条の正常な取引価格は、近傍類地に関する同種の権利の取引価格を基準とし、当該同種の権利の目的となつている土地及び消滅させる権利の目的となつている土地の価格並びに当該同種の権利及び消滅させる権利に係る地代、小作料又は借賃、権利金、権利の存続期間その他の契約内容、収益性、使用の態様等を総合的に比較考量して算定するものとする。
2 第8条第2項から第4項までの規定は、前項の規定により地上権、永小作権又は賃借権の正常な取引価格を定める揚合について準用する。

(使用貸借による権利に対する補償)
第12条 使用貸借による権利に対しては、当該権利が賃借権であるものとして前条の規定に準じて算定した正常な取引価格に、当該権利が設定された事情並びに返還の時期、使用及び収益の目的その他の契約内容、使用及び収益の状況等を考慮して適正に定めた割合を乗じて得た額をもつて補償するものとする。

(占有権)
第13条 占有権に対しては、補償しないものとする。

第3節 建物、土石砂れき、漁業権等の取得又は消滅に係る補償
(建物等の取得に係る補償)
第14条 取得する建物その他の土地に定着する物件(以下「建物等」という。)に対する補償については、第1節に規定する土地の取得に係る補償の例による。

(建物等に関する所有権以外の権利消滅に係る補償)
第15条 消滅させる建物等に関する所有権以外の権利に対する補償については、前節に規定する土地に関する所有権以外の権利の消滅に係る補償の例による。

(土石砂れきの取得に係る補償)
第16条 取得する土地収用法第7条に掲げる土石砂れきに対しては、正常な取引価格をもつて補償するものとする。
2 前項の正常な取引価格は、近傍類地に属する土石砂れきの取引価格を基準とし、これらの土石砂れき及び取得する土石砂れきの品質その他一般の取引における価格形成上の諸要素を総合的に比較考量して算定するものとする。

(漁業権等の消滅に係る補償)
第17条 消滅させる漁業権、入漁権その他漁業に関する権利(以下「漁業権等」という。)に対しては、当該権利を行使することによつて得られる収益(漁業粗収入から漁業経営費(自家労働の評価額を含む。)を控除した額をいう。)を資本還元した額を基準とし、当該権利に係る水産資源の将来性等を考慮して算定した額をもつて補償するものとする。

(鉱業権等の消滅に係る補償)
第18条 消滅させる鉱業権、租鉱権、温泉を利用する権利又は河川の敷地若しくは流水、海水その他の水を利用する権利(以下「鉱業権等」という。)に対しては、一般的に譲渡性のあるものについては正常な取引価格をもつて、その他のものについては、当該権利の態様及び収益性、当該権利の取得に関して要した費用等を考慮して算定した額をもつて補償するものとする。

第3章 土地等の使用に係る補償
(土地の使用に係る補償)
第19条 使用する土地(空間又は地下のみを使用する場合における当該土地を除く。以下この条において同じ。)に対しては、正常な地代又は借賃をもつて補償するものとする。
2 第7条第3項の規定は、前項の規定により正常な地代又は借賃を定める場合について準用する。
3 第1項の正常な地代又は借賃は、使用する土地及び近傍類地の地代又は借賃に、これらの土地の使用に関する契約が締結された事情、時期等及び権利の設定の対価を支払つている場合においてはその額を考慮して適正な補正を加えた額を基準とし、これらの土地の第8条の規定により算定した正常な取引価格、収益性、使用の態様等を総合的に比較考量して算定するものとする。

(空間又は地下の使用に係る補償)
第20条 空間又は地下の使用に対しては、前条の規定により算定した額に、土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額をもつて補償するものとする。
2 前項の場合において、当該空間又は地下の使用が長期にわたるときは、同項の規定にかかわらず、第8条の規定により算定した当該土地の正常な取引価格に相当する額に、当該土地の利用が妨げられる程度に応じて適正に定めた割合を乗じて得た額を一時払いとして補償することができるものとする。

(建物等の使用に係る補償)
第21条 使用する建物等に対する補償については、第19条に規定する土地の使用に係る補償の例による。

(漁業権等の制限に係る補償)
第22条 制限する漁業権等に対しては、当該権利が消滅するものとして第17条の規定により算定した額に、当該権利の制限の内容等を考慮して適正に定めた割合を乗じて得た額をもつて補償するものとする。

(鉱業権等の制限に係る補償)
第23条 制限する鉱業権等に対しては、当該権利が消滅するものとして第18条の規定により算定した額に、当該権利の制限の内容等を考慮して適正に定めた割合を乗じて得た額をもつて補償するものとする。

