危険物輸送に関する国際的な取り決め

【 】内は当館請求記号です。インターネット最終アクセス日は2014年1月11日です。

オレンジブック(国際連合経済社会理事会危険物輸送及び分類調和専門家委員会の勧告)

危険物の輸送に関する各国及び国際規則に統一性を持たせ輸送の安全を図るため、国際連合・経済社会理事会・危険物輸送及び分類調和専門家委員会(The United Nations Committee of Experts on the Transport of Dangerous Goods and on the Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals = CETDGGHS)が、「危険物輸送に関する勧告(Recommendations on the Transport of Dangerous Goods)」を策定しています。表紙の色から「オレンジブック」と呼ばれています。

勧告自体は法的拘束力を持ちませんが、国連の各専門機関が作成する危険物輸送モード(陸、海、空)ごとの規則は、この勧告の改定に伴って整合性を保つよう随時改定されます。国連加盟各国はこの内容に沿って国内規則を整備するよう勧告され、米国の危険物輸送規則(49CFR Transportation)もこの勧告との整合性が図られています。

この勧告は、危険物の運送の際に使用すべき品名、国連番号(UN no.)、危険物クラス(Hazard Class)、容器、包装などを定めています。1956年に初版が策定され、1997年以降は各国及び国際的な規則に取り込みやすいよう「危険物輸送に関するモデル規則(Recommendations on the Transport of Dangerous Goods : model regulations )」の形式で提示されています。「試験方法及び判定基準のマニュアル(Recommendations on the transport of dangerous goods : manual of tests and criteria)」が1986年以降別冊として刊行されます。

当館では、初版から所蔵しています。(本編第6版のみ未所蔵)
■最新版は、本編第22版(2021)【A159-D105】 、日本語【A471-M11A471-M12】 、マニュアル第6版(2015)【A159-B1575】 、日本語第5版(2012)【DK25-L1】です。

*関連情報

■最新の危険物輸送ハンドブック 産業技術サービスセンター 2002【A2-G29】 は、少し古くなりますが、総合的な解説書です。

UNECE :危険物輸送及び分類調和専門家委員会の事務局は国連欧州経済委員会(UNECE)事務局が務めており、UNECEのサイトDangerous Goods Home外部サイト に危険物輸送関係基本文書が掲載されます。

国連番号: 危険物輸送に関する勧告の危険物リストの物質又は物品ごとに付与された4桁の数字が国連番号です。独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質総合情報提供システム(CHRIP)外部サイトの「個別リスト一覧表示」の中に「国連番号・分類」のリストがあります。(ページ下部の「免責事項に同意した上でCHRIPを利用する」をクリックするとシステムが利用できます)

その他の各種取り決め

海上輸送

SOLAS条約:危険物の国際海上輸送の国際的基本ルールとなっているのは、「1974年の海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」附属書第7章「危険物の運送」です。SOLAS 条約締約国(2013年3月11日現在日本を含め167カ国)に対し法的拘束力を持ちます。

■SOLAS: consolidated edition 2014: consolidated text of the International Convention for the Safety of Life at Sea, 1974, and its Protocol of 1988 : articles, annexes and certificates 6th. ed. IMO 2014【ME8-B125】

■ 2020年海上人命安全条約 海文堂出版 2020.5 英和対訳【C3-M10】

IMOコード:SOLAS条約は、輸送に関する具体的な規制内容を国連の専門機関である国際海事機関(International Maritime Organization = IMO)が策定する各種コードに委ねています。日本の危険物国内輸送を規制する「船舶安全法」「危険物船舶運送及び貯蔵規則」「船舶による危険物の運送基準を定める告示」は、これらIMOコードの国際基準を採り入れています。

IMDGコード:「国際海上危険物規程」は、国連危険物輸送勧告の基本的要件を採り入れて、危険物の容器、包装、積載方法、隔離、船積書類等を具体的に定めています。

■IMDG code : international maritime dangerous goods code : incorporating amendment 39-18 2018 ed. IMO 2018 【ME8-D1】

■運輸省海上技術安全局検査測度課 編[訳] IMDGコード 日本造船振興財団情報管理部  1984.7 英和併記【A471-38】 これ以降の日本語訳は未所蔵です。

IBCコード:「国際バルクケミカルコード」は、危険化学薬品のばら積み輸送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則です。

■IBC code : International code for the construction and equipment of ships carrying dangerous chemicals in bulk 2016 ed. IMO 2016 【YU111-B1585】

INF コード:「照射済核燃料、プルトニウム、高レベル放射性廃棄物の安全輸送コード」は、

核燃料物質等専用運搬船の基準です。

■ International Code for the Safe Carriage of Packaged Irradiated Nuclear Fuel, Plutonium and High-Level Radioactive Wastes on Board Ships (INF Code) 2000 ed. IMO 2000】【Y536-2001-3】

*関連情報

■危険物安全輸送の手引き オーシャンコマース 2005【A471-H32】

国土交通省海事局 危険物の海上運送等に係る安全対策外部サイト

国内外で危険物を海上運送する際の手続きの概要を紹介しています。

公益社団法人神戸海難防止研究会外部サイト  →資料検索 →危険物船舶運送安全データブック

危険品の性状や取り扱い方法をとりまとめたものです。国連番号やIMDGコードの品名と日本の国内規則の品名を対照できるようになっています。

航空輸送

ICAO Annex 18:危険物の国際航空輸送の基本的ルールとなっているのは、国連専門機関である国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization = ICAO)が定める国際民間航空条約(Convention on International Civil Aviation)第18附属書(Annex)「危険物の航空安全輸送」です。国際民間航空条約締約国(2019年10月1日現在日本を含め193カ国)に対して法的拘束力を持ちます。(リサーチ・ナビ:ICAO参照)

