第一線ノ行政事務刷新方策要綱
閣議決定年
昭和12年5月13日 閣議決定
収載資料:行政改革のビジョン IV 行政管理研究センター 1980.5 pp.55-57 当館請求記号:AZ-331-8
6月1日 実施
1 趣旨
現下ノ時局ニ対処シ,挙国一致国運ノ進暢ヲ期センガ為ニハ,政治ノ刷新行政ノ改善ヲ図ルヲ要スルコト言ヲ俟タズ,而シテ先ヅ国民大衆トノ接触部面タル行政事務ノ第一線ニ於テ民衆ノ利便ヲ図リ真ニ融合協力ノ実ヲ挙グルハ極メテ緊要ノ時務ナリ,仍テ其ノ具体的方策トシテ左ノ通リ実施セントス
(注)1.「第一線ノ行政事務」トハ中央各省タルト地方各官公署タルトヲ問ハズ,民衆ニ直接スル行政事務ヲ云フ
2.各官公署ノ所管ニ属スル施設(例へバ商品陳列所,何々奨励館ノ類)ニ於テモ官公署ニ準ジテ行フ
2 基調
(1)第一線ノ行政事務刷新ハ之ニ依テ従来民衆ガ官公署ニ於テ浪費シタル時間又ハ費用等ヲ民衆本来ノ仕事ニ振向ケ,国民生活ノ充実発展ト国力ノ総合的躍進ヲ期スルコト
(2)第一線ノ行政事務担当者ハ真ニ公ニ奉ジ国民ノ福祉ノ増進ニ寄与スベキ任務ヲ自覚シ画期的ナル行政事務ノ刷新向上ヲ図ルコト
(3)第一線ノ行政事務担当者ノ監督者又ハ第一線ノ行政事務担当官公署ノ上級行政庁ニ於テハ自ラ範ヲ示スト共ニ,第一線ノ行政事務刷新ヲ容易ナラシムル様積極的ニ協力スルコト
(4)第一線ノ行政事務担当官公署ニ於テハ国民ノ意見要望ヲ充分ニ斟酌シテ其ノ不便ノ除去利便ノ増進ニ努ムベキコト
(5)一般国民ニ対シ第一線行政事務ノ内容手続等ヲ機宜ノ方法ニ依リ平明ニ徹底セシメ其ノ理解卜協力トヲ求ムルニ努ムベキコト
(6)第一線ノ行政事務ハ親切ヲ旨トスベキモ徒ニ民衆ニ迎合スルノ弊ニ堕セザル様留意スルコト
3 実施大綱
(1)第一線ノ全官公署ハ各実情ニ即シ刷新改善ヲ要スル事項少クトモ1ケ月一定数事項ニ集中シテ自治的ニ改善ノ実ヲ挙グルコト
右実施事項及其ノ結果ヲ向フ1ケ年間毎月末各本省ニ報告スルコト
各本省ハ右報告ノ大綱ヲ内閣官房総務課ニ報告スルコト
(2)各庁ハ其ノ庁所管第一線ノ官公署ヲシテ励行セシムベキ事項ヲ定メ之ガ励行ヲ求ムルコト
右励行事項及其ノ結果ヲ内閣官房総務課ニ報告スルコト
(3)第一線ノ行政事務官公署ノ上級庁ハ第一線ノ官公署ノ実施ニ即応シテ刷新改善ヲ要スベキ事項ヲ決定シ之ヲ実施スルコト
右実施事項及其ノ結果ヲ内閣官房総務課ニ報告スルコト
(4)関係各庁ノ連合ニ依リ中央地方ニ於テ第一線行政事務刷新ノ為ノ講習会,座談会,協議会ヲ開クコト
参考
第一線行政事務刷新ノ為実施スベキ事項例
1 第一線行政事務担当者ハ公衆ニ接スルニ威権ヲ濫用セズ謹慎懇切ナルベキコト
(例)
(イ) 質問者ニハ丁寧ニ説明ヲ与フルコト
(ロ) 善意ノ公衆ヲ叱責セザルコト
(ハ) 公衆ト口論セザルコト
(ニ) 申告ハ誠意ヲ以テ聴取スルコト
2 一般ニ事務ノ簡捷ヲ図リ迅速ヲ旨トスルコト
(例) ′
(イ) 願届手続等ハ努メテ之ヲ簡易化スルコト
(ロ) 一般公衆ニ対スル照会,回答,指示等ノ用語ハ努メテ平易ニシ,場合ニ依リ口語文ヲ用フルコト
(ハ) 願届手続,照会回答等ハ務メテ迅速ニ之ヲ処理スルコト
3 手続等ニ関シ国民ニ経済的負担ヲ掛クルハ最少限度ニ留ムル様努ムルコト
4 官公署ニ於テー般公衆ノ呼出ヲ為ス場合ハ努メテー般公衆ノ便宜ヲ考慮スルコト
(例) ・
(イ) 出頭ヲ求ムルハ已ムヲ得ザルトキニ限リ,電話又ハ書面ヲ以テ之ニ代フルコト
(ロ) 已ムヲ得ザル場合ノ外代人ヲ認ムルコト
(ハ) 出頭時刻ハナルベク本人ノ都合ニ委スコト
(ニ) 時刻ヲ指定シタルトキハ長時間待合セヲ為サシメザルコト
5 一般ニ民衆ニ対シ努メテ便宜ヲ供与スルコト
(例)
(イ) 官公署事務ノ内容,取扱手続等ヲ具体的ニ分リ易ク周知セシムル為適切ナル方法ヲ講ズルコト(例へバ冊子トシテ配付ス)
(ロ) 窓口事務取扱時間ノ延長,休日ノ繰替又ハ日曜ノ半日執務等ヲ為シ一般民衆ノ利便ヲ図ルコト
(ハ) 願届用紙ヲ作製シ希望者ニ分与ス此ノ場合費用ヲ要スレバ実費ヲ以テ受付ニテ販売ス
(ニ) 願届等ヲ自書シ難キモノニ対シテハ許ス限リ代書シ与フルコト
(ホ) 案内係ヲ設置スルコト
6 当務者ノ事務改善研究会ヲ設クルコト