国連の人権関係の文書を調べる
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議会官庁資料室 作成
国連は、1948年12月10日、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として世界人権宣言(英文 和訳)を採択しました。世界人権宣言は、普遍的に保護されるべき基本的人権を定めたものです。現在、国連では多数の機関が人権問題に取り組んでいますが、以下では、国連の代表的な人権関係機関の文書の調べ方をご紹介します。
【 】内は当館請求記号、インターネットの最終アクセス日は2017年10月13日です。
1. 調べ方の概要
国連人権高等弁務官事務所など国連の人権関係機関は、年に1度、総会又は経済社会理事会に報告書を提出します。報告書には、1年間の活動の概要が記されており、主要なドキュメントの記号(Symbol)を調べることができます。報告書は、総会又は経済社会理事会の議事録(Official Record)の補遺(Supplement)として出され、各機関のサイトで見ることができます。各機関のサイトには、各国がそれぞれの機関に提出する報告書等も掲載されています。なお、会期番号については、国連のページ「Past sessions」をご参照ください。
ドキュメントは、下記に紹介する国連の検索サイトで原文を見ることができます。それ以前の年代のものは、当館で紙の資料を所蔵しています。欠号もありますので、お問い合わせください。また、「UN(国際連合)―国連資料の種類(ドキュメント、公式記録、パブリケーション)」もご参照ください。
2. 人権関係機関
2-1. 人権理事会
人権理事会(Human Rights Council)は、経済社会理事会の下部機関であった人権委員会(Commission on Human Rights)に代わり、総会の下部機関として2006年に設置されたものです。人権理事会は、国連の全加盟国における人権の状況の審査を行います(普遍的・定期的レビュー: Universal Periodic Review)。また、人権理事会の「特別手続(Special Procedures)」は、特定のテーマ又は特定の国についての専門家(特別報告者: Special Rapporteurs)が現地調査を行い、人権理事会および総会に毎年報告する制度です。2017年8月1日現在、44のテーマ(恣意的拘束、文化的権利、先住民族等)および12の国(ベラルーシ、カンボジア等)について、特別報告者が活動しています。国連人権高等弁務官事務所のウェブページ「Search for documents」では、以下のドキュメント記号や締約国、特別報告者などから、およそ1990年代以降の人権理事会の文書を検索することができます。
- 人権理事会の年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/53
- 人権理事会のドキュメント記号 A/HRC/~
- 人権委員会の年次報告書のドキュメント記号 E/西暦/23
- 人権委員会のドキュメント記号 E/CN.4/~
また国際連合広報センターの国連決議・報告(2007年-2018年)ウェブページにおいて、同センターが作成した第15回から第39回にかけての決議等の邦訳が提供されています。
2-2. 国連人権高等弁務官
国連人権高等弁務官(High Commissioner for Human Rights)は、国連人権高等弁務官事務所の長であり、国連の人権活動に主要な責任を有し、様々な人権活動を推進しています。
国連人権高等弁務官事務所(Office of the High Commissioner for Human Rights)は、国連事務局の下部機関であり、人権理事会や人権関係の条約の実施状況を監視する委員会(後述)の事務や各種調整を担当します。また、加盟国に対して、人権に関する助言や技術支援を行います。
- 年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/36
2-3. 人権に関する条約および条約に対応する委員会
人権に関する国際条約は多数あります。また、締約国による条約の実施を監視するために、各条約に対応した委員会(human rights treaty bodies)が設置されています。これらの委員会は、締約国から実施の状況についての報告(State Party's Report)を受け、これに基づいて当該国の政府と対話します。国連人権高等弁務官事務所のウェブページ「Treaty bodies Search」では、以下のドキュメント記号や締約国などから、各委員会の文書を検索することができます。
人権条約で認められた権利を侵害された個人は、当該国において裁判などの手を尽くしても権利が回復されない場合には、各人権条約の委員会に直接救済を求めることができます(個人通報制度又は不服申立制度)。委員会は、受理した通報について審議し、見解を当該国の政府に送付します。なお、個人通報制度は、条約とは別の選択議定書において定められていますが、日本はこのような選択議定書を批准していません。
以下は、代表的な条約および委員会です。
(1) 経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約(A規約)(International Covenant on Economic, Social and Cultural Rights) 1966年12月16日採択 ・1976年1月3日発効 英文 和訳
- 経済的、社会的、文化的権利委員会(Committee on Economic, Social and Cultural Rights: CESCR)
年次報告書のドキュメント記号 E/西暦/22
経済的、社会的、文化的権利委員会のドキュメント記号 E/C.12/~
