日本-海難審判の裁決について
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議会官庁資料室 作成
1.海難審判及び海難審判所について
海難審判とは、船舶の運用に関連した船舶等の損傷、人の死傷等の海難を発生させた海技士等の懲戒を行うため、海難審判法(昭和22年法律第135号)に基づき、海難審判所が行う審判のことをいいます。海難審判所は、「職務上の故意又は過失によって海難を発生させた海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人」に対して、裁決をもって懲戒処分(免許の取消し、業務の停止、戒告)を行います(同法第1-4条)。
海難審判所は国土交通省の特別の機関にあたります。現在の海難審判所は、平成20(2008)年に海難審判庁の懲戒業務を承継し、発足しました。明治30(1897)年に海員審判所が設置されて以降、昭和23(1948)年には海難審判所、昭和24(1949)年には海難審判庁とたびたび改称されています。
東京都にある海難審判所(中央)は旅客の死亡を伴うような重大な海難を取り扱い、地方海難審判所はそれぞれの管轄区域で発生した重大な海難以外の海難を取り扱います[1] 。地方海難審判所は、函館、仙台、横浜、神戸、広島、門司(那覇支所あり)、長崎に置かれています。
海難審判は一審性であり、審級はありません。ただし、海難審判所の裁決に不服のある者は、東京高等裁判所に取消しの訴えを提起することができます。海難審判の裁決取消訴訟の判決は一般的な判例と同じ方法で調べることができます。なお、平成20(2008)年までは地方海難審判庁と高等海難審判庁の二審制でした。
2.国立国会図書館が所蔵する海難審判関連資料
2.1. 裁決録
- 『海員審判所裁決録』【YC-21】(マイクロフィルム)
明治30(1897)年から昭和19(1944)年までの裁決を収録しています。 - 『海員審判所裁決録総目次』【CZ-2482-1】 (国立国会図書館デジタルコレクション)
上記マイクロフィルムの総目次です。裁決年ごとに、事件名、トン数、関係人名、発生年月日、発生場所、言渡年月日、言渡審名、ネガ番号が表にまとめられています。 - 『審判裁決録』【CZ-482-01】 (国立国会図書館デジタルコレクション)
逓信省管船局が刊行した資料です。明治30-33, 40-41(1897-1900、1907-08)年分を所蔵しています。審判所ごとに採決を言渡年月日順で掲載しています。船名別、被審人別索引があります。 - 『審判裁決録』【CZ-482-02】 (国立国会図書館デジタルコレクション)
上記資料の商船学校校友会刊行版です。明治30-33, 40-41, 44(1897-1900、1907-08、1911)年分及び大正2-9(1913-20)年分を所蔵しています。 - 『海員審判所裁決録』【CZ-2478-01】 (国立国会図書館デジタルコレクション)
大正11(1922)年から昭和7(1932)年まで(欠:大正13(1924)年)を所蔵しています。審判所ごとに採決を言渡年月日順で掲載しています。大正14(1925)年以降は、事件種別や船名別、被審人別等の詳細な索引があります。 - 『海難審判所裁決録』【CZ-482-1】 (タイトルの変遷あり)
昭和30(1955)年以降を所蔵しています。裁決を事件種別ごとに掲載しています。一部の年代について、船名別、事件発生場所別等の年間索引を所蔵しています。
2.2. 裁決例集
- 『海難審判所裁決例集』【CZ-2482-2ほか】 (第1巻から第8巻は国立国会図書館デジタルコレクション ※タイトルの変遷あり)
昭和24(1949)年以降の裁決のうち、海難防止あるいは海難審判の審理上、裁決例として適当なものを収録しています。事件種別ごとに、裁決に加えて判示事項や参照法令等を掲載しています。近年はほぼ年に1回刊行されています。最新版のみ議会官庁資料室で開架しています。
2.3. その他の資料
- 『海難審判史』【558.8-Ko676k】 (国立国会図書館デジタルコレクション)
各編の「重大海難事件」の項に、明治24(1891)年から昭和38(1963)年までの主な事件の概要と裁決書が掲載されています。 - 『海難審判制度百年史』【AZ-482-G2】 (議会官庁資料室 開架)
各部の「重大海難事件」の項に、明治24(1891)年から昭和58(1983)年までの主な事件の概要と裁決書が掲載されています。
3.インターネット情報
- 海難審判庁裁決録(日本財団図書館ウェブサイト)
成果物名に「海難審判庁」と入力し検索すると、平成10(1998)年度から平成18(2006)年度までの海難審判庁裁決録を見ることができます。「海難審判所」と検索すると2013年度から2022年度の海難審判所裁決の目次を見ることができます。 - 裁決の閲覧(海難審判所ウェブサイト)
過去数年分の海難審判所(中央)及び各地方海難審判所の裁決を見ることができます。また、国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)から、平成18(2006)年以降の裁決を検索して見ることができます。ただし、平成29(2017)年10月以降の裁決は船名が伏せられています。
[1]
海難審判法第16条、海難審判法施行規則(昭和23年運輸省令第8号)第5条