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税制整理案要綱

昭和11年9月22日 閣議決定

収載資料:日本金融史資料 昭和編 第34巻 日本銀行調査局 大蔵省印刷局 1973.5 pp.8-10 当館請求記号:338.21-N684n

所得税
(一)第一種所得税(附加税を含む)現在負担額に対し八割程度の増税を為すこと
(二)第二種所得の源泉課税を廃止して総合課税(一定率の控除を行ふ)に改むること
(三)国債利子の免税を廃止して総合課税(一定率の控除を行ふ)を為すこと
(四)貯蓄銀行及産業組合の定期積金を除く貯金及預金(元本二千円を超ゆるもの)の利子に対して総合課税(一定率の控除を行ふ)を為すこと
(五)当分の内国債政策上国債、預金及貯金の利子に付ては納税義務者の申請ありたる場合に限り利子支払の際課税し得るものとすること
(六)第三種所得税(附加税を含む)は現在負担額に対し平均三割程度の増税を為すこと。但其程度は少額所得者に軽く多額所得者に重くすること
(七)第三種所得の課税最低限千二百円を千円に引下ぐること
(八)株式所得の四割控除を廃止し、株式取得に要したる負債の利子を控除すること
地租税
(一)地租の税率は現行法通りとし改正せざること
(二)少額地租免除の範囲を相当程度拡大すること
営業収益税
(一)個人営業収益税の課税最低限四百円を六百円に引上ぐること
(二)法人は現在負担額(附加税を含む)に対し一割弱の増税を為すこと
(三)個人の純益金額千円以下の部分には税率を引下げ、三千円を超ゆる部分には多少の引上を為すこと
資本利子税
(一)国債利子税率は現行法通りとし其他は相当程度の引上を為すこと
(二)貯蓄銀行及産業組合の定期積金を除く貯金及預金(元本二千円を超ゆるもの)の利子に対しても課税を為すこと
(三)本邦人の所有する外貨債に対し相当程度の課税を為すこと
家屋税
現行地方税家屋税を国に移管し、国税及附加税を通じて相当程度の減税を為すこと
相続税
(一)十割程度の増税を為すこと
(二)相続財産一定額以下の家督相続の場合に於て家族控除の制度を設くること
酒税
(一)酒類に対しては各酒類の負担の均衡に留意し平均二割程度の増税を為すこと
(二)酒類の法定納期制度を庫出課税制度に改むること
(三)酒精及焼酎に付ては専売制度を採用すること
(四)麦酒の税率は六割程度の引上を為すこと
織物消費税
(一)一割程度の増税を為すこと
(二)絹及毛、メリヤス、レース、フェルトに課税すること
砂糖消費税
(一)二割程度の増税を為すこと
(二)飴に対し課税を為すこと
取引所税
相当程度の増税を為すこと
登録税
不動産に付相当程度の減税を為すこと
鉱業税印紙税
相当程度の増税を為すこと
財産税
(一)法人に在りては払込資本金及積立金の合計額(繰越欠損額控除)に対し千分の一.五の課税を為すこと
(二)個人に在りては三万円以上の財産(負債控除)に対し千分の一の課税を為すこと
(三)財産評価に関する規定を設け、評価の適正公平を期すると共に、不動産重課の弊を避くること。尚此規定を相続税及登録税にも準用すること
売上税
(一)売上金額に対して千分の一の課税を為すこと。但百貨店に対しては千分の三とすること
(二)売上金年額三万円以上の者にのみ課税すること
(三)米、繭、肥料等免税物品を認むること
有価証券移転税
有価証券の移転に対し国債万分の五、其他千分の一の課税を為すこと
揮発油税
揮発油に対し一ガロン五銭の税率を以て課税すること
地方税
次の諸税は廃止すること
(一)戸数割
(二)市町村の所得税附加税
(三)家屋税
左記の諸税は軽減すること
(一)雑種税
(二)営業税
(三)特別地税
(四)各収益税附加税

尚政府の発表せる税制改革に因る収入増減関係の大要左の如し。
(一)中央地方を通ずる税制の根本的改革を行ひたる結果、地方税に於て初年度約二億二千万円、平年度約二億九千万円の減税となること
(二)右に因る地方歳入の欠陥は其全額を地方財政調整交付金を以て補填すること
(三)国庫の収入は初年度約二億円、平年度約三億円の増加を来すこと