特定産業振興臨時措置法案要綱

昭和38年3月22日 閣議決定

収載資料:資料戦後二十年史 2 経済 有沢広巳・稲葉修三編 日本評論社 1966 p.402 当館請求記号:210.76-Si569

第1 目的
この法律は、貿易の自由化等により経済事情が変動しつつある事態にかんがみ、産業構造の高度化を促進するためその国際競争力を培養する必要がある産業について、生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化するための措置を講ずることにより、その振興を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とすること。
第2 特定産業
1 この法律で「特定産業」とは、特殊鋼業(合金鉄製造業を含む。)、四輪自動車製造業(自動車のタイヤ又はチューブの製造業を含む。)、有機化学工業製品製造業、その他候補業種として、政令で定める製造業であって、政令で指定するものをいうこと。
2 候補業種を定める政令の制定又は改廃の立案をするには、産業合理化審議会の意見をきかなけれはならないこと。
3 第1項に掲げる業種に属する製造業に係る主たる事業者団体は、主務大臣に対し、当該製造業を特定産業に指定し、又はその指定を解除すべき旨の申出をすることができること。
4 主務大臣は、第1項の特定産業を指定するための政令の制定又は改廃の立案をするには、前項の申出に基づき、かつ、産業合理化審議会の意見をきかなければならないこと。
第3 振興基準
1 特定産業が指定されたときは、主務大臣及び産業界代表は、当該特定産業の振興を図るための基準(以下「振興基準」という。)について討議するものとすること。
2 金融界代表及び大蔵大臣は、前項の討議に参加するものとすること。
3 振興基準には、規格の整備、生産の専門化、設備投資の適正化、事業の共同化、合併等に関する一般的な方針が定められていなければならないこと。
主務大臣は、産業界代表との間に振興基準についての合意が成立したときは、大蔵大臣に協議し、これを公表しなければならないこと。
第4 振興基準の変更に関する請求
主務大臣、産業界代表、金融界代表又は大蔵大臣は、特に必要があると認められるときは、主務大臣又は産業界代表に対し、振興基準の変更についての討議を開始すべきことを求めることができること。
第5 特定産業を営む者の努力等
1 特定産業を営む者は、振興基準で定められた方針に従って産業活動を効率化するように努めなければならないこと。
2 銀行は、特定産業を営む者に対する資金の供給については、その判断に当たり、この法律の趣旨にそうよう留意するものとすること。
3 政府関係金融機関は、振興基準で定められた方針に従って産業活動を効率化することに寄与すると認められるときは、特定産業を営む者に対する資金の供給に努めなければならないこと。
第6 資金の確保
政府は、振興基準で定められた方針に従って産業活動を効率化するため必要な資金について、その確保に努めるものとすること。
第7 合併等の場合の課税の特例
主務大臣が振興基準で定められた方針に従って産業活動を効率化することに寄与すると認定した法人の合併、設立等について、租税特別措置法の定めるところにより、登録税又は法人税の軽減を行なうものとすること。
第8 合理化のための共同行為
1 振興基準で定められた方針に従って産業活動を効率化するため必要があるときは、特定産業を営む者等は、主務大臣を経由し公正取引委員会の認可を受けて、品種又は生産方式の制限、設備の制限又は処理、部品の購入方法等に係る合理化のための共同行為を実施することができること。
2 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定のうち必要な規定を準用すること。
第9 合併に関する判断の基準の公表
1 主務大臣は、公正取引委員会に対し、特定産業を営む法人のする合併についての判断の基準を公表すべきことを求めることができるものとすること。
2 主務大臣は、前項の規定により判断の基準を公表すべきことを求める場合には、輸入制限の廃止その他これに準ずる措置及びその当該特定産業の製品に係る競争に及ぼす影響に関する事項等について意見を述べることができること。
第10 その他
1 施行の日から5年以内に廃止するものとすること。
2 租税特別措置法の一部改正について定めること。