家庭防護板

家庭防護板は、昭和15年(1940年)前後に「家庭防護協會」から発行された特殊な資料(非売品)です。昭和12年に防空法が公布され、次第に時代が戦争へと向かうなか、空襲等に際し近隣住民が協力して自衛措置を講ずることに資するために作成・印刷され、各家庭に配布されていたことが伺えます。表面の大部分が地図になっており、町会ごとに近隣の組織が一覧できるようになっています。縮尺の表示はありませんが、住民の名前や番地など、ほぼ一戸ごとの情報が記載されています。

1. 当館が所蔵する家庭防護板の特徴

厚みのある四つ切画用紙サイズ(縦54㎝×横39㎝)の一枚ものの資料で、両面刷になっています。タイトルに「板」とあるように、赤、青、黒の三色刷りの看板のような体裁となっています。

1-1. 家庭防護板(表面)

上部に「家庭防護板」と大きく書かれています。中央部に一戸ごとの情報が記載された町会の地図が描かれ、概ね十戸ごとに区切られた組界(または部界、群界等)が赤い線で描かれています。当館所蔵の地図の余白には、防諜・防護と書かれた赤い丸印が記されているのが特徴的です。また、左右・下部には、町会の地図を取り囲む形で、薬品の宣伝や地元の病院、銀行、衣料・食料品店等、生活必需品の広告が出ています。中には、「空襲に予告なし」や「備えあれば憂ひなし」といった時局を表す標語が印刷されているものもあります。

町会によって表記はまちまちですが、町会長、副会長、組長(または部長、郡長等)、会計、庶務などの役職が記号で示されており、担当者の家にはそれぞれの記号が付いています。この記号は凡例で確認できます。稀に、時代を現す特徴として、米配給所、国旗掲揚台の位置が記されているものもあります。

他に町会関係非常用電話番号のリストの掲載があり、区役所、警察署、火災報知、救急車、水道局、電燈・瓦斯会社、消防署などの緊急連絡先が記されています。

1-2. 家庭防護心得(裏面)

上部に「家庭防護心得」と大きく書かれ、以下、家庭防空群(自衛組)の任務・組織、燈火管制、防火、防毒、防弾・避難・退避、空襲警報信号等についての記載があります。各項目には、その備えと対処法についての説明が、箇条書きで表やイラストを用いながら具体的に書かれています。引越しの際には、そのまま家に備え付けておくようにとの文言があることから、当時はこの家庭防護板が、家庭一戸ごとに備付となっていたことが推測されます。

2. 国立国会図書館の所蔵

  • 発行年月:昭和16年(1941年)8月または9月発行(調査:同年4月~7月)
  • 所蔵地域:東京と大阪の限られた区のごく一部の町会
  • 所蔵点数:76点

2-1. 東京

2-2. 大阪

2-3. その他の所蔵

その他、以下の図書資料に家庭防護板が収録されています。

3. 資料の利用方法

国立国会図書館サーチで、検索対象を「国立国会図書館」のみ選択した上で、キーワード欄に「家庭防護板」と入力して検索の上、ご利用ください。地区を東京または大阪に絞る場合は、「NDC」欄で分類記号(東京は「291.361」、大阪は「291.63」)と掛け合わせて検索してください。また各区に絞る場合は、上記2.のリスト中の区名と掛け合わせて検索してください。
なお、簡易検索画面の絞り込み条件の初期状態では「NDC」欄が表示されません。検索項目を追加するか、詳細検索または地図に特化した検索をご利用ください。

資料は劣化していますので、複写等の利用について制限される場合があります。