第4章 土地等の取得又は土地等の使用により通常生ずる損失の補償
第1節 移転料等
(建物等の移転料)
第24条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地等に建物等(立木を除く。以下この条から第26条までにおいて同じ。)も取得せず、又は使用しないものがあるときは、当該建物等を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転方法によつて移転するのに要する費用を補償するものとする。この場合において、建物等が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、当該建物等の所有者の請求により、当該建物等の全部を移転するのに要する費用を補償するものとする。
2 建物等の移転に伴い建築基準法その他の法令の規定に基づき必要とされる施設の改善に要する費用は、補償しないものとする。

(移転困難な場合の建物等の取得)
第25条 建物等を移転することが著しく困難であるとき、又は建物等を移転することによつて従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、当該建物等の所有者の請求により、当該建物等を取得するものとする。

(移転料多額の場合の建物等の取得)
第26条 建物等を移転させるものとして第24条の規定により算定した補償額が第14条の規定により算定した当該建物等の正常な取引価格をこえるときは、当該建物等を取得することができるものとする。

(動産移転料)
第27条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い移転する動産に対する補償については、第24条第1項前段に規定する建物等の移転に係る補償の例による。

(仮住居の使用に要する費用)
第28条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地にある建物又は取得し、若しくは使用する建物に現に居住する者がある場合において、その者が仮住居を必要とするものと認められるときは、通常仮住居の使用に要する費用を補償するものとする。

第2節 立木補償
(立木の移植補償)
第29条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地に立木がある場合において、これを移植することが相当であると認められるときは、掘起し、運搬、植付け等の移植に通常必要とする費用及び移植に伴う枯損等により通常生ずる損失を補償するものとする。

(立木の伐採補償)
第30条 前条に掲げる土地に立木がある場合において、これを伐採することが相当であると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 伐期未到達立木であつて、市場価格のあるものについては、伐期における当該立木の価格の前価額と現在から伐期までの収益の前価合計額との合計額から、当該立木の現在価格を控除した額
二 伐期未到達立木であつて、市場価格のないものについては、それぞれ次に掲げる額
イ 人工林については、現在までに要した経費の後価合計額から、現在までの収益の後価合計額を控除した額
ロ 天然生林については、伐期における当該立木の価格の前価額
2 多量の立木を一時に伐採することによつて伐採搬出に通常要する費用が増加し、又は木材価格が低下すると認められるときは、当該増加額又は当該低下額に相当する額をもつて補償するものとする。

第3節 営業補償
(営業廃止の補償)
第31条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 免許を受けた営業等の営業の権利等が資産とは独立に取引される慣習があるものについては、その正常な取引価格
二 機械器具等の資産、商品、仕掛品等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額
三 従業員を解雇するため必要となる解雇予告手当相当額、転業が相当と認められる場合において従業員を継続して雇用する必要があるときにおける転業に通常必要とする期間中の休業手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額
四 転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額(個人営業の場合においては、従前の所得相当額)
2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては、第46条の規定による離職者補償を行なうものとし、事業主に対する退職手当補償は行なわないものとする。

(営業休止等の補償)
第32条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 通常休業を必要とする期間中の営業用資産に対する公租公課等の固定的な経費及び従業員に対する休業手当相当額
二 通常休業を必要とする期間中の収益減(個人営業の場合においては、所得減)
三 休業することにより、又は店舗等の位置を変更することにより、一時的に得意を喪失することによつて通常生ずる損失額(前号に掲げるものを除く。)
四 店舗等の移転の際における商品、仕掛品等の減損、移転広告費その他店舗等の移転に伴い通常生ずる損失額
2 営業を休止することなく仮営業所を設置して営業を継続することが必要かつ相当であると認められるときは、仮営業所の設置の費用、仮営業であるための収益減(個人営業の場合においては、所得減)等並びに前項第3号及び第4号に掲げる額を補償するものとする。

(営業規模縮少の補償)
第33条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の規模を縮少しなければならないと認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 営業の規模の縮少に伴う固定資産の売却損、解雇予告手当相当額その他資本及び労働の過剰遊休化により通常生ずる損失額
二 営業の規模の縮少に伴い経営効率が客観的に低下すると認められるときは、これにより通常生ずる損失額
2 第31条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

第4節 農業補償
(農業廃止の補償)
第34条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常農業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 農具等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額及び解雇予告手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額
二 転業に通常必要とする期間中の従前の所得相当額(法人経営の場合においては、従前の収益相当額)
2 第31条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

(農業休止の補償)
第35条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常農業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 通常農地を再取得するために必要とする期間中の固定的な経費等
二 通常農地を再取得するために必要とする期間中の所得減(法人経営の場合においては、収益減)

(農業の経営規模縮少の補償)
第36条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常農業の経営規模を縮少しなければならないと認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 農業の経営規模の縮少に伴う資本及び労働の過剰遊休化により通常生ずる損失額
二 農業の経営規模の縮少に伴い経営効率が客観的に低下すると認められるときは、これにより通常生ずる損失額
2 第31条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