■The safe transport of dangerous goods by air 4th. ICAO 2011 【A161-B1114】

■危険物の航空安全輸送 航空振興財団 2003.4 第3版2001の日本語訳【C3-J65】

ICAO TI :第18附属書を補足する「危険物の航空安全輸送に係る技術指針(Technical Instructions for the Safe Transport of Dangerous Goods by Air Doc 9284外部サイト)」が、より詳細な内容を定めています。我が国の危険物国内航空輸送を規制する「航空法」「航空法施行規則」「航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示」は、ICAOの国際基準を採り入れています。

IATA DGR:ICAOの指針に従って民間航空業界団体IATA(国際航空運送協会)が毎年刊行するIATA Dangerous Goods Regulations「危険物規則書」(DGR)は、航空会社の自主的規則で、ICAO TIとほぼ同内容です。

■IATA危険物規則書31版(1980年1日1日発効)熊谷和男 監訳 日本航空 日本語【DK233-L1】 以後当館所蔵なし

陸上輸送

日本は島国なので危険物国際陸上輸送に関する条約に加盟していませんが、陸上で国境が接する欧州では、国連経済社会理事会欧州経済委員会(UNECE)が中心となり、地域内の合意を図ってきました。(1)道路輸送のADR、(2)鉄道輸送のRID、(3)内陸水路輸送のADNが加盟国の国際輸送に適用されます。EU域内では、EU指令によりこれらの協定が国内輸送にも適用されます。また、欧州以外でもこれらの協定に準じた規制を行う諸国があります。

日本の危険物国内陸上輸送を規制する「消防法」「火薬類取締法」「高圧ガス保安法」「毒物及び劇物取締法」等はこれらの国際基準とは別個に整備されており、例えば「消防法」と「国連危険物輸送勧告」では危険物の定義が異なっていますが、国際基準に合わせる方向で近年改正が行われています。

(1)道路輸送

ADR:「欧州危険物国際道路輸送協定(ADR)」は、欧州諸国、北アフリカの一部の国が参加しています(2020年1月現在52カ国)。 また、協定未参加地域でもADRの規定を利用する例があります。

■ADR, applicable as from 1 January 2021: Agreement Concerning the International Carriage of Dangerous Goods by Road / Economic Commission for Europe, Inland Transport Committee UN 2020 2v. 【A159-D53】

国連欧州経済委員会(UNECE)のサイトDangerous Goods Home外部サイト に最新版が掲載されます。ADR 2021外部サイト

(2)鉄道輸送

RID:欧州・中東・北アフリカ諸国が加盟するConvention concerning International Carriage by Rail = COTIF条約の付属書C「欧州危険物国際鉄道輸送規則(RID)」(当初はCOTIF附属書B「CIM」の付録)が危険物の鉄道輸送について定めています。(2013年末現在48カ国)

■ International Regulations concerning the carriage of dangerous goods by rail (RID); the text is that agreed at the XVIIth session of the Committee of Experts. H.M.S.O. 1978 【C3-50】 これ以後は当館未所蔵

OTIF(Intergovernmental Organisation for International Carriage by Rail外部サイト)のウェブサイトに最新版が掲載されます。OTIF外部サイト RID外部サイト

(3)内陸水路輸送

ADN:「危険物の内陸水路による国際輸送に関する欧州協定(ADN)」は、欧州諸国が参加しています。(2013年末現在17カ国)

■European Agreement concerning the International Carriage of Dangerous Goods by Inland Waterways (ADN) : including the annexed regulations, applicable as from 1 January 2013 UN 2012. 【A159-B1353】

国連欧州経済委員会(UNECE)のサイトDangerous Goods Home外部サイト に最新版が掲載されます。

ADN 2021外部サイト

郵送

UPU :危険物の国際郵送は、万国郵便条約に基づき規制されています。万国郵便連合(Universal Postal Union)が作成する"Letter Post Manual外部サイト"で、万国郵便条約や各種規則による規制をまとめて参照できます。

*関連情報

郵便局 国際郵便として送れないもの外部サイト

放射性物質の輸送

IAEA規則:国連の「危険物輸送に関する勧告」は、放射性物質の安全運送要件については具体的規定を設けず、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency = IAEA)に策定を委ねています。IAEAの「放射性物質安全輸送規則(Regulations for the Safe Transport of Radioactive Material)」はモデル規則で法的拘束力はありませんが、国連の「危険物輸送に関する勧告」の一部として扱われ、この内容がIMO(海上)やICAO(航空)の条約を通して強制力を持ち、日本はこれらの内容を国内法令に取り入れています。

■Regulations for the safe transport of radioactive material 2009 ed. IAEA 2009 【YU111-B870】 IAEAサイトの原文:2012年版外部サイト

■放射性物質安全輸送規則 日本語翻訳版2012年版 原子力安全基盤機構 2013 【C3-L9】 原子力安全基盤機構の日本語訳:2012年版

*関連情報

原子力安全基盤機構 →技術情報 →放射性物質の輸送
関連文書の日本語訳が掲載されています。

感染性物質の輸送

WHO:国連の専門機関である世界保健機関(World Health Organization = WHO)が、感染性材料(病原体と検査用検体)の安全輸送のために「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス(Guidance on Regulations for the Transport of infectious Substances)」を刊行しています。法的拘束力は持ちませんが、輸送の実践的な要領を示しています。当館未所蔵ですがインターネットで見られます。

WHOサイトの原文:2013-14年版外部サイト  国立感染症研究所日本語訳:2011-12年版外部サイト

*関連情報

国立感染症研究所ホーム → 病原体安全管理規定等 → WHOマニュアル・輸送関連外部サイト
関連文書の日本語訳が掲載されています。