物価対策委員会規程

昭和12年5月5日 閣議決定

収載資料:日本金融史資料 昭和編 第34巻 日本銀行調査局 大蔵省印刷局 1973.5 p.13 当館請求記号:338.21-N684n

第一条 臨時物価対策委員会は内閣総理大臣の監督に属し、関係各大臣の諮問に応じて物価対策に関する重要事項を調査審議す
第二条 委員会は会長一人、副会長三人及委員二十人以内を以て之を組織す
特別の事項を調査審議する為め特に必要なるときは特別委員を置くことを得
第三条 会長は内閣総理大臣を以て之に充つ、副会長は大蔵大臣、農林大臣及商工大臣を以て之に充つ、委員及特別委員は関係各省高等官及学識経験有る者の中より内閣に於て之を命じ又は嘱託す
第四条 会長は会務を総理す、副会長は会長を輔佐し会長事故あるときは内閣総理大臣の指名する副会長其職務を代理す
第五条 委員会に幹事を置く、内閣に於て之を命じ又は嘱託す、幹事は会長の指揮を承け庶務を整理す
第六条 委員会に書記を置く、内閣に於て之を命ず、書記は上司の指揮を承け庶務に従事す
委員会設置理由
近時に放ける我国の物価は世界的物価騰貴の影響と国内的原因と相俟て其騰勢著しきものあり。此趨勢を放置するに於ては国民生活の不安を激成するは固より、政府は其予算殊に軍事関係予算の施行上甚しき困難に逢着すべく、更に国内物価の昂騰は輸入の増加を誘致すると共に輸出の伸張を阻止し、以て国際貸借を悪化せしめ、延いて我国産業経済の健全なる発達を阻害するの憂なしとせず。仍て政府は速に物価騰貴の原因を究明し、之に対する有効適切なる対策を樹立し、以て非常時局に対する国策の遂行上遺憾なきを期せざるべからず。而して之が為には関係各庁官吏の外学識経験ある者を以て委員会を組織し慎重審議を為すの要あるに由る。
尚同委員会は財政、金融、為替、生産、配給、消費の六部門に分ち、左記目標を以て調査を進むる方針の由。
財政部門
(一)予算の編成に当りては物資の需給関係調整に留意すること
(二)税制改革に当りては生産及消費に及ぼす影響を考慮すること
金融部門
(一)通貨の調節を図り悪性インフレーションの傾向を未然に防止すること
(二)国家的事業の投資に主力を注ぐと共に国民貯蓄の培養に努むること
又投機思惑の行過ぎを戒むること
為替部門
(一)為替の騰落が物価に及ぼす影響を考慮し現在の為替水準を維持すべく努力すること
(二)不急の商品奢侈品等の輸入を出来得る限り抑制すべく為替管理を強化すること
生産部門
(一)生産力の拡充並に資源の確保に就き全力を傾注すること
(二)国策の必要に応じ官業民業を通じて生産事業の統制を行ふこと
配給部門
(一)配給機構を整備し中間的手数労力失費を節約するやう改善すること
(二)生産及配給機構を通じて大資本による利潤の独占的傾向を出来る限り抑制すること
消費部門
(一)生計費労賃等を調査し物価と日常生活との不調和を生ぜしめざるやう考究すること
(二)廉価なる商品の生産配給方策に就き調査を進むること