(農業補償の特例)
第37条 前3条の場合において、現に宅地化が予想される農地等に関して農業補償に相当するものの全部又は一部の額が土地等の正常な取引価格に含まれていると認められるときは、前3条の規定にかかわらず、当該額を前3条に規定する額から控除した額をもつて補償するものとする。

第5節 漁業権等の消滅又は制限により通常生ずる損失の補償
(漁業廃止の補償)
第38条 漁業権等の消滅又は制限に伴い通常漁業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 漁具等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額及び解雇予告手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額
二 転業に通常必要とする期間中の従前の所得相当額(法人経営の場合においては、従前の収益相当額)
2 第31条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

(漁業休止の補償)
第39条 漁業権等の消滅又は制限に伴い通常漁業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 通常漁業を休止することを必要とする期間中の固定的な経費等
二 通常漁業を休止することを必要とする期間中の所得減(法人経営の場合においては、収益減)

(漁業の経営規模縮少の補償)
第40条 漁業権等の消滅又は制限に伴い通常漁業の経営規模を縮少しなければならないと認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
一 漁業の経営規模の縮少に伴う資本及び労働の過剰遊休化により通常生ずる損失額
二 漁業の経営規模の縮少に伴い経営効率が客観的に低下すると認められるときは、これにより通常生ずる損失額
2 第31条第2項の規定は、前項の場合について準用する。

第6節 残地等に関する損失の補償
(残地等に関する損失の補償)
第41条 同一の土地所有者に属する一団の土地の一部若しくは同一の物件の所有者に属する一団の物件の一部を取得し、若しくは使用し、同一の権利者に属する一体として同一目的に供している権利の一部を消滅させ、若しくは制限し、又は同一の土地所有者に属する一団の土地に属する土石砂れきの一部を取得することによつて、残地、残存する物件、残存する権利又は当該土石砂れきの属する土地の残地に関して、価格の低下、利用価値の減少等の損失が生ずるときは、これらの損失額を補償するものとする。ただし、事業の施行により生ずる日陰、臭気、騒音その他これらに類するものによる不利益又は損失については、補償しないものとする。

(残地等に関する工事費の補償)
第42条 前条本文の場合において、残地、残存する物件の存する土地、残存する権利の目的となつている土地、当該土石砂れきの属する土地の残地(以下第44条において「残地等」という。)、残存する物件又は残存する権利の目的となつている物件に関して、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに通常要する費用を補償するものとする。

第7節 その他通常生ずる損失の補償
(その他通常生ずる損失の補償)
第43条 前6節に規定するもののほか、土地等の取得又は土地等の使用によつて土地等の権利者について通常生ずる損失は、これを補償するものとする。

第5章 土地等の取得又は土地等の使用に伴うその他の措置
(隣接土地に関する工事費の補償)
第44条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地を事業の用に供することにより、当該土地、当該物件の存する土地、当該権利の目的となつている土地及び当該土石砂れきの属する土地並びに残地等以外の土地に関して、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物の新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要があると認められるときは、これらの工事をすることを必要とする者に対して、その者の請求により、社会通念上妥当と認められる限度において、これに要する費用の全部又は一部を補償するものとする。

(少数残存者補償)
第45条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地を事業の用に供することにより、生活共同体から分離される者が生ずる場合において、これらの者に受忍の範囲をこえるような著しい損失があると認められるときは、これらの者に対して、その者の請求により、個々の実情に応じて適正と認められる額を補償することができるものとする。

(離職者補償)
第46条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い、土地等の権利者に雇用されている者が職を失う場合において、これらの者が再就職するまでの期間中所得を得ることができないと認められるときは、これらの者に対して、その者の請求により、再就職に通常必要とする期間中従前の賃金相当額の範囲内で妥当と認められる額を補償することができるものとする。
附則
この要綱は、駐留軍の用に供する土地等の取得又は土地等の使用に関しては、当分の間、適用しない。


注 (国立国会図書館議会官庁資料課)

凡例の通り、この「収載資料及び本文」は、原則として改正状況は反映していません。但し、この「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」に関しては、実務上現在も重要で、インターネットアクセスが非常に多いため、以下の通りお知らせします。

当要綱は、平成25年1月末現在の情報によると、2回改正されています。改正後の全文は以下の資料に掲載されています。

収載資料:国土交通省土地・水資源局総務課公共用地室 監修 公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の解説 新版改訂版 近代図書 2010.9 pp.220-232  当館請求記号:AZ-319-J15

公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱 (昭和37年6月29日閣議決定、改正 昭和42年12月22日閣議決定、改正 平成14年7月2日閣議決定)