(2) 市民的、政治的権利に関する国際規約(B規約)(International Covenant on Civil and Political Rights) 1966年12月16日採択 ・1976年3月23日発効 英文 和訳
- B規約人権委員会(Human Rights Committee: HRC) 個人通報制度あり
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/40
B規約人権委員会のドキュメント記号 CCPR/C/~
(3) あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination) 1965年12月21日採択・1969年1月4日発効 英文 和訳
- 人種差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Racial Discrimination: CERD) 個人通報制度あり
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/18
人種差別撤廃委員会のドキュメント記号 CERD/C/~
(4) 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women) 1979年12月18日採択・1981年9月3日発効 英文 和訳
- 女子差別撤廃委員会(Committee on the Elimination of Discrimination against Women: CEDAW) 個人通報制度あり
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/38
女子差別撤廃委員会のドキュメント記号 CEDAW/C/~
(5) 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(Convention against Torture and Other Cruel, Inhuman or Degrading Treatment or Punishment) 1984年12月10日採択・1987年6月26日発効 英文 和訳
- 拷問禁止委員会(Committee against Torture: CAT) 個人通報制度あり
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/44
拷問禁止委員会のドキュメント記号 CAT/C/~
(6) 児童の権利に関する条約(Convention on the Rights of the Child) 1989年11月20日採択・1990年9月2日発効 英文 和訳
- 子どもの権利委員会(Committee on the Rights of the Child: CRC)
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/41
子どもの権利委員会のドキュメント記号 CRC/C/~
(7) すべての移住労働者及びその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(International Convention on the Protection of the Rights of All Migrant Workers and Members of Their Families) 1990年12月18日採択・2003年7月1日発効 *日本未批准 英文 和訳
- 移住労働者委員会(Committee on Migrant Workers: CMW)
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/48
移住労働者委員会のドキュメント記号 CMW/C/~
(8) 障害者の権利に関する条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities) 2006年12月13日採択・2008年5月3日発効 英文 和訳
- 障害者の権利委員会(Committee on Rights of Persons with Disabilities: CRPD) 個人通報制度あり
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/55
障害者の権利委員会のドキュメント記号 CRPD/C/~
(9) 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(International Convention for the Protection of All Persons from Enforced Disappearance) 2006年12月20日採択・2010年12月23日発効 英文 和訳
- 強制失踪委員会(Committee on Enforced Disappearances: CED) 個人通報制度あり
年次報告書のドキュメント記号 A/会期番号/56
強制失踪委員会のドキュメント記号 CED/C/~
3. 他の関連文書
他に、次のような文書を「Treaty bodies Search」で検索することができます。
- Meeting of Chairpersons of the human rights treaty bodies (ドキュメント記号 HRI/MC/西暦)
上記の人権に関する条約に対応した委員会の議長による年次会合のドキュメントです。 - Common core document forming part of the reports of states parties (ドキュメント記号 HRI/CORE/国名記号/西暦, 2005年くらいまではHRI/CORE/1/Add.~)
締約国の人権状況報告書のうち、各委員会への報告書に共通する基本的な国情データをまとめたドキュメントです。人口、民族、歴史、政治機構、人権保護の仕組み等が概説